第38話 準備万端
凪の描いた絵から出てきた二匹の龍を手にいれ、凪の守りは充実した。敵の本拠地に乗り込む準備は整いつつある。
今は金曜日の放課後なので、いよいよ作戦の決行は明日だ。
部活を終えた僕は、敵の本部へと乗り込む準備の為、校門の前で待っていてくれた凪とヒメウツギとヒメウツギの上に乗るリリィと合流して源相さんのところへと向かった。源相さんは市内のとある寺に滞在していて、僕に曹洞宗式の術式や日本の歴史について教えてくれている。教わった術式を決め技にするには威力がまだ足りないが、九尾の狐の力と合わせれば攻撃のバリエーションが格段に増えるので、怪異の調服は格段にやりやすくなったと思う。
加えて、源相さんは九尾の狐を封印した源翁心昭の教えを引き継いでおり、曹洞宗の術式に拘らずあらゆる宗派の術式を取り入れることで、様々な状況に対応できる訓練もしてくれている。おかげで修験の使う術式や浄土宗の術式なども少しずつ使えるようになってきた。
中学最後の大会の間近で剣道部の練習が長引いたこともあり、すでに太陽が落ちかかっている。源相さんのいる寺は、運よく学校からそれほど遠くない。かなり早歩きをしていることもあり、寺には間も無く着く。
「ねえ、凪」
沈みゆく太陽の赤い光と街灯の青い光が当たって、いつになく幻想的に見える凪に呼びかける。
「ん?なに?」
びっくりするほど可愛く見えるので、凪をあまりじっくりと見ないようにして聞く。
「あの龍さんたち言うこと聞きそう?」
「うん。なんだかんだで連携技まで考えてくれているよ。仲良くなって欲しいと思って描いたのが良かったんだよ。式神たちも気合いが入っているし私の準備は万端だよ」
凪はいつになく気合を入れた顔の前に、ギュッと握った拳を二つ並べた。
その左手の人差し指にはリングが光っている。このリングの中には切り札になるかもしれない龍が番いで入っている。龍吉と龍子と名付けられた二匹の龍は、凪の描いた絵から生まれた龍だ。凪もこの番の龍が、装具なのか式神なのかよく分かっていない。
想具と言えば、僕は重要な想具を鞄に入れて持ってきている。今日は、それのお披露目をする日でもある。
寺の勝手口でインターホンを押すと、中から源相さんが出てきて部屋へと案内してくれた。
歩く度にきいきいと鳴る、年季の入った木張りの廊下を進むと、灯りの漏れている部屋が見えた。
「では、どうぞ」
僕と凪とヒメウツギとリリィは部屋に入った。お香が炊かれているので、ある種の魔除けの結界を張っているのだろう。
部屋は六畳ほどの小さな畳の敷いていある和室だが、物がほとんど何もないので、僕の勉強の時には多くの資料が広げられる。部屋の中央のちゃぶ台には、すでに古文書や巻物が置かれていた。
源相は僕が座るなり講義を始めた。時間もないのでありがたい。
「では、最後のおさらいです。術式の基礎は大方やりました。応用は基礎の積み重ねの上にあります。ですからここまでの基礎を確実に実践できるようになってください」
「はい。わかりました」
僕は時間のない中で覚えた、梵字の発音と意味、真言や呪文を頭の中で繰り返した。本当に発動してしまうとまずいので口にはできないが、脳内に再生される言霊の感覚では、かなりいい感じに呪術が発動すると感じる。
源相は、しんとした部屋の中で雄二をじっと見た。雄二は手で手印を作りながら頭の中で術式を確認している。
目を瞑った雄二の顔は若干緊張気味ではある。まあ明日が本番となればそれは仕方のないことだと源相は思う。しかし、それでも雄二の頭の中では、教えた術式を迷いなく確認できているように見える。
受験もあるというのに、膨大な術式、真言、歴史をこれだけ早く正確に覚えられるのは、やはり才能だろう。勉強ができるというのは、持って生まれた才能だ。そして、勉強や暗記は向いている人間と向いていない人間がはっきりとしている。雄二は向いている人間なのだ。
そんな事を考えていると、源相には雄二の前の空間がぼやけたように見えた。
瞬間、手印を作って術式を構築し、源相はその空間に目を凝らした。
やはり雄二の胸の辺りが陽炎のように少し歪んでいる。ただ、これは敵の放った術式ではないようだった。何故なら、そこに雄二の気を感じるからだ。源相は手印を解いて陽炎を見た。その陽炎は雄二の気の循環そのもののようだ。空間に歪みをもたらす気を凝縮できる人間など見たことがないが、九尾の狐の力を要するこの少年はそれができるようだ。最早人類なのか疑うレベルだが、そんな人間でないとこの後始まる怪異との戦いを勝ち抜く事はできないとも思う。
やはり、彼は『獣狩り』以来の人類の切り札なのだ。
もちろん、九尾の狐に力を貰っている以上、完全に安全な人間なのかは微妙なところではある。当時の安倍有重が残した『獣狩り』の研究結果がどのようなものなのかは気になるが、今はそれを研究している時間がない。もし『犬』の件が片付いたらそっちも本格的に調べてみたいと源相は思った。
雄二の前に循環する気が少しずつ大きくなっていく。
この部屋の中には、それが気になって仕方ない人物がもう一人いた。凪だ。やめれば良いのに、凪はどうしてもその気を触りたくなってしまったのだ。雄二の気がどれだけのものか知りたいし、人間の気が空間上にどのように循環しているのかを実際に知りたくなったのだ。
ちょっとだけなら良いよねと、凪はそっと雄二の前に溜まった気の中に人差し指を入れてみた。
瞬間、目を開けていられないほど眩しい青白い閃光が迸り、何かが焦げたような匂いが部屋の中に広がった。
「フギャー!!」
断末魔の叫びと共に、凪が畳の上に転がった。凪の全身から黒い煙が上がっていて、口からも黒い煙が上がっている。
その様子を見たヒメウツギは、「全く明日に迫った作戦前に仲間にやられるとは…仕方ない。安らかに成仏してくれ」と合掌したが、凪はすぐさま起き上がると、「まだ、死んでないわよ!!」と喉の奥に残っていた黒い煙を吐き出しながら抗議した。
何やら騒がしいので、雄二は術式の練習を一旦やめて目を開けた。すると真っ黒焦げになった凪が倒れているではないか。僕は慌てて凪に近づいた。
「うわ!凪大丈夫?」
「もひろんだいじょうふよ」
凪は親指を上げて大丈夫と言うが、全然大丈夫な感じはしない。まだ口から黒い煙が出ていて痛々しいが、命に別状はなさそうだ。一体何があったのだろう。
「何があったの?」
「ゲフッ!!雄二くんが作った気の渦に指を突っ込んだらこんなことに…う…ゲフッ」
これは僕が悪いのか?そして気の渦って何のことだろう?
「もう危ないことしないでよ」
「うん。もうしない」
服を嗅がし、煤の付いた顔でそう言われても信用できたものではないが、凪だから今後も同じような事を絶対にするはずだ。気をつけなければならない。それはそれとして、凪は物理的に存在しない存在なのに、何故、現世の人間のように気で焼けるのかが不思議だ。
リリィは冷めた目でこの様子を見ていた。しかし心の内では、雄二の気の渦に自分も指を入れなくて良かったと心の中でホッとしていた。あの気の中に指を入れてみたくなるのは誰しも共通のようだ。
ちょっと尻切れとんぼだったけどルーティンも終わったので、僕はみんなと本番の話しに移ることにした。
まずは源相と向き合い、一礼した。源相も合わせて一礼する。
「頭の中の模擬では術式がきちんとできています。実際にどうなるのかはやってみないと分かりませんが、基礎的な術式は発動すると思いますがどうでしょう?」
「うん。雄二くんの様子を見ていれば分かるよ。焦らなければ必ず術式は作動するはずです。そして、この調子なら間違いなく大きな怪異でも術式を使って戦えるよ」
「本当ですか?」
「ええ。もちろんです」
源相は励ましを言っているのではない。まして嘘をついている訳でもない。雄二の術式の凄さに確信を持ったのだ。
今から大凡七百年前に九尾の狐を封印した源翁心昭は、実際に怪異との戦闘で使った術式の数々を一冊の本に認めた。源翁没後も、彼の一族は九尾の狐との戦いに備えて、その本と術式を連綿と引き継いできた。そして、歴代に倣って、源相も源翁心昭の残した術式の修行をし、実際にそれを使って怪異と戦ったこともある。その経験から、自分の発現できる術式がそれなりだという自信がある。しかし、その自分の術式と比べて、目の前の少年の使う術式は桁違いなのだ。教え始めの頃、雄二に簡単な術式を使ってもらったのだが、あまりの威力の大きさに危うく部屋が吹っ飛ぶところだった。源相自身は中程度の怪異とは充分に戦える実力があると思っている。となれば、この雄二少年の術式で、上位クラスの怪異とがっぷり四つとまではいかなくても充分にやり合えるのは間違いない。
これが人類にとって良いことなのかは、きっと最後まで答えは出ないだろう。
「では、今回の作戦の話しをしましょうか」
時間もないので、源相はみんなを見ながら切り出した。
「はい。お願いします」
ヒメウツギとリリィと凪も雄二の横に並んで、この話しに加わった。
「まずは、源相さんの作戦通りに、凪が僕のスマホを通じて敵の本拠地に向かいます。そして、そのスマホが置かれている場所に僕の創った想具を置いてきます。凪がそこがどこなのかを突き止めて僕たちに伝えられれば更に良いですが、まずは想具を置いてくれれば大まかな場所はわかります。その情報を元に僕たちはそこに行って、リリィの身体を解放と魂の解放をします」
「ふむ。概ねそれでいいいとは思う。しかし、私の魂は本当にそこにあるのか?」とリリィは身を乗り出して源相に聞いた。
「はい。おそらくリリィさんの魂は『犬』が管理した状態でそこにあると思います。身体もそこにあるとは思いますが、まずは魂の解放を優先しましょう」
リリィはすぐさま返事をしなかった。
僕にはリリィがこのチャンスをものにしたいという感情を必死にコントロールしているように見えた。少ししてから、リリィは絞り出すように声を出した。
「そこに魂と身体がある確証が欲しい。実際に行ってみたら身体はあったけど魂がない、または逆の場合も考えられる。そうして結局はうまくいかなかったという展開を考えたくない。———その…私としてはこれからみんなと一緒に戦いたいのだ。だから…」
いつもながら気持ちをうまく言えない…リリィは唇を噛んだ。
しかし、この不器用なリリィの気持ちは皆に伝わった。それを汲んで僕はリリィに話しかけた。
「大丈夫だよ。リリィはこれから東京———引いては日本を守る戦いがある。だから、僕たちを信じてよ。僕たちだって明治天皇の魂を怨霊化させたくないし、リリィと一緒に戦いたいんだよ」
「…分かった」
消え入りそうな声で、リリィは一旦口を止めた。
リリィの言うように確認できることは何度確認してもいい。それが作戦の強度を増す。
「源相さん。リリィが心配するのも分かります。もし、リリィの魂と身体が同じ場所になければどうすれば良いでしょうか?」
源相は難しい顔をして下を向いたが、すぐに顔を上げた。
「確かに対策は立てておいた方が良いでしょう。そうした事が発生する場合が一つだけあります」
皆の目が源相に注がれる。一体どんな場合にそれが発生するというのだろうか?
「リリィさんの身体は、明治天皇の怨霊を封印するための器です。ですから彼らがその大事な身体を毀損することはありません。しかし、彼らがいよいよ明治神宮へと乗り込む段階になれば、その器たるリリィさんの身体を明治神宮の近くに持っていく可能性はあります。そうなると、『犬』のいる場所に魂があり、身体は明治神宮の近くにあるという事態になるかもしれません。しかし、私はそれはないと思っています」
「それは何故?」
リリィは更に前傾姿勢になって源相に聞く。
「はい。それは肉体と魂を必要以上に遠くに離すのは、余りにリスクが高いからです。確かに魂を失った身体が生き続ける可能性はあります。今のリリィさんがその状態です。しかし、それは『犬』がリリィさんの魂と身体を適切に管理しているから大丈夫なだけで、個人差もありますが、魂を失った瞬間に肉体が限界を迎えることもあるはずです。そう考えれば、リリィさんの魂と身体を長時間離すという選択肢は取りにくいですし、やらないと思います」
「じゃあ、いつどうやって明治天皇の怨霊を封印するんだ?」
リリィの疑問は最もだ。確かにそれではいつまで経っても身体を動かせない。
「はい。リリィさんの話を聞いて私は一つの仮説を立てました。明治天皇の怨霊は明治神宮を飛び出した後、真っ先に国会に向かったといいます。となれば、東京に怨霊が放たれれば、まずは東京に張り巡らされた結界という結界を破壊し、怨霊は確実に国会議事堂を破壊しに行きます。もうその時点で東京は火の海ですので、敵の組織の思惑の半分は達成されています。あとはそこで怨霊を待ち伏せし、リリィさんの身体を使って封印すればその組織の悲願が達成されます。その時は万全を期すために魂は身体に戻されるかもしれません」
だとすれば、今『犬』が動けないのは組織にとって頭の痛い問題になっている気がする。『犬』の状態次第ではリリィの魂を元に戻して神宮へと連れて行きそうな気もする。魂の特性が分かればもう少しマシな分析ができるが、今は憶測の域を出ないのが厳しい。
「そんな状態で元に戻されても遅い。私は奴らが明治神宮を襲撃する前に元に戻りたい」
「そうですね…明日の作戦がうまくいけば良いのですが…涼海さん、なるべく細かく敵情視察お願いします。そこから何らかの道が開けるかもしれません」
「うん!!分かった!!」
凪は元気よく返事をした。このノンプレッシャーなところがいい。結局のところ心臓に毛の生えているような人間でないとこういうのは上手くいかない。
凪は式神と番の龍を出し、学校の先生のように何かの講義を始めた。普段は式神にどうでもいい話を聞かせているが、流石に戦いの話をしているようだ。僕も源相さんと確認事項を話し合うことしにした。
「源相さん。僕たちの移動の方法はどうするのですか?」
「ええ、そうですね。まずは移動の手段は車です。私が車を運転します。涼海さんが敵のアジトに忍び込む前に東京の近くに待機して、なるべく早くそこへ行きます。それで、例の想具はできたのですよね?」
「はい。シンプルに引き合う仕様で、凪の方の欠片は隠しやすいようにカード型にしてあります。僕の持つ欠片は雫型で、凪のカード型に引かれる仕様です。念じればラピュタの飛行石のように光を出してカード型の置かれている方向を指し示すようにもしています」
僕は原相に雫型の欠片を見せた。
「それは助かります。方向を見失ってもそれを参考にできますね」と源相は腕を組んで頷いた。
欠片の形を見て飛行石を連想したらしいヒメウツギは、僕の肩の上で「雄二どの。機械兵は動き出さないのですか?」と聞いてきた。やはりラピュタの機械兵が気になったようだ。
「大丈夫。機械兵が暴れることはないよ」
「そうですか」
ヒメウツギは安堵の息を漏らした。アニメの影響は計り知れない。
「因みに、それはどれくらいの距離まで使えるのですか?」と源相が聞いてきた。
「先日、父が仕事で東京に行ったので、カバンにカード型を仕込んで調べたら、笠間からでも東京のカード型に反応していました。関東圏くらいなら全然いけると思います」
「それは安心です。どのくらい離れているかは分かるのですか?」
「この雫型の欠片は距離で色が変わる仕様にしています。ここから東京は大体120kmほど離れています。カード型との距離が100km以上離れていると黒色になるようにしています。次に50kmになると灰色になります。40kmで紫、30kmyで緑、20kmで黄色、10㎞で赤、5kmでオレンジ、1kmで白、100m以内に入るとこのようにシルバーになります」
「す、すごいですね」
流石の源相もこの仕様に驚いたようだ。考えに考えて創ったのだ。人を驚かせる仕様にしたくなるのは当然だ。企業の開発の人間はこんな感じで物を作っているのだと思う。開発班の思いつきにダメ出しをする企業は確実に伸び悩むと思う。
さて、想具のテストをしておこう。
「源相さん。この寺のどこかにこれを仕掛けてください」
「ええ。分かりました」
源相はカード型の想具を持って部屋を出ていった。
しばらくすると戻ってきて「では、探してみてください」と言った。
「うふふぅ。宝探しだー!!」
いつの間にか式神と龍をしまった凪が僕の後をついてきた。リリィを背中に乗せたヒメウツギも続く。
まずは光を出してみる。黄色く細い光が右の壁に照射された。どうやらこの壁の向こうが怪しいようだ。おおっ!!と後ろから声が聞こえた。「光を失っていない」と凪が言う。いや、光は今出したんですけど…とは面倒だから言わない。雫型の想具もそっちに引かれているので、僕は廊下をそちら方向に進んだ。
ぎいぎいと鳴る廊下を二、三回曲がると襖の部屋が見えてきた。雫型の欠片はこの部屋に引かれている。念の為もう一度光を照射してみる。やはり細い光はこの部屋へ照射された。
「この部屋に入っても大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です」
源相に許可をもらったので、僕は襖を開けた。電気のついていない部屋の中は暗かったが、目を凝らすとどうやら客間のようだ。壁のスイッチを押して電気をつける。畳張りの部屋で、奥に掛け軸が飾ってある。雫型の欠片の引きが強くなった。いよいよ近くなったら本物の磁石のように引力が強くなるようにしているので、カード型はもう目の前ということになる。光を出すと、部屋の上に取り付けてある長押(なげし)へと光が伸びた。僕は光が伸びた先の長押の隙間に手を突っ込んだ。すると、その狭い隙間にカード型の欠片が入っていた。
「お見事!!」
源相が思わず拍手をした。
「ありがとうございます」
僕が頭を下げると、「すっごーい!!これで宝探しゲームができるよ!!」と凪がはしゃぎだした。いや、あなたがこれを置きに行くのですよと言いたい。
「ふむ。この精度なら敵のアジトの割り出しもできそうですな」とヒメウツギも納得顔だ。
チラッとリリィを見ると、自分に何かを言い聞かせるように何度も頷いている。直に作戦の可能性を感じてくれたようだ。
「では、元の部屋に戻りましょう」
僕たちは、源相の部屋へと戻った。
「これで、雄二くんの創った想具の有用性が証明されました。明日は朝一番で東京方面に出発しますが、まずは涼海さんに敵の陣地へと行っていただきます。我々は友部のスマートインターからそこへと行きやすい方向を選択して高速に乗ります。幸い友部は東にも西にも行きやすい場所ですので、時間のロスも最小限に抑えられると思います」
源相はそう言いながら、今はあまりみなくなった地図帳を出して友部サービスエリアの場所を見せてくれた。確かに友部は埼玉方向へと東西に伸びる北関東自動車道上にあるので、移動はしやすいように見える。
「これは時間との勝負です。涼海さんも危険を感じたら想具を発見しにくい場所に置いてすぐに戻ってきてください。良いですね?」
「はーい!!」と凪は元気よく返事をした。
打ち合わせを終え、僕らは家へと戻った。
受験勉強などやっている場合ではないが、成績を落とさない為にこれもやらないといけない。パンを齧りながら今日の復習をする。それを終えると、最後の練習とばかりに術式の練習をした。
全部を終え、目覚ましをセットして寝ようとすると、先にベッドに寝転がっていた凪が「明日は頑っ張ろうね」と言ってきた。
「うん。リリィのためにも僕たちのためにも頑張ろう」
「うふふぅ。私たちの未来は明るいわ」
と言うとすぐに凪は寝息をたてた。まあ、未来がなければ様々な関係は消失してしまう。僕も明日に備えよう。
電気を消して目を瞑ると、やがて心地よい眠りが訪れた。
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