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「データベース上の履修登録でミスが発覚した場合、責められるのは機械か人間かについて君の意見を聞きたい」

「責任転嫁と銘打って小難しい議論にすり替えるのは如何なものかと」

 上層部への締め切りが過ぎたあとの面倒ごとは本人の記憶だけ抹消するのが一番手早いと思う。

 辛辣にはねのけた松篠がキーボードを軽く弾きながら画面とにらめっこ。

 この講義は取る価値がありますか。

 学生は常にヒエラルキーの一番上に存在しているくせに無自覚なんだ。

 人生の大先輩を指先ひとつで切り落とす履修登録制度は過去の遺物の中でも狂気じみている。

 年功序列、男尊女卑とはよく言ったもので、データ上で年齢登録もなければ大平等万々歳。

「重複登録なら単位も重ねてやれば済むものを」

「録音してたら大問題すね、それ」

「めつ君にはユーモアという端末を外部接続したほうがいい」

「オススメアプリがあれば導入しますよ」

「しかし君の頭蓋骨には穴が空いてない」

「やめてくださいよ、怖いなあ」

 軽口が不穏な方向に進んでいくのに敏感な若者はぴしゃりと言い放った。

 検索して君を見つけられるのか、今の脳にはわからないよ。

 ボロと化したカーテンは手の中で確かに存在しているのに。

 飽くほど言葉を交わした君は脳内にしか留まらず、それすらもフェードアウトしていくんだ。

 爪を立てて布を傷つけ、山積みのゴミを前に何を起こす気すら起きない。

 過去と今を宙ぶらぶらとしていた夕下りに猫蚤は異物として訪問してきた。

「失礼致します」

「本当に失礼だ」

 敷居を跨ぎかけた長い足が空で止まり、困ったように震える。

「冗談だよ、入りたまえ」

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