第11話姉妹二人目

旅行二日目は二家族揃って観光地を見て回った。

親の前で三姉妹といちゃつくわけにもいかずに僕らは少しだけ気まずい感じで旅行をやり過ごす。

そして、帰宅する時間がやってきてしまい…。

「じゃあ、また帰ったら残りの夏休みを遊ぼうね〜」

のどかの言葉に頷いて応えると僕らは約束を交わしてお互いの車に乗り込む。

「天井三姉妹と仲が良いなんてな…父さん知らなかったよ」

父親の言葉に何とも言えずに頷いて応えると母親も話に割って入った。

「良いじゃない。あんなに美人な娘達と仲が良いのは良いことよ」

「そうだが…それでも女性には気をつけろよ?どんな些細なことで好意が敵意に変わるのかわからないからな」

「そんなことそうそう無いわよ。学が誠実ならきっと大丈夫だわ」

両親のアドバイスに頷いて応えるとそのまま車に揺られて帰路に着くのであった。


帰宅してすぐにその人物は部屋を訪れた。

「何処行ってたの?」

その人物は当然みやこなのだが…。

「旅行」

「ふぅ〜ん。お土産は?」

鞄の中から袋を取り出すとみやこに渡す。

「はい。お土産」

みやこは袋の中身を取り出すとじっくりとそれを眺めていた。

「キーホルダー?」

「そう。ご当地のものらしい。結構売れてたから買っておいた」

「ありがとう。カバンにでも付けておく」

「はいよ」

適当に相槌を打って返事をするとみやこはその後も部屋に居座った。

ベッドに腰掛けたみやこはスマホを取り出して何かをチェックしているようだった。

「ねぇ。これ見て」

みやこはSNSを画面に表示させると僕に見せる。

「天井家も旅行に行っていたみたいだけど?しかも那谷家と同じ場所。一体どういう事?」

「ん?二家族で旅行に行ってきた」

「は?もう家族ぐるみ?姉妹の誰かと結婚でもする気?」

「そういうわけじゃないよ。父親同士が旧友だったらしくて一緒に旅行に行くことになった。それだけだよ」

「それだけで一緒に旅行に行く?変じゃない?」

「変じゃないよ。普通の旅行だったし」

みやこはあまり納得していないようで口を尖らせていた。

「今は誰と一番いい感じなの?」

「しずかさんかな」

「ふぅ〜ん。まぁ頑張って。私もいい感じの男子出来たから」

「何の報告だよ。みやこも頑張れよ」

僕の言葉を耳にしたみやこは不服そうな表情を浮かべるとベッドから立ち上がる。

「じゃあ明日デートに行ってくるから。じゃあね」

みやこはそれだけ言い残すと部屋を後にするのであった。


旅行から帰ってきて数日後。

夏休み第四週のこと。

両親は再び仕事漬けの毎日に戻っていき、僕は家で一人の時間が増えていった。

四週目の火曜日。

天井姉妹の三女さなえが僕の家を訪れた。

「お邪魔します。一人なんですけど良いですか?」

さなえは少しだけ遠慮がちに口を開いて家の中に入って来る。

「全然いいよ。ちょうど暇してたから」

「センパイ。宿題終わりましたか?」

「もう少しで終わるね」

「じゃあラストスパート。一緒にやりませんか?」

それに頷くと僕らはリビングで宿題を進めていく。

テーブルにノートを広げて宿題を進めていくとさなえは唐突に口を開く。

「センパイ。ありがとうございました」

唐突の感謝に首を傾げているとさなえは旅行での出来事を口にする。

「車酔いしてしまった時に優しくしていただいて嬉しかったです。久しぶりの旅行でテンション上がっていたんです。姉妹の二人も完全には気づかないほどに…。いち早く私の不調に気付いてもらえて嬉しかったです」

さなえは俯きながら照れくさそうな表情を浮かべて言った。

「なんだ。その事なら大したこと無いよ。当然の対応だったし」

「突然の事態だったのに酔い止めまで用意してくれていたじゃないですか」

「あれは偶然だよ。長時間車に乗るだろうから旅行前に買っておいたんだ」

「私のために用意していたものじゃなかったとしても…それでも嬉しかったんです。ありがとうございました」

さなえの感謝を素直に受け取ると僕らはそこから宿題を進めていく。

夕方近くに宿題が終了するとさなえはおもむろに口を開く。

「私もセンパイを本気で好きになってもいいですか?」

そんな言葉に僕はなんと答えたら良いのか分からずに口をつぐむ。

「まぁ。だめと言われても好きになるんですけどね♡」

さなえはそれだけ言い残すと荷物をまとめて玄関に向かった。

「それではこれからよろしくおねがいしますね?センパイ♡」

さなえはそれだけ言い残すと帰路に着く。

僕はその日から天井姉妹について頭を悩ませるようになるのであった。

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