必死の抵抗

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 お前が、絶対に手に入らないと思っていたもの、その望みが正面にあるのに、なぜそれを否定するんだ?


 それは望みじゃない。俺の望みは欲じゃない。


 助けてくれた人に対して、見返りを期待するのが人じゃないのか!?


 見返りはもらってる。かつての俺がもらうには十分すぎるほどに。


 責任と問題から逃げ続けた卑怯者が!お前が周りにしてきたこと、他人に対してしてきた過去を今更精算できると思うな!お前は手に入れてはいけないはずだ!


 責任と問題?それらはもう対応する必要がなくなっている。過去は捨てた。それに、迷惑をかけてばかりだったと叫ぶが、あいつらは俺が生きているだけで迷惑だとしていた。


 加害者がのうのうと生きているのが不快だと言ってるんだ!


 言いたいことはそれだけか。


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「…あっ…うっ…」


 瑠璃はもう憔悴しており、もう力が残っていなかった。何とか抵抗しようにも、同年代の男の人には敵わない。

 『翠夢』は、もう取ったと言うばかりに、上から乗り、そのまま覆い被さろうとしたが…


『う…あああ!あっ!ああっ!』

「…えっ…?」


「離れろ…今だけだ…俺はこいつを抑え込まないといけない」

「ああ…!翠夢さん…ごめんなさい…」

 瑠璃は、ずっとこぼれていた涙が止まらなかった。絶望の涙だったが、今度はいろいろな感情が湧き出続けた、嬉しさの涙だった。

 尽きかけた力を振り絞った。覆いかぶさろうとしていた翠夢から、抜け出すことが出来た。


「はぁ…あっ…あっ…」

 瑠璃は泣きながらも、謎に苦しみ続ける"翠夢"を恐る恐る見る。見続ける。


『う…あああ!あっ!ああっ!お前!!!なんで今の状態で!』

「この身体は俺のものだ!乗っ取られた挙句、好きな人を傷つけることになった!それだけでも…!」


 許せなかった。この城将ルークがこの子に手を出すこと自体が。こいつ自身が自分の深層心理にいたことも。今までしてきたことを、こいつにすべて無駄にされるところであった。


「うおおおおお!あああああ!」

 感情をあらわにし、主導権を取られていた身体を取り戻す。翠夢の全身から霧のようなものが出てきた。城将ルークがいられなくなったのだ。そして、霧のようなものが集まり、身体を生成する。やっと身体を取り戻したのだ。


 城将ルークの考え方は、中学時代の時の翠夢に近い。偏見と暴言と勘違いにまみれ、正義として他人を罵倒して叩き潰す。善人に見えるが、その実助けた時は必ずお礼をする必要があり、しなければ徹底的に罵倒し、卑怯者、悪人扱いする。好きな人、友人に対しても同じように動く。周りの人があんまりにも残念だったからと言い、この考えは止めなかった。

 翠夢は考えていた。この考えのせいで状況が悪かったのだと。こいつが出続けるのであれば、いつか周りに人はいなくなる。あるタイミング……おそらく中学卒業当たりで無意識にこの城将ルークを閉じ込めていたのだと、翠夢は考えた。


 この男に負けるわけには行かない。瑠璃の為、友の為に。自分の為にも。ここで滅ぼすべきだと。

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