第2話ホントの気持ちはわからないまま
「学くんはなんでみやこに振られたの?あれだけ誠実に向き合っていたのに。みやこも案外酷いことするね」
休み時間の廊下でしずかは僕に問いかける。
それに対して僕自身も答えなど持ち合わせていないので首を傾げることしか出来なかった。
「わからないけど…幼馴染としてしか見られていなかったのかな」
正直な気持ちを口にするとしずかは腑に落ちない表情を浮かべていた。
「そんなことってあるの?幼馴染は恋愛できないなんて決まりはないでしょ?自分を大事にしてくれる人と一緒に居たいって思わないのかな?」
「どうだろう…きっと僕に何か足りなかったんだよ」
そんな答えを口にするがしずかは首を左右に振った。
「そんな事言わないで。学くんが自分を卑下すること無いよ。私達はちゃんと見てたよ?みやこに尽くすって言い方が正しいのかわからないけれど…ちゃんと向き合っていたでしょ?その気がないのに振り回していたって思うと学くんが可哀想だよ…」
しずかの言葉に何とも言えずに頷くことしか出来ないでいた。
そんな僕らの会話を聞いていたわけではないだろうが女子のグループがお手洗いから出てくる。
その一団にみやこも居て彼女と目が合う。
何故かみやこは不機嫌そうな表情を浮かべると目をそらして僕らの前を通り過ぎていった。
「今の表情見た?なんか嫌な感じじゃない?」
しずかは自分のことでも無いのに僕の代わりに怒ってくれているようだった。
「大丈夫。気にしてないから」
無理して笑顔を浮かべるとしずかはつらそうな表情を浮かべた。
「大丈夫。ちゃんと私達姉妹が癒やしてあげるから♡」
しずかの言葉を耳にして今度こそ軽く微笑むことが出来る。
「ありがとう」
礼を口にした辺りで予鈴がなり僕らは教室に戻っていく。
授業もそこそこに僕はこれからのことを想像しておくのであった。
放課後のこと。
しずかとのどかは委員会があるとかで本日は一緒に帰れないそうだった。
というわけで本日はさなえと二人で帰ることとなった。
あまり話したことのない後輩女子と帰ると言うのは少しだけ気まずいというものだ。
「センパイは中川さんのこと好きだったんですよね?どういうところが好きだったんですか?」
「どういうところか…なんだろう。いつも傍に居たから自然と好きになったんだよね。特にこれと言って理由があったわけではないんだけど…」
そんな答えを口にするとさなえは首を傾げて応える。
「何も理由もなく好きになったんですか?外見が好みとかもなく?」
「外見が好みなのはあるけど…それよりも二人の時は優しかったんだよ。だから僕が勘違いしてしまったんだ」
さなえは何度か頷くと思いもよらない答えを口にする。
「多分ですけど…中川さんはセンパイのこと好きですよ。でも素直に言えない。そんな感じです。でもいいじゃないですか。私達と過ごしたほうがきっと幸せになりますよ♡」
「みやこが僕を好き?それはないよ。振られた時のあの表情を思い出すだけで…」
そこであの時のショックを思い出して軽く胸が痛む。
「大丈夫ですか?気分悪いですか?」
それにどうにか首を左右に振ると僕らは揃って帰路に着く。
「今週の土日。家に来ませんか?両親は仕事で居ないので泊まり込みで…♡」
「まじで言ってる…?」
「大マジです♡」
その言葉を耳にして僕は思考を巡らせる。
「一応考えておく…」
どうにかそれだけ答えると分かれ道で僕らは別々の帰路に着く。
そのまま帰宅すると部屋には思わぬ人物のみやこが僕を待っている。
「みやこ…どうしたの?」
彼女は不機嫌そうな表情を浮かべたまま僕のベッドで横になったいた。
「なに?私が居たら問題あるの?」
「いや…別に」
適当に答えてブレザーをハンガーにかけると椅子に腰掛ける。
「ってか何でいきなり天井姉妹と仲良くなってんの?」
みやこはかなり不機嫌そうに刺々しい声で僕を問い詰める。
「ん?みやこに振られた途端に仲良くなった」
「は…?なにそれ…なんか嵌められてるんじゃないの?」
「そうかな…?」
「絶対そうだよ!ヤメておきなよ」
何故か必死なみやこを目にして僕はおかしくなって笑ってしまう。
「なんでみやこが必死なんだよ…僕のことだから僕が決めるよ」
僕の言葉を耳にしたみやこは頬を膨らませて不機嫌そうに立ち上がると部屋を出ていく。
「学のバカ!どうなっても私は知らないからね!」
捨て台詞の様なものを吐き出すとみやこは部屋を出ていき僕は一人取り残される。
「僕を振ったのはみやこのほうだろ…」
そんな独り言が部屋の片隅に霧散していくようだった。
一人残された部屋で僕はこれからの自分の身の振り方をもう一度考え直すのであった。
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