何故か人物相関図の矢印が見えるようになってしまった件
蒼風
0.プロローグ
0.適当なお願いは適当に叶えられる。
思う。
もしこの世に神様なんて存在がいるなら多分……いや、絶対に意地悪だ。
だってそうでしょ?そうじゃなかったら、迷えるカワイイ女子中学生(当時)に対してこんな仕打ちをするはずがないって。
「おはよー」
「あっ、う、うん。おはよう」
私の席から少し離れたところで、クラスメートAとクラスメートBが挨拶をした。苗字は……なんだっけ。まあいいや。
んで、その二人。普通ならば聞こえてくる会話と、後は二人の行動とか、声のトーンとか、目線の動きとか。そういう様々な要素を使って、その二人が本当に仲が良いとか、実は片方が片方に対して寄っかかってるだけ、とか。片方は友達だと思ってるけど、もう片方は明らかに友情以上の感情を抱いているとか、そういう判断を下すんだと思う。分からないけど。だってそういうのずっと苦手だし。
だから今、私の目にもし、「通常の人間にしか映らない情報」しか入ってこないなら、私は彼女たち二人を、普通の友達として認識してたと思うし。なんなら今でも本当はそうなんじゃないかって疑ってるくらい。けれど、実際は、
クラスメートA
↓
中学の同級生。話したことは無いけど、数少ない同じ中学校出身なので、仲良くしたいと思っている。
↓
クラスメートB
クラスメートB
↓
中学の頃からずっと恋愛的に好き。高校も同じ学校に通いたいという一心で選び、受験に向けて猛勉強した。
↓
クラスメートA
なにこれ。
なんだと思う?(疑問形)
そう。
私の視界にはこういった「人間相関の矢印」みたいなものがしっかりと映っているんだ。
もちろん、生まれてからずっとこんなものが見えるわけじゃない。小さい頃はもちろんそんなものは見えてなかっただろうし、最近……それこそ中学校を卒業する手前くらいまではこんなものは一切見えてなかった。
見えるようになったのはここ最近。中学校を卒業してから、高校に入学するまでの間……いや、そんな曖昧じゃない。タイミングはもっと明確だ。
忘れもしない。あれは高校の入学式前日。私は、どういう訳かその日は、普段は一切目もくれずに素通りする。初詣のタイミングでしか敷地内に足を踏み入れることのない神社の境内に入っていた。魔が差したってやつなんだろうか。神社だけど。
境内に足を踏み入れた私は、閑散とした敷地内を歩き、本殿にたどり着き、どういう風の吹き回しか、いつもは欠片も信じちゃいない神様にお祈りを捧げたのだ。お賽銭はたまたま余っていた五円玉。記憶の片隅にある参拝の方法を引きずり出してお参りし、神様にこうお願いしたのだ。
「もう少し、人と仲良くなれますように」
今思うと大分曖昧なお願いだったと思う。
なんでもどこだかの縁切りで有名な神社は、自分と家族の縁を断ってくださいとお願いしたら、家族が自分以外全員死んだだとか、そういうとんでもない解決方法を提示してきたなんて話もあるくらいだし、神様にお願いごとをするならばもうちょっと具体的にするべきだったんだと思う。
けれど人生そう上手くは行かない。まさに後悔先に立たずで、その曖昧過ぎるお願いごとと、普段は一切信じていないのに、都合のいい時だけお願いをする不誠実さが混ざり合って伝わってしまったのだろう。あの時お願いを聞いてくれた神様は、実に斜め上の解決方法を取って来たのだ。
最初は、何かのどっきりかと思った。
お参りを済ませて家に帰ると、母親と父親の間に簡易的な「夫婦」という相互矢印があったのだ。正直、目の錯覚かと思ったし、何回も瞬きをした。なんだったら夢を疑って頬をつねってみたりもした。
だけど視界に映る矢印は一切の変化もなく、二人の間に存在し続けた。
しかも、二人の位置が移動すると、それに合わせて移動するのだ。
流石に別々の部屋に移動すると見えなくなるのだけど、正直、何が起きているのかが分からなかった。
もしもどっきりだとすれば、あまり動揺するのも恥ずかしいし、さっさと終わらせたいから、事実を指摘するべきだろうと思う。
けれど、もし、これが、自分にしか見えていないものなのだとしたら、そんなことを指摘してしまったら。考えられる扱いとしては「疲れていると認識される」か「頭がおかしくなったと思われる」か「漫画やアニメの見すぎを疑われる」の三択くらいだろう。
結果として私は、その余りにも異常すぎる状態を放置し、指摘せずに一日を過ごした。
そして、翌日。
家族以外の人間と接する機会があって私は確信した。
あの適当すぎる参拝を境に、私の視界には「人物相関の矢印」が見えるようになってしまった。
そして、これはまだ仮説でしかないが、何故か「自分を起点及び終点とする矢印」は見終えないという謎仕様まで追加されているようだった。
思う。
きっと神様はこれで人の気持ちが分かるようになるだろうと考えたのだろう。確かに、人の気持ちを探る上で、本心が分かっていることほど楽なことはない。
思う。
きっと神様は、私に試練を与えたんだろう。
これで人の気持ちが分かるようになったのだから、彼ら彼女らの橋渡し役になりなさい。
思う。
もしこの世に神様なんて存在がいるなら多分……いや、絶対に意地悪だ。
だってそうでしょ?そうじゃなかったら、迷えるカワイイ女子中学生(当時)に対してこんな仕打ちをするはずがないって。
神様。聞こえてますか。聞こえていたら返事はしなくてもいいのでお聞きください。
「嫌がらせでしょ、これ……」
教訓。神様にお願いごとをするときはきちっと細かく、どうなってほしいかも述べようね。
……はぁ。
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