好きな人のために動けると気が付いた
☆彡
「あの…翠夢さんは、病院に運ばれてしまいました。刺されて」
あれは致命傷だったようにしか、見えなかった。
あの時。私は何もできなかった。かつてのいじめの対象に押し倒されて、抵抗することしかできなかった。逃れられなかった。それでも、すぐ近くにいる彼氏が助けてくれた。
あの人たちを許すわけにはいかない。だから、何とか警察に突き出そうとした作戦だった。そこで私の好きな彼氏は、かつて関わっていた人に2回も刺されて。あの人は翠夢さんも嫌いな人だったけど、こうしなければ…と思い始めて。
あれだけの怪我をしても、私の彼氏は…それでも強くあり続けた。
救急車に運ばれていく。あの時、私は不思議と涙は出なかった。
この時、気が付いたんだと思う。
「イキナクテハ。」
†††††††
「ごめんなさい。あの時にしっかりしていれば…翠夢さんは刺されなくて済んだのに。それでも…」
「…そうか。だとするなら…こうするしかないな」
「あ…あう…(後ろから…)あの、本当に、ごめんなさい!」
「もはや許す許さないの問題じゃない。ますます2人で脱出しないといけないと思ったからな。続きを聞かせてくれ」
†††††††
☆彡
「あの日、寮に帰りました。ずっと泣き続けて。周りの友達にも心配され続けて。次の日には、何とか勉強できるようにはなりました。でも、勉強に集中していないと…」
あの時、本当に好きだと気が付いた。
だから、何とか助けてほしかった。
経過は翠夢さんの家族以外にも、特別に私にも教えてくれるようになった。多分、好きな人に永遠に会えなくなるのが不安になっているのを、皆が気が付いていたから。幸いにも、翠夢さんの経過は良好だった。
そのはずだったのに。
何故か目を覚ましてくれなかった。
理由不明。体自体は直っているのに。まるで呪われているのかのように。身体はほぼ完治した翠夢さんが、目覚めない。どうしてかもわからなかった。そして、生を失っていった。体温が下がり続けて、このまま下がったらもう…
この状態になってしまったのであれば、ある可能性が生まれた。
最終的に、心の問題だったようだった。
昔は、こういうのはわからなかったらしい。でも、心の世界というものに、他の人が入れるようだった。とある装置を利用することで。
☆彡
「その装置を使ってみたの。翠夢さんの家族が使うつもりだったけど、今一番近くにいるのは瑠璃ちゃんと言われて。失敗したら戻ってこれないと言われたけど、それでも…」
「わかった。現実の話とは思えないが、そういうことがあるなら、俺の問題があったんだな。自分で何とかしたいが、何とかできなかったってことでもある。俺の問題を、君にちゃんと話すべきだった」
「いえいえ、でも、ここは…この世界から出るのは考えないと。私がいれば探しやすくなると思います。本来入れずに実質助からなくなる可能性のあるものでした。でも今は助かっていると言うことは、私が出来ることがあると、翠夢さんも考えているはずです」
好きな人のために、そして自分のために、2人はこの世界からの脱出を決意する。
また、この世界の正体にも、確信は出来ないが、2人は気が付きつつあった。
恐らく、翠夢の精神世界だ。
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