次の試練の前に、知っておきたい
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この世界は恐ろしいものしかない。毒花粉は言うまでもないが、そもそも空が赤く暗い。人の気配を感じない。
瑠璃はこういう空気を非常に苦手としているが、彼氏こと、翠夢がいることで問題なく立ち向かえている。
次の目的地は、よくわからない建物。曲がったひし形の建物であり、それが無数にある。その入口に2人は来たのだが…
「入るところ、ない気がするんだけど…」
「この建物、普通に入るんじゃなくて、地下から行くのかもしれない。地下鉄を探そう」
地下にはすぐ行けた。問題なく電気がつけられており、ここは現実世界に非常に近い場所だ。建物に入る直前で、一回休むことにしたようだ。
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「あの…翠夢さんは中学生以下の頃、何があったの?」
「…もう話してもいいだろう。君にとっては俺と関わるのが辛いことになるかもしれない。それでもいいか?」
「今知りたいんです。もしかしたら、好きな人がいなくなるかもしれないし…いろいろあるんですけど、知っておきたいんです」
「…わかった。少しずつ話そうと思う。長い話になるから。この世界から出られたら、すべて話そうと思う」
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翠夢の状況が少しずつ変わっていったのは、小学生4年生の頃であった。このころが一番難しい年代と言われることもあるようだが、それ以前の問題がここで発生した。
何故か、とある物が1人だけ配られない現象が起きた。1人だけである。1年使うものが、配られなかったためその話をされた場合、忘れたと言わざるを得なかったのだ。
それは、先生にとっては、持っているはずの物だったようで、それに翠夢は気が付いていなかった。そのため、ずっと逃げ続けるしかなかった。ここで急に先生に対して厳しい態度を取られることが増えたのだ。
といっても、それは4年生の時だけで、何とか切り抜けられた。しかし、とある物が1人だけなかったと言う事実は、翠夢の精神を著しく傷つけた。なぜ1人だけこうなったのか。周りに見捨てられていると感じたのだ。
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翠夢は、この話を終えた。
「…なんで…わかっていたなら、対策が出来たのに…」
「わかっていなければ対応できない。単純な話だ。今考えれば、ただの自業自得だ。だが、ここからちょっと歯車が狂い始めたように思ってる」
そう。先生から見れば、ただのやる気のない不良行為。そういわざるを得ないし、許されることではなかった。しかし翠夢は、今まで問題なかったはずだったのに、ここから急に下降線をたどっていくことになる。正しい道を何とか見つけることだけを強いられるようになった。そうしなければ、逃げた卑怯者と判断された。
暗い空気になってしまったが、入るべき建物を見つけることが出来た。
「まあ瑠璃が気にすることじゃない。よし、入ろう」
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「ふざけているのかお前は!」
「ああっ!うぁああ!」
翠夢は建物に入った途端、髪を引っ張られていた。何者かに。それは…かつて関わっていた先生だった…
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