2

 この世界は常に更新を続ける。

 古いバージョンに優しいのは老害と罵られ、新たな風を物理的に吹き込んで一掃する嵐の連続。

 価値なんて他人がつけるもんじゃない。

 世間が下した決定は強力なようだが。

「教授は教授でなかったら何処に行きますか」

「抽象的だ」

「無期限休暇」

 間髪入れずに付け加えた松篠は堂々としていた。

「そうだな……ごみ箱整理と洒落こむか」

「洒落てませんよ」

「簡単に空にしても洒落じゃあない」

「誰と?」

「めつ君と」

 ああ、そんなことを言ったなあ。

 記憶というのはまだ勝手で、自然に消えたと見せかけてしっかり保存されて居座っている。

 それも、自分だけかもわからない。

 共有システムは未だに穴だらけだ。

 電波を感じて頭痛が起こるならば、脳はいつでも操ることが出来るはず。

 そんな映画が昔あった。

 なんだね。

 このとりとめもない思考は。

 いつのまにか読んでいたページを見失った本を棚にしまう。

 本棚が財産などと言うつもりはないが、もうこの空間だけが存在証明かもしれない。

 ナンセンスではあるが。

 火事になれば共に燃え付きたい。

 破れたカーテンも抱き締めよう。

 お前は私の財産だと。

 嘯いて死のう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る