Ⅰ.問題だらけの仲良しグループ

1.距離感の近さは勘違いの原因。

 と、まあそんなわけで、余計なものが視界に映るようになってしまったわけだけど、それ以外に関しては、私の高校生活は取り合えずつつがなく進んでいると言っていいと思う。


 人ともっと仲良くなれますように。


 そんなお願いをする人間が、家から片道一時間以上かかる女子高校に進学するってなったら、理由なんて明白だ。


 そう。


 人間関係のリセット。


 中学校時代……もっとさかのぼると、大半がその中学校に進学するという小学校時代から私の人間関係には問題しかなかった。


 小さいころから女の子女の子した服装とか趣味に全くと言っていいほど興味が無くて、しかも名前がのどかなんてどっちでもありそうな響きなもんだから、趣味と名前で判断させれば大体が男の子って答えるようなそんな幼少期を送っていた、らしい。まあ、そのあたりの記憶は殆どないんだけど。


 そんな自分の生まれた性別をどこかに忘れてきたような幼稚園児が小学校に進学するとどうなるかっていうと答えは簡単で、女子と遊ぶよりも男子に交じって遊ぶことの方が多くなっていった。


 初めのうちはそれでも良かったんじゃないかと思う。けど、段々と年齢が上がっていくにつれて、昔のように遊ぶのは難しくなっていた。


 男子は男子として、女子は女子として、お互いに「性別」というものを意識していくようになっていくからだ。


 どれくらいのタイミングからだったかは分からない。気が付くと私は「気さくに接してくれる女子」として、いつも遊んでいる男子から恋愛感情を向けられるようになっていた。


 今でもはっきりと言える。


 意味が分からなかった。


 そりゃ、確かに、私は彼らと一緒に遊ぶのが好きだった。それは女子の趣味が自分のものと乖離しているってのもあるんだろうけど。そうでなくとも一緒に遊ぶ時間は楽しいものだったと思ってる。


 でもその関係性は友人だ。


 恋人じゃない。


 だから断った。


 でも、そういうイベントがあると、大体その男子とはギクシャクするようになる。

 私は今まで通りでいようって言ってるのに。


 そんなこんながあって、中学時代位は比較的「告白される」っていうイベントが多かったんだけど、そのイベントがあるたびに、仲の良かった男子とはギクシャクして、しかも、同性からはやっかみを受けるっていう、割と最悪の方向に転がっていった。


 しかも、もっと不味いことに、私はこじれた人間関係の解決策を殆ど持ち合わせていない。


 更に悪いことに、最後に残る切り札が「手を出す」だった。


 その結果がどうなるかは……まあ、御察し。


 女子っていうのはこういう時遠回しに攻撃してくるんだけど、私はその陰湿さが嫌いだから当然呼び出す。呼び出して口論になる。そして最終的には私がムカついて手を出す。


 しかも、殴り合いの喧嘩なんて小さいころに一杯やってきたから、大抵の場合、私が一方的に攻撃して、教師に呼ばれて、説教を受ける。それがワンセット。


 と、まあ、そんなわけで、凝り固まった人間関係をリセットしたい私は、地元の中学校から誰一人進学しないような、高偏差値かつ、通学距離のある、女子高に進学したって訳。


 正直共学でも良かったし、なんなら男装して男子校に進学したかったくらいなんだけど、それは出来ないから、せめて男女の恋愛みたいな面倒なことのない場所が良いと思って女子高にした。


 なんか聞く話だと、女子高って、周りが皆女子だから、いろいろと緩いらしいし。その方があってるんじゃないかなって読みもあった。


 ただ、


(その読みはちょっと外れたかな……)


 私は改めて教室の中を見渡す。


 視界に映る大体の同級生が、皆きちんと制服を着ているし、マッハで校則を破るような人は余りいない。


 その辺で椅子に胡坐をかいてパンツが見えてたりもしないし、聞こえる限りでも話の内容はそれなりに「女子高校生っぽい」ものが多い。いや、まあ、女子高校生しかいないんだからそうなんだろうけど。


 でも、個人的にはもうちょっと雑な感じを期待してたんだけどな。おかげで、中学校の友達に教えてもらった髪のセットとかも、役に立ってる感じがするけど、これだと気が抜けなくて嫌だなぁ……。


 と、まあ、そんな女子らしさの欠片もないことを考えていると、


「どうしたの?浮かない顔だけど」


 私に話しかける声がする。


 小松川こまつがわさんだ。

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