★彡 久しぶりの夢
★彡
「…なんだ?久々にこの夢だ。こういう夢はほぼ見なくなっていたはずだが」
翠夢は、見たくない物を見せられていた。中学生の頃の絶望を再現した夢。
首を絞められ、身体をドアに挟まれ、異常な暴言を吐かれる。それらが終わった後には、血だまりに倒れ込んだ翠夢が出てくる。完全に事切れたわけではなかったようだが、少し動いてから、全く動かなくなった。
『思い出せ。今まで女と関わった結果どうなったか。良い事なぞなかったはずだ』
城将が話してきた。
★彡
過去を思い出す。本当に良いことがなかった。散々な目に合い続けた。
しかし、今は両想いの恋人がいる。この子と仲良くし続けたいと思う。そうすれば良い方向に変わっていけるはずだ。
「過去か。過去でしかない。今の方が重要だからな」
『散々迫害されてきたのに、そういう人をどうして受け入れる?』
「別にあの子はそういう態度を取ってきていない。今の学園でも、そういう態度を取る人はいないから、こちらも警戒する必要はなくなってきてる」
『それでも、女に手を上げた事実は消えない。問題から逃げ続けた事実は消えない』
結局過去の問題は消しきれていないのは間違いない。当時の奴らが何故かまとわりつく異常さ。あれを何とかしなければならないだろう。
★彡
『状況が悪くなればすぐ逃げた男が何をしている?弱者が女の子と関わるな』
そして、酷い暴言を吐かれるかつての翠夢が登場する。
『これがお前だ。お前は不快だから消えるべきだと言われたはずだ。どうして生きている?』
「あいつらはどうしようもない。自分のために生きる」
『あれだけの暴言を言われたのに、そいつらと似ている人に少しでも優しくしようとする理由は?お前はおかしいんだよ』
優しい?何を言ってるんだ?
好きな人に優しくするのは当然だろう。過去にいた人に対しては優しくは出来ないが。
小学生の男の子が好きな女の子にいたずらしてしまうというのもあるが、その時代は過ぎ去っている。
『おかしくないというなら、それを証明して見せろ…』
「どうやって?」
『正面の子に対して優しくして見せろ』
★彡
すると、倒れ込んだ瑠璃が出てきた…はずだった。
「…瑠璃、どうした。そんなところで倒れていて…何があった」
「…はっ…誰ですか、気持ち悪いです。近くに寄らないでください」
「へ?何を言っているんだ?」
「なんで近くにいるんですか?」
「瑠璃は両想いの好きな人だ。何かあったら助けてやらないと」
「なんでそんなに偉そうなんですか?助けてやらないとって何?それに、私は別に好きではないですよ?」
おかしい。気持ち悪いと思われることはなかったはずだ。少なくともこの子には。瑠璃の本性なのか?それとも?
そんなことを考えるうちに、瑠璃のような女の子は、虚空に消えていった。
★彡
『これがとんでもなく醜いお前の本性だ。好きな女の子すらまともに幸せにできない。見た目だけだ。容姿が好きなだけだ』
「あんな姿をした子が好きな女の子だって?あれは偽物だ。容姿が好きな女の子に似ているだけの偽物だ!」
『本物はどこにいる?ここにいるわけがないだろう?』
「ああ。ここにいるわけがない。残念ながらここで話は終わりになりそうだ」
『…寝るつもりなら、抱き枕を用意できるが?』
本物はここにいない。翠夢は混乱しているが、抱き枕をもらうことになる。この夢の中でも寝っ転がる。抱き枕を抱きながら。
おそらく夢から覚めるのかもしれないが、それはいつか。毎回、いつの間にやらこの夢が終わっている。
…この夢の意味は?結局何なのだろう…
☆彡
その朝、恋人同士の2人は添い寝をしていたことを忘れていた。しかも、抱き枕を夢の中で抱いていた翠夢は、あろうことか瑠璃の背中に手を回していたのだ。
それに気が付いた2人は、初々しい反応をするのだった。
☆彡
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