第39話




 ハリーとシャーロットが向かった先は、劇場だった。現在人気の恋愛小説を脚本とした演目のチケットをハリーが準備してくれていた。




「とても楽しみですわ。こちらの演目、ステファニー様もエドモンド様と観に行かれたそうで、とても感動されたと仰ってました。」




 あれからステファニー達とのお茶会は定期的に続いている。ステファニーとエドモンドの仲も良好だとこっそり教えて貰い、シャーロットは漸く心のしこりが取れたように思え、ホッと胸を撫で下ろした。





「ああ。騎士団の中でもよく話を聞く。シャーロットが楽しめたら嬉しい。」




 目を細めて伝えられると、シャーロットは身体中が熱くなる。目を逸らし「・・・ハリー様も一緒に楽しんでほしいですわ。」と小声で伝えるのが精一杯だった。







◇◇◇






 劇場に着くと、最上級のボックス席に案内される。個室になっており、ふかふかのソファ席で、飲み物や軽食、スイーツもセットされている。それだけでシャーロットは気持ちが高揚してきた。




「ハリー様、素敵な席を予約してくださって、ありがとうございます。」





「いや。これは俺の為でもある。」






 シャーロットがどういう意味か問いかけようとしたが、その前にハリーに横抱きされ、抱きかかえられたままハリーはソファに座った。




「ハ、ハリー様!」




「あまり大きな声を出すと、外へ聞こえてしまうよ。」



 ドアは閉められているが、廊下には人の気配がする。シャーロットは慌てて自身の手で口を塞いだ。そんなシャーロットをハリーは愛おしそうに見つめる。




「驚かせてすまない。だが、しばらくシャーロットに触れていなかっただろう。」




 最後に触れられたのは、あの気持ちを確かめ合った馬車の中だ。あれから一ヶ月ほど経っている。




「俺の家でも、公爵家でも短時間しか会えず、シャーロットに触れられなくて辛かった。」




「ハリー、さま。」




 少しだけ、触れさせて、と耳元で囁かれると、シャーロットは頭が蕩けそうになり、上手く判断できずにこくり、と小さく頷いてしまう。


 きつく抱き締められ、額に、頬に、頭に、口づけられる。顎に手を添えられ、「シャーロット。」と熱を持った目で見つめられたかと思うと、唇に深く口づけられ、シャーロットは何も考えられずにハリーの愛に溺れていく。二人の甘ったるい時間は観劇が始まっても、暫く続いていた。

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