中学時代。そこには…
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この中学時代では、翠夢にとって、逃れられない絶望の毎日があった。
「ここは、俺が通っていたところだ。部屋は明るいが、あんまりいいことはなかった」
「私も…いいことは少なかったけど、翠夢さんよりは良かったのかな」
そんな話をした後、いなくなっていた12歳の翠夢が出てきた。
『ここでは、かつての僕が味わった絶望が詰まってる。今の翠夢なら、全部耐えられると思うけど…』
「俺は別に折れたりはしない。瑠璃と」
「耐えられないときは、私が受けてもいいですか?」
『難しいと思うけど、支えにはなれるはず』
「ありがとうございます。翠夢さん、行きましょう。怖いですけども」
「ああ…」
12歳の翠夢は消えた。
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最初の部屋である。かつての教室。その教室に入ると、突然、野球のボールが翠夢めがけて飛んでくる。当然、高速で体に当たり、翠夢はうずくまる。
「あの…大丈夫ですか!」
『大丈夫とはなんだ大丈夫とは!てめぇが遊びを邪魔したんだ女は入ってくんな!邪魔されたからな、そいつを殴りつけてやる!』
なんと、ボールを投げた少年は激怒して翠夢を殴りつけてきた。
『なんだ?昔のお前は周りにすぐ当たり散らす奴だったな!そうしてみろよ!俺たちの邪魔をしたと言う自覚がないクズが!物を壊せよ!人を殴れない弱虫が!』
「ああ…そうだったよ。昔はそうだった。でも俺は…その頃からそういうことをしたくなかった。弱虫だと言われようが。この子も、怖がらせたくないし」
「だから、ここで終わりだ。手は出さない。人を殴るのが弱虫じゃない条件なら、俺は弱虫でいい」
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翠夢は、発言の後に何かしてくるのであれば、反撃を行うつもりであったが、ボールを投げた少年は霧になって、消え去った。
翠夢には、過去のわだかまりがあったのだが、その一つが今の件であった。この時、怒りに狂い少年に机を投げつけている。怪我されたのであればそれくらい当たり前だと考えており、それを実行した。しかし直撃せず、その後、少年には「やったことの意味がわからない」と言われ、翠夢は職員室に運ばれていった。
当然、翠夢はろくな扱いを受けず、すべてやったことの叱責を受ける。少年が野球を急にし始めるのが異常だと話したが、他人に責任を負わせたとされてしまった。
これが何度も何度も、中学生の頃には慢性的に続いた。長く続いた後に残ったのは、他人をほぼ信用しないようになった翠夢だった。ただ、それでもあがき続けた。ここで怒りに震える状態にならなかったのは、恐らく瑠璃がいたからだろう。
「そんな…人に話せることじゃない…」
「俺が悪い所があるし、だから話せることじゃないんだ。似たようなことは何度もあった。成績もテストの点数は95点くらいを取っていたが、これらの事があったから最低レベルに下げられた」
「そんなところに生きてくるなんて。私が思ったよりも重かった。でも、乗り越えられたんだよね?大丈夫だよね?」
瑠璃が心配していることの質問に、翠夢は答えられなかった。
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