長い旅の終着点


城将ルーク、お前の負けだ」

 翠夢は、自分の過去と闇を象徴していた、城将ルークに致命傷を与えた。


 城将は、まるで役目を終えたかのように、光に包まれていく。姿が少しずつ薄くなっていく。

「なぜだ…何故受け入れないんだ。幸福が待っているのにそれを受け入れられないのか?!」

「その幸福は誰が受けられる?誰が幸せになる?好きを押し付けてどうするんだ?」

「俺が相手のことを好きなら、相手も好きになってくれる。みんな幸せだ」

「それはお前が持っている考えだ。相手に期待し、それが裏切られたら卑怯者だと叫ぶ。挙句の果てに人の話を聞かない人を潰した。お前が一番の卑怯者だ」


 城将は、表情を変えた。いったい何を考えているのかはわからない。表情を変えた後、大声で泣きだした。

「逃げるのか…考え方が請けいられなければそうやって突き通そうとする。こいつが俺の中にいたから俺は酷く苦しんだんだ。正しいことを押し付けようとしたんだから、今度は俺が押し付けることにした」


 翠夢は冷たい表情で、今までやってきたことを批判する。そして、自分が昔にやってきたことを懺悔する。表情は明るいとは言えないが、微かな希望を感じさせる。

 城将は泣き続け、そろそろ消えそう…になった。その時、翠夢の後ろに隠れていた瑠璃が、話し始めた。


「城将さん。私は、今回、一番好きな人の過去をすべて知りました。城将さんも、そのうちの1つです…」

 そして、あろうことか城将に手を伸ばし始めた。恐れていたはずの男に、手を伸ばし始めている。


「待て」

「なんで止めるんですか?」

「この男は、お前を…」

「消えかけているので、もう大丈夫だと思います。ここで見捨てるにはちょっと…」

「…わかった。でも問題が起きるかもしれないから、片方の手は俺が繋いでおく」

「ありがとうございます」


 瑠璃は、城将に右手を伸ばし、つなぐことが出来た。左手は翠夢が繋いでいる。


「俺は…何も知らなかった…正しい事をしているつもりだった…それに気が付ければ苦労しなかったかもしれない」

「ありがとう…」その言葉を最後に、城将は光に包まれ、星が爆発するような凄まじい光とともに完全に消えた。


「終わったな」

「終わりました。これで、良かったんですよね?」

「そうだ。あの男の最後にありがとうと言わせるとは思わなかった。俺は…いろいろやりすぎたかもしれない。過去の自分の批判を」

「そんなことないです。できるなら…ずっとこのまま、あなたらしくしていてほしいです」


 2人で話を進める。そして、話が終わり、長いハグをした。


 その後、12歳の翠夢が急に出てきた。

「なんだ?カップルがお互いを確かめ合っているところに入ってくるとは無神経だな」


「おめでとう。この世界は、君の精神世界だ。君の心残りがこれですべてなくなったんだ。試練は完了。僕はここで役割が終わる」

 12歳の翠夢が勝手に話し始める。この世界の仕組みを。

 その中には、瑠璃がどうしてここに来たのかも。想像していた通り、マインド・トランスミッションによってこの世界に入ってきた。


 また、最初の時点で既に翠夢は疲れていた。この理由は、試練を超えられなかった場合、試練の記憶を失い、初めからやり直させると言うものだった。このような状況は、深層意識にあった翠夢の絶望から生まれた。

 何度もやり直させ、精神世界の翠夢が限界になったら、この絶望の精神世界は削除される。そこにいた瑠璃と、現実世界の翠夢は帰らぬ人になるという恐ろしいものだった。そして、今回が回数の限界であり、9回目であったようだ。10回目は超えられないところだったという。


これを超えられたと言うことは、心残りは消え、先の段階に進めるようになったということだろう。この心残りがあった翠夢の精神世界は、時間が経てば消えてしまう。問題ない状態の精神世界が残るのだ。


 このままだと2人は元に戻れなくなる。この消える世界と一緒に消えてしまう。しかし、この消える世界から、脱出できるエリアがあるのだ。そして、この最終試練の場所が、そうだった。


「そうだ。今まで世話になったな。過去の俺は、ここでいなくなるんだな」

「僕は役割を果たしたから」

「…あの、私からお礼を言わせてください。ありがとうございます」

 そして、12歳の翠夢が消える。


 その後、翠夢と瑠璃、2人は意識が遠のいていった…


☆彡

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