ここから脱出しなければ…


 倒れていたのは、あられもない姿の瑠璃。見えてはいけない部分は見えていないが、見えかねない状態であった。翠夢は後ろを向き、


「おい、起きろ!ここは危険だ!」

 叫ぶ。倒れている瑠璃を起こすために。姿が姿なので、下手に見るのは危ない。見たことを想像させることも話せない。


「う、ふん…何…はっ…えええええ!?」

 瑠璃は気が付いたようだ。同時に、姿が大変なことにも気が付いた。


 問題を起こしたわけではないが、取り繕って対応方法を話す。

「すまん…でも見ていたわけではない。近くに引き出しがある。そこに服がある。俺の服だと思うが、まずは着てほしい」

「はう、わかりました…」


 瑠璃はちゃんと服を着る。彼シャツと言われる服装であるが、見えないようにするために上にさらにシャツを着ている。スカートではないが、動きやすい服装になった。


††††††


「ありがとうございます…でも恥ずかしい」

「ごめん…でも少し我慢してほしい。それに、結構似合っているぞ」

「それはいいです。ここがどこなのかわからないのですが…」

「ここか。俺にもわかっていない。この世界では何が起こるのかわからない。…それでも、ついてきてくれるか」

「あ…そうですね、2人なら何でもできそうです」


 2人なら。そうである。


 現状、この世界には2人しかいない。部屋はそれなりに暗いが、相手の顔を見れる程度には明るい。そんな状態で好き同士の男女がいるのは欲を出したくなるだろう。

 しかし、現状はそんな状況ではない。翠夢の雰囲気に不安を感じたのか、瑠璃はハグしてきた。

「今の状態、不安じゃないの?不安じゃないんですか?」

「あーっ…不安ではあるが、何とかしないといけないから。この世界の脱出はどうも俺の問題だからな。…そういえば、なぜ瑠璃はここに?」

「うん。翠夢さんが刺されてしまって、病院に行ったんですよ。現在はほぼ回復するはずなのに、何故か目を覚まさないままで…」


 この状態になった理由は現状、誰もわかっていない。おそらく、この世界を探索すれば何かわかるだろう。翠夢は問題ないと考えるのだが、1人では乗り越えられない点が大きい不安としてのしかかっていた。瑠璃はその不安を感じており、だからこそ、ハグをした。


「ああ…申し訳ないな。こんなところに招きたくはなかった…」


††††††


「安心しましたか?」

「安心…ここにいる限りはどんな危険が起きるかわからないから、安心はできない」

「そういうことじゃなくて、2人なら乗り越えられるか、ということです」

「それなら、2人ならいけるだろう。でもこの世界がどうなっているかわかっていない以上、俺の言うことを聞いてくれ。無理はさせられない。何としても2人で無事に脱出するぞ」

「はい!」


 大丈夫そうだ。この調子であれば、この世界から出られるはず。心配事が減ったからか、家から出る前に瑠璃は話し始めた。ここに入ってきたのは何故か、どうやって侵入してきたのか、話し始めた。


††††††

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