卒業編

目覚め

☆彡


 聞き覚えの無い、よくわからない音が聞こえる。


 意識を取り戻した、はずだがまだうまく力が出ない。目が上手く開けられない。


「(…)」

「…ぇ?」


 聞き覚えのある声が聞こえる。でも、声が出せない。声を出す前に、身体を起こしたいが、覚えのない布団が…あれ?


「んんっ…」

「…あれ?あっ…!」


 やっと、目が覚めた。今まで何があったのか。覚えきっているとは言えないが、ある程度は覚えている。


「あ…起きた…ああ…うっ…」

「…何故お前が…いや、そうか」

「呼んできます。担当の人を…」


 翠夢は、夢から目が覚めた。瑠璃はすぐ近くにいた。医師を呼んでくる前、眼鏡越しに少し泣いているように見えた。

 医師の話によると、数週間ではあるが、ずっと寝ていたようだ。あの時に致命傷を負ったように思えたが、寸でのところで逃れていたという。しかしそれでも傷は深かった。

 自分で刺されたところを触ったところ、傷は既に治っている。一応、すぐに治ったのだが、全然目覚めなかった。この時、精神的な面の対応のための切り札となりうる、マインド・トランスミッション装置を利用した。まだ実験中の為、安全かはわからないが、一応被験者として瑠璃はこの装置を利用した。


 そこからは、記憶の通りである。精神世界の出来事により、心残りが改善され、精神世界から復帰した。

 まずは瑠璃からであった。目が覚めた後に検査をしたところ、瑠璃は特にダメージはなく、問題なく過ごせると言うことだった。この検査が終わった後は、そのまま帰宅できる予定であった。しかし、翠夢が意識をすぐに取り戻さず、心配でずっと近くにいた。先にいろいろな方面に連絡して。


 その数時間後、翠夢は目覚めた。もう外は夕方であったが、翠夢も瑠璃と同様の検査を行った。別に問題はなく、明日には問題なく退院できる。


 検査後は、病院のベッドに戻るのだが、目が覚めたと言うことで、面識のある人がやってくる。それらを優先して、最後に面談するのは、もちろん…


「あの、翠夢さん、大丈夫ですか?その、いろいろ…」

「目が覚めたから大丈夫だと思う。そういう意味ではない?」

「…あの、精神世界の中の話。最後に居た、城将ルークの言っていたこと、本当…ですよね。性的な…」

「本当だが。自分の中だから、そういう感情もある。実際にで瑠璃を見ていた時もある」

「辛くないんですか!?」

「…」

「…」

「…つらい」

「…えっ…」

「…つらいと言った。でも、そういうのを出してしまうと怖がるから。耐えないと。自分で決めた。何度も何度も、それを誤魔化すために…」

「そんな…つらいなら、話位は聞けますよ…。私だけが得をしてるみたいじゃないですか。もう、翠夢さんは良いんです」


 良いんです…その言葉を聞いた時、翠夢は力が抜けていった。あまり表情が変わっていなかったが、笑いと安らぎの表情へ変わっていった。


「…その言葉を、俺は望んでいたのかもしれないな。赦しをもらいたかったのかもしれない。ありがとう。好きな人と会えて俺は幸せかもしれないな…」

「あっ…疲れてます?」


 急に好きと言われ、赤くなりつつあったが、瑠璃は顔を近づけた。


「その先は退院してからだ。すまないな。もう時間だろうから、明日よろしくな」

「はぅ、すいません」


 面談を終え、1日後、翠夢は退院することが出来た。


☆彡


そして、1年後、卒業へ…


☆彡

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