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機材の上に山積みになった衣類を押し退け、三芳が椅子に腰かける。
わかりやすく眼を細めて肩を落とした背中に、竹葦が笑いを漏らす。
「どうした、三芳くん」
「また言われましてね。僕のような助教授という肩書きを未だに使っているのは日本でここくらいだと」
「誰にだ? 地質の廣部か」
「農学の波羅教授です」
助教授と准教授の違いを明確に説明せよと問われて正解する割合はどれほどに減ったのだろうか。
その説明義務がある生徒は既に四年生以上に限られている。
政府が不要だと判断したのは五年前のことだ。
「気にしなきゃいーじゃん」
「めっちゃんは准教授でよかったではありませんか」
敬語を崩さないのも嫌味だ。
竹葦はそんな同期二人を愉快そうに眺めていたが、コーンスープが温くなってきたのでレンジに意識が向く。
開けると中には書類が詰まっていた。
来月の学会の資料だ。
すぐに諦めてポットの湯を足す。
「ああ不味い……飲めたものじゃない。コーンを生で水に浸して飲んでいるようだ。めつ君、飲むかね」
「自分、コーヒーがまだあるんで」
「みよ……」
三芳は爽やかな笑顔を見せて缶ココアのプルタブを爪で開けた。
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