最後の試練


 最終試練。はっきりとした条件はわからないが、恐らく城将ルークを超えることだ。


 しかし、どうやって超えるのか。単に倒すことなら楽だが、相手は自分自身の深層心理。深い所に眠っていた、翠夢の闇、その奥にいたモンスター。


†††††††††††††


「どいていろ。こいつを滅ぼす」

「はい…滅ぼすって…」

「そのままだ。こいつを倒さなければ俺たちはこの世界から出ることができない」


†††††††††††††


『2人で話すとか危ないな』


 翠夢は、この城将ルークを倒すのではなく、滅ぼすことにした。


 手始めなのか、城将ルークが殴りかかってくる。しかし、翠夢はこれを軽々と回避することが出来た。自分でも危ないと思うことが多く、こういう状態を回避するタイプのはずである。


「翠夢さん、危ない!」

「!!(…危ないはずだが、見たことがある気がする。この動き、かつての俺に近いな。怒りに身を任せるだけの動き)」

「ええ…なんであっさり回避できるの…そういうのは苦手だって…(やめて…)」


 見たことがあった。そして、この動きに有効な方法は…正面からのカウンターだった。怒りに身を任せて殴りかかっているところに、近づいて額にめがけて一撃。この動きは、反撃してこないと思っているからこの動き方だ。


 一撃を加えることに成功。翠夢の考えの通りだった。城将ルークは想定外の反撃を受けて吹き飛び、不自然なくらい大きい声で悲鳴を上げた。

『ぐぎゃああぁ!』


 翠夢は、倒れ込んだ城将ルークに対し、さらに攻撃を…加えられなかった。その代わり、倒れ込んだ状態で動けないように身体の上に乗る。片手には護身用のつもりだったナイフ。すぐに止めを刺せる状態で話を始めた。


「出会ったときから思っていた。お前は、過去の俺なんだな」

『それがどうしたぁ…』

「過去の俺は、やったことを後悔も反省もせずに生きてきた。そんなこともあったが未来のために無視してきた」

『古い話は忘れろ…それがいいと言われ続けていただろう!』

「いや、このタイミングだからこそ俺は受け入れないといけない。最後の試練が自分を超える事だと解釈したが、過去を受け入れろということだと考えた。俺は過去を忘れない。受け入れて、背負っていく」


 翠夢の過去は本当に嫌なことしかなかった。嫌なことしか覚えていないのかもしれない。小学生の頃はまだ良かったが、中学生から崩壊していっていた。その時の性格は、城将ルークに近い。正義を振り回し続け、従わない物に対して熾烈な攻撃を与えなければならない考えを持っていた。


 いつ頃か、この考えは消えたと思ったが、そうではない。深層心理の奥に隠れていっただけだった。病院送りになる傷で、後悔と罪と罰が出てきてしまった。心の闇だったのだが、これらをとうとう乗り越える時が来た。


城将ルーク、お前の負けだ」

 翠夢は、自分の過去と闇を象徴していた、城将ルークにナイフを利用して、致命傷を与えた……

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