重要な約束

☆彡


 このままでは、付き合うことはなくなる可能性がある。急がなければ打ち上げに遅れてしまうのだ。それまでに話したかった。


「男性恐怖症、といったか。だから、迷惑をかけるということか」

「はい。申し訳ありませんが、この話は…」

「…だとすれば、俺から逃げた方がいいんじゃないか」


 翠夢は、話が成り立たない、矛盾を感じていた。好きな子を傷つけるかもしれないという考えはあったのだが、そもそも初めからある意味傷つけていたようなものであった。ならば、傷つけてくるはずの自分から、瑠璃はなぜ逃げないのか。そこに矛盾を感じていた。


「男が怖いというが、俺は怖いか?」

「…少し。でも、学園祭で協力してくれたから、多分、大丈夫だと思う」

「そうか。…なら、俺で練習、慣れていけばいい。慣れたいという意志を感じるし、信用できる人、好きな人で練習すればいい」

「…」

 ここまで言われて、瑠璃は気持ちが固まったようだ。たどたどしい発言が、かなりはっきりした発言となっていった。

「…私は翠夢さんが好きです。だからこそ、付き合えないと思っていました。男の人が怖いから。慣れることも出来ないから。でも…嬉しいです。受け入れられる人が居た。

よろしくお願いします。わからないことも多いですが、こういう機会も殆どないと思うので、頑張ります」


☆彡


 翠夢と瑠璃は、この時に両想いであることがわかった。瑠璃の男が怖いという点はまだ残っているため、それを何とかしていく形で付き合っていくことになった。それの対策も、少し話し合うことになった。


「ああ、そういえばあまり恋人同士になったのを話さない方がいいと思うぞ」

「なんで?私は他の子とこのことを話したいけど…照れ?」

「うーん、それもある。だけど、実際の理由は君を守るためだ。下手に噂が広まると、男からのセクハラを受けるかもしれないから。瑠璃はそういうのに慣れていないと思うから、自らそのような状態に持っていかない方がいい」

「よくわからないけど、信用できる人に対してなら言えるの?」

「実のところ、話すべきではないと思う。女子ならまだわかるかもしれない。話すとしても、親友になり得る人や家族くらいにしておいた方がいいと思う」


 翠夢は、瑠璃が間違いなく男慣れしていないことを考えて話している。間違えると、瑠璃が対応できない状態になってしまう。男の人が怖いと言うが、それはある程度自分で対応できるようにならないといけない。それを最初にしっかりと伝えていた。


「すまん。長く話してしまった。じゃあ、打ち上げに行くぞ」

「…はい!」


 始まった。ここから始まる、二人の恋愛は。

 中学生の頃まで居た所で嫌われていた青年と、中学生まで異性に酷い目にあわされて恐れを抱いていた少女の話が、始まる。


☆彡


学園祭編(馴れ初め) 完

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