折れない2人の心
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外の広場に倒れ込んだ。絶望の淵に立たされた翠夢だったが、その際、周りに合った空間がまた変わっていた。病院は無くなり、真っ暗な部屋。入ってきたときの教室なのかもしれない。
どこからともなく声が聞こえてきた。翠夢にそっくりな声だった。
これが、お前の本来の姿だ。
これが、お前のあるべき道だ。
お前さえいなければ、ああならなかった。
役立たず。
ノロマ。
「誰だ…この声は。どこにいやがる?答えろ!」
そして、暗かった空間は、元の教室に近い形となった。その椅子に、翠夢は座っていた。
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今のは、一体何だったのか。その近くには、瑠璃が居た。見たら、心配そうな顔をしていた。
「大丈夫ですか?いままで何かにうなされていたような…」
「ああ…夢なのかはわからないが、ちょっと…不安になるかもしれないが、聞くか?」
「聞いてみたいです。」
「それは…」
翠夢はこの教室に入ってからの事を話した。
なぜか、刺された時の状況が再現されたこと。そこでは、自分は瑠璃をかばうことが出来ず、瑠璃が刺されたこと。
刺された後、瑠璃は救急車で運ばれ、その病院に行ったら、既に瑠璃は亡くなっていたこと。そこで後悔するも、周りの人、瑠璃の家族、自分の家族、友人、瑠璃の友人、医師、それらの人に人殺しとされ、酷い罵声を浴びせられたこと。
瑠璃を守れなかったことが本来正しい道だったことも。
「…そんな…」
「本来、俺と瑠璃は関わらない方が良かったかもしれ…」
「違います!絶対に…私もここで似た経験をしました。その時、祭りの時に翠夢さんと係をしていました。でも、その人は…翠夢さんと全然考え方が違って、最後はその人に手を上げられて…」
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翠夢は、手で瑠璃の口を塞いだ。
「やめろ。話さなくていい。それ以上は駄目だ」
泣きそうになっていた、瑠璃の涙腺が、とうとう決壊した。眼鏡の奥にある目から、涙が止まらない。
「ごめんなさい…。その時、殴りつけられかけて、そこで今のような感じになりました…」
翠夢は、瑠璃の背中に腕を回す。どういう行動なのか、それを理解したのか、瑠璃は拙い動きで、ハグを受け入れた。
「つらかったな。俺が怖いか…?男の人が、怖いか?」
「かなり慣れてきたと思うのですが…まだ怖いです。手を上げられたりするのは」
「それは誰だって気分が良くないから、慣れなくていい。俺が怖いなら、いま抱きしめるのをやめるが…行動を考えれば、問題はないか」
「はい。状況は前と変わらないと思います。あ…でも…次に進む前に…」
「どうした?」
「優しく、本当に少しだけの…」
「そうだな。もう準備はできているな」
「うん…」
呼吸のように、でも初々しかった頃のように、2人はキスを一瞬だけした。
「先に進むぞ」
「はい!私たちならできます!」
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