第14話みやこの変化
学を無理矢理に忘れるために彼氏を作った。
当てつけのように運動部で誰にも文句をつけられないような男子生徒。
それでも私の胸の中には学がいる。
それは幼馴染に向けているような感情ではなく…。
明らかに好意だ。
だけど…。
もう今さら現実を覆すことは出来ない。
私と学は今後交わることはないだろう。
深い後悔と傷を胸に秘めながら私は進まないとならない。
幼馴染としても嫌われてしまったら…。
そんな事を考えると胸が締め付けられるようだ。
こんな想いを抱くぐらいだったら告白された時、普通に了承すればよかったのだ。
けれど過去は戻らない。
私は可哀想なヒロインでもなんでもない。
ただ流れに逆らえなかった平凡なモブ。
あの時、周りに流されなければ…。
今、私は学の隣に居られたのだろうか。
そんな事を夢想する今日このごろでした…。
二学期に入って転校生がクラスにやってきた。
彼女は早速、女子生徒の洗礼を受けているようだった。
しかしながら彼女はそれをしっかりと断っていた。
「そんなルール私には関係ない。あなた達は勝手にやっていて構わないけれど」
まるでそう言っているようだった。
そんな芯の強い女子になりたかった。
今からでも…。
そんな事を思うのだが今更遅い。
私はこれからも流れに逆らえずに生きていくしかないのだ。
二学期が始まって一週間も過ぎた頃。
転校生は周りと馴染めずにいるようだった。
それはそうだろう。
あんなに大見得を切る言葉を吐いたのだ。
誰にも相手にされなくてもおかしくない。
私は彼女を少しだけ可哀想に思うのだが…。
何もしてあげられなさそうだ。
私は流れに逆らえない。
このわけのわからない学校の風潮に流され続けるのだろう。
そして決定的な日がやって来る。
彼女は複数の女子生徒に囲まれて絡まれているようだった。
トイレの前で囲まれてそのまま中に連れて行かれていた。
「助けないと」
何故、そんな正義感が働いたのか私自身にも分からなかった。
流れに逆らうのは初めてのことぐらいだった。
トイレに急いで向うと…。
私の予想通り今にもいじめが始まりそうな状況が出来上がっていた。
「生意気」
「後から来たくせに調子のんな」
「バカにしてんだろ」
そんな汚い言葉が女子トイレには充満していて気分が悪くなりそうだった。
中の様子を確認すると一か八かで賭けに出ることを決める。
「先生!こっちです!今まさにここがいじめの現場ですよ!」
よく通る大きな声で誰も居ない廊下で叫ぶとそのまま階段の方に身を隠す。
複数の女子生徒がわらわらとトイレから逃げ出していき、中には彼女だけが残されていた。
「大丈夫?何もされてない?」
どうして彼女を助けようと思ったのか私にもわからない。
ただ、ここで助けないわけにはいかない。
そんな正義感が突然生まれてきたのは確かなことだった。
「大丈夫です。ありがとうございます」
彼女は感謝を告げると一緒に廊下に出た。
「すみません。お名前なんですか?」
「同じクラスの中川みやこ。転校生の彼方さらりさんだよね?よろしくね」
「よろしくおねがいします。でもなにかされてもやり返していましたよ」
「強がり言わないの。複数に囲まれたら怖いものは怖いでしょ」
「それはそうですが…」
さらりとそんなやり取りをしながら私達は教室に戻っていく。
カバンを手にするとそのまま二人揃って帰路に着く。
「連絡先交換しておこ」
「はい」
短いやり取りで私達はスマホを取り出して連絡先を交換する。
「何かあったらいつでも言ってね?」
「わかりました。ありがとうございます」
私達は分かれ道でお互いの帰路に着くと無事に帰宅する。
帰宅してスマホで動画配信サイトで適当な動画を見ていると…。
何処かで聞いたような話が展開されていた。
「今日怖いことがあったんだけど…。そこから派生して友だちができたんだぁ〜!ちょっと変わった人だけど良い人だと良いな〜なんて思いました」
何処かで聞いたことのある声に何故か癒されながら、私はこれから心を入れ替えて今日できた友達を大事にしようと誓うのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。