濡れ衣
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「わかっているんだぞ。お前がここで火をつけたのは!」
「ああっ!ああっ、うあぁ!」
「お前が、このようにして破壊したのは!証拠もあるんだぞ!逃げるのか!」
「ああぁっぁ…放してください。僕の話を聞いてください」
「お前に対しての罰だ!話なぞ聞くものか!」
翠夢は、過去にあったトイレ放火事件。その濡れ衣を着せられていたことがあったが、その状況が再現されていた。そして、瑠璃はいなくなっていた。ここに入ることは許されないからだ。
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「燃やしていません。話を…」
「だったらそこにあるライターは何だ!こんなものが置かれているわけがないだろう!よく行く人に決まっているだろう」
「元は個室にいたのですが、そこに火をつけられて…」
「火遊びしてたのか、その年齢で!やっていいこともわからないのか、馬鹿じゃねぇのか本当に」
「一回脱出して、火を消しました。そこで先生がやってきて…」
「そこらへんに散乱しているごみを見るんだな」
雑巾掛けが破壊され、そこら中にホースが絡まっていた。いったい、誰がやったのだろうか。それでも、翠夢はやらなければならなかった。この状態を片付けなければ。
それを示唆するように髪は離された。他の先生は、軽蔑したような目で見続ける。逃げることは許されなかった。かつては、ここで犯人を捜していたが、それは許されなかった。後になっても犯人は見つからなかったのだ。
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翠夢は、何とか現状を片付けることにしたのだが、まだ足りないことがあるようだった。
「お前、人に言うことはないのか?こんな状態にして」
「ごめんなさい。もうしません」
「馬鹿にしてるのか!自覚が足りないようだな」
翠夢は、何度も殴打された挙句、土下座させられて頭を踏みつけられた。
「申し訳ありませんでした、修理代を支払います、許してください、お願いします、だろ!」
「はい…申し訳ありませんでした、修理代を支払います、許してください、お願いします」
「内申点は最低得点にしてやる。これで未来は無くなったな。お前の罰はこれで終わりだ。今後やったら潰すぞ!」
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先生は戻っていった。
一度トイレから出てみると、瑠璃が泣いている。男の怒号を聞き続けて立ち上がれなくなってしまったようだが……
「瑠璃。怖がらせてしまった。申し訳ないな」
「…翠夢さんだ。良かった」
わき目も振らずに抱き着いた。瑠璃は、何故かここで金縛りにあっていた。おそらく、この話を聞かせるための仕掛けだろう。先生が出ていったから解けたらしい。その時に力が抜けて倒れ込んでしまったという。
その間、恐怖の象徴ともいえる怒号を聞き続けていたのだ。
「うぁああああん!あっあっ…あん!わあああああん!わあああああん!」
翠夢は、泣きじゃくる瑠璃の頭をなで続ける。
「(そうだ…男性恐怖症、軽くなったとはいえまだ残ってるんだ。俺は付き合えないと思っていた子と付き合っている。だからこそ、このような状態も回避できるようにならないと)」
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