第41話

「お嬢様。大変お美しいです。」



 あまり感情を見せないソフィアが、目を潤ませ、感慨深そうにそう言った。




「ソフィア、ありがとう。今日を無事迎えられるのはソフィアのお陰だわ。」




「いえ。お嬢様が頑張ってこられたからです。」




「ふふふ。ありがとう。これからも頼りにしているからね。」



 シャーロットの幸せそうな笑顔に、ソフィアは流れ落ちそうな涙を必死で堪えた。





◇◇◇




 ハリーとシャーロットの結婚式当日。



 シャーロットが、ソフィアと身支度を終えると、バタバタとたくさんの人が控え室に入り、一気に騒々しくなった。




「シャーロットちゃん!ウエディングドレス姿、とっても可愛いね!よく似合ってる~流石我が息子だな。良いチョイスだ。」




「いや、シャーロットは元々可愛いんだ!お前の息子のチョイスのお陰などではない!」




「も~ハワード、もう少しハリーに優しくしてやってよ。」




「ラッセルは娘がいないから、俺の気持ちなど分からないだろう。手塩に掛けて育てた可愛い娘を、拐われる父親の気持ちは!」



 いつものように、ハリーの父ラッセル伯爵と、シャーロットの父ハワード公爵が口喧嘩している様子を、それぞれの夫人が呆れたように見ていた。




「お嬢様。そろそろ、移動致しましょう。」



 ソフィアが声を掛けると、ハワード公爵がいつもの威厳を捨て、涙目で縋って来た。




「シャーロット!今なら、まだ中止に出来るぞ!」



 シャーロットはふわりと微笑む。






「お父様。私はハリー様と、共にありたいですわ。」



 




◇◇◇






「シャーロット。」




 二人の控え室に行くと、ハリーが満面の笑顔で迎えてくれる。





「なんて美しいんだ。とても愛らしい。」




「ありがとうございます。ハリー様も騎士の正装姿、とても素敵ですわ。」




「ありがとう。抱き締められないのが、辛いくらいだ。」



 ハリーの言葉に、シャーロットが顔を赤くしていると、ドアをノックされる音が聞こえ、二人の男女が入室する。







「エドモンド様!ステファニー様!」




「二人とも、忙しい時間に済まない。私が無理を言ったんだ。ラッセル騎士団長、シャーロット嬢、結婚おめでとう。」




「結婚おめでとうございます。シャーロット様、とても美しいですわ。」



 ハリーと共にお礼を伝えると、エドモンドもステファニーも優しく微笑み頷いた。





「シャーロット嬢、私たち王家は君に非礼なことばかりしてきた。改めて、謝罪と礼をさせてほしい。申し訳なかった。そして本当にありがとう。」



 エドモンドは、深々と頭を下げた。




「ラッセル騎士団長も、複雑な思いだろうに騎士団長を懸命に務めてくれていること、心から感謝している。」



 エドモンドの言葉は続く。







「シャーロット嬢。戦友であり、幼馴染みの君に、どうか幸せになってほしい。戦友が幸せであることが私達の幸せだ。」



 エドモンドが発した言葉は、王子妃候補をクビになった、あの時、シャーロットがエドモンドに伝えた言葉だ。





「エドモンド様。」




「ラッセル騎士団長、シャーロット嬢、お幸せに。」



 エドモンドは、あの幼い頃のように、あどけない笑顔を見せた。幼い頃から、シャーロットはハリーを想い、エドモンドはステファニーを想い、それを隠して、大人になってしまった。




「シャーロット、そろそろ行こうか。」



「はい!」




 シャーロットは拗らせてしまった初恋を、漸く実らせ、隣に立つハリーと甘い、幸せな日々を過ごすことができる。









〈完〉







 最後まで読んでいただきありがとうございます!



 ソフィアとハロルドのお話『冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。』本日より公開しております。


 ハリーとシャーロットのお話も出てきますので、是非お読みください!




 沢山の方に読んでいただけて、とても嬉しく、名残惜しい程ですが…。皆さま、本当にありがとうございました!!

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王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく たまこ @tamako25

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