第28話 リリィの覚悟

 僕は『犬』と表示されたスマホの画面を見て固まってしまった。


 何をどうして良いのか本当に分からなくなり、動きを止めることしかできない。そして、これが電話なのかメールなのかSNSなのかも判然としない。画面に『犬』と表示されているだけなのだ。


 僕が画面を見たまま脂汗を流していると、様子が変だと気づいた涼海さんが話しかけてきた。

「ちょっと、雄二くんどうしたの?そんなに怖い顔でスマホの画面見て」

 僕は、ハッとして鈴海さんを見た。

「もぅ、何よそんなに見つめて…ちょっと嬉しいよぅ」と涼海さんは、はにかんで両手で顔を覆った。

「ち、ちょっと、これを見て」

 僕はスマホの画面を涼海さんに見せた。

「え?これって、まさか…」

 涼海さんの顔も一気に青ざめた。

 僕ら二人の反応を見たにも関わらずヒメウツギは冷静だった。これは流石と言わざるをえない。

「雄二さま、涼海殿、その機械から妙な気を感じます。まずはそれを置いて自分を守ってください」

 僕と涼海さんはお互いの顔を見て頷いた。

 僕は想具を身に纏い、スマホを机に置くと同時に気の防御壁でスマホを囲った。涼海さんも祓いの術式を身に纏って邪から身を保護すると、僕の横へと移動してきた。

「こ、これは何なの?」

 机の上から弱々しい声が聞こえた。見ればリリィがお手玉の上で頭を抱えて倒れている。


 しまった。スマホを机に置かなければよかった…


 直感的にこれはまずいとし際思い、雄二は両手でリリィを包み込んでスマホから離した。

 手の中で、リリィは咳き込みながらもんどりうった。僕は慌てて陽の気をリリィに送り込む。リリィの身体に入った邪を祓わなければならない。しばらく気を送り込んでいると、リリィの身体から黒い煙のようなものが出てきた。邪の気なのか、何かの術式なのかは分からないが、リリィにとって良くないものが身体の中にいたのは確かだ。

「リリィ!大丈夫?」


 全くもって大丈夫じゃないという目を僕に向けたが、咳も少なくなり、黒い煙が抜けた事で少しだけ楽になったように見える。


 間、髪をいれずに「雄二さま!!その黒い煙のようなものを早く封印してください!!」とヒメウツギが叫んだ。

 顔を上げると、リリィから出てきた黒い煙は未だ消えることなく僕の周辺を漂っている。自然に消えない煙は、煙というよりも怪異と言った方がしっくりくる。 

 怪異であれば、こちらも体勢を整えなければならない。僕は、丁寧にリリィを胸ポケットに入れて煙から数歩下がった。

「う”ゲホッ…あいつ、許さない…」

 リリィは胸を押さえて咳をしながら黒い煙を睨みつけた。どうやら持ち直したようだ。


 そんな僕たちを嘲笑うかのように、黒い煙はゆらゆらと漂っている。


 何をしてくるのかいまいち予想できないので、まずは黒い煙を観察することにした。もちろん、気と術式はいつでも放てる。

 煙は黒い点の集合体のようにも見えるが、特に変わったところはない。いや、煙が消えない時点でおかしいのだが、動物的な意志のようなものは感じない。ただ、ヒメウツギの言う通り、邪気のような何かを僅かながら感じる。

 今の結論としては、ヒメウツギの言うように封印した方がいいだろう。しかし、僕は封印の仕方が分からない。であれば、まずは気の壁で閉じ込めて安全を確保してから、涼海さんにその方法を聞くのが良い。


 やることが決まれば、あとは実行するのみだ。


 僕は尻尾の力で気を増幅させ、敵を気の壁で四方八方囲った。あっという間に黒い煙を覆う気の箱ができた。

 よし。うまく四方を囲えた。

 と思った数秒後、気の壁の中に閉じ込められた黒い煙が、突然意志を持ったかのように揺れ動いた。気の壁を更に厚くすべきかどうかと迷ったコンマ一秒で、黒い煙は、気の壁の中で渦巻きながら集合し、真っ黒な蛇のような長細い形態になった。その先端は鋭利なサーベルのように尖っており、キラッと光る外観は、真っ黒な金属のように見える。


 あれに刺されたら絶対に痛いなどと思っていた僕は、ここでハッとした。あいつを気の箱から出したら痛い所ではない。


 黒い煙は、すでに黒蛇のような動きで気の箱の中を蠢いている。僕が気の壁を厚くしようと気を練った瞬間、最悪なこと起こった。

 蛇のような見た目になった黒い煙が、尖った先端を壁に向けて突進したのだ。

 

 ザクッという音が部屋に響いた。

 

 今聞こえた音は、間違いなく黒い煙の先端が気の壁に突き刺さった音だ。

 黒蛇のような煙は、壁に突き刺さった先端を素早く壁から抜くと、蛇のように後ずさって少し距離をとると、また壁に突進した。それを恐ろしい速さで連続で繰り出すと、とうとう尖ったの先端が気の壁に深く突き刺さった。


 まずい…これ以上は穴を大きくさせられない!!


 僕はたった今練り上げたありったけの気を、壁に向かって一気に放出した。気が壁にコーティングされ、削られた気の壁が若干厚くなった。しかし、敵はまるでその対策をしてきたかのようなことをする。腹立つことに、黒い煙は壁に突き刺さした先端から何かの粘液ようなものを放出し始めたのだ。大量の黒い粘液が、僕の気を弾きながら気の壁全体に広がっていく。

 部屋の中に、じゅうぅぅぅと酸で溶けるような嫌な音が響いた。

「うわ。何するんだこいつ」

 などと言ったそばから、壁が粘液で勢いよく溶けていく。

「まずい。塞がないと!!」

 僕は歯を食いしばって気を練ると、もう一度壁に気を流し込んだ。壁は一時的に厚くなったが、粘液はその上を行った。壁は沸騰した水のように気泡をたくさん作り、酸で溶解したような穴が増殖していった。ホラー映画のようで正直、気持ち悪くて見ていられない。


 もっと強い気を送らないと。


 心の中で気合を入れて、僕は見ているだけで気持ち悪い粘液を止めにかかった。

 僕は尻尾の力を信じて手の先に気を集中させた。身体中を駆け回った気が、僕の手先に集まってくる。この気を限界まで練って九尾の狐の尻尾の力を借りて放てば、壁の修復と敵の滅殺の両方をできるはずだ。手先に溜まりつつある気を放出するタイミングを測る。完全に壁を破られる直前に、こいつを放って奴を消し去らなければならない。

 そんな中、粘液の気色悪さに耐えられなくなった涼海さんが、髪をぐしゃぐしゃにしながら金切り声で叫んだ。

「ぎゃー!!気持ち悪い!!何よこいつ!!」

 それでも、さすがは陰陽術のスペシャリスト。叫びながらも粘液の気持ち悪さに完全には屈っせず、一瞬で精神をコントロールしきった。 急に真面目な顔になった涼海さんが手印を作り、何かの真言を呟くと術式が発動した。

 半分溶けかけた壁の周りに四本の光の柱が立ったのだ。光の柱は黒い煙の黒さを薄めていく。煙の黒が薄まるたび、薄い光が少しだけ明るくなる。みるみる黒い煙の動きが緩慢になった。壁を突く動きも少なくなり、尖った先端が壁からを外れると、黒い煙は完全に動きを止めた。もう粘液も分泌していない。

 黒い煙は、気の箱の中で、冬眠に入った蛇のように静かになった。今は黒というよりも灰色に近い状態で動きを止めている。


 それにしても。とんでもない術式だった。


 源相さんに術式の事を習ったから分かるが、あれをあの速さで創り上げられるのは、まさに神業と言っていい。僕が畏敬の眼差しで涼海さんを見ると、彼女はまだ光の柱を安定させようと手印を切っていた。あと数秒遅れていたら、奴にこの壁を間違いなく突破されていた。涼海さんの精神力に乾杯だ。


 その涼海さんの動きが止まった。どうやら光の柱が安定したようだ。


「ふふふぅ。この結界は結構硬いよ」

 勝ち誇った顔でニヤッと笑った涼海さんは、ビシッという擬音が付きそうな勢いで、黒い煙に向かって人差し指を突き出した。

 何だかアニメのヒロインのようでかっこいい。

 性格はちょっとあれだが、涼海さんの陰陽術の技術には舌を巻くしかない。本人は何でもないという涼しい顔をしているので、きっと術式の天才なのだろう。僕は彼女の過去を何も知らないが、これだけの事ができるからには文献にも載る有名な人だったのかもしれない。 

「もの凄い術式だったね。鳥肌が立ったよ」

「うふふ。もっと褒めて」

「涼海さんのおかげで助かったよ。怪異と戦うため、今度、術式を教えてね」

「もちろんよ!!手取り足取りあんな事やこんな事も教えるよ!!」

 世程嬉しかったのか、涼海さんはくるくる回り始めた。僕はチラッと光の柱へと目線を移した。薄く明滅を繰り返す光の柱からは、どういう訳か安心するような何かを感じる。神聖な息吹とでも言えば良いだろうか。

 僕がそう感じていることに気づいた涼海さんは、ふふふ。と笑いながら「私そっくりの神聖で純粋な結界からは、絶対に逃れられないわ!!」と黒い煙に言い放った。台詞に若干引っかかる部分はあるものの、実際に邪のものにはかなり効きそうではある。


 さて、これで削られてしまった気の壁の修復に入れる。


 雄二は粘液でで溶かされた壁に、手先に溜めた気を送り込んだ。

 尻尾の力を含んだ気が、気の壁を少しずつ直していく。修復していて驚くのは、粘液がかかった大部分に丸い穴が空いていた事だ。僕の作った気の壁にこれだけの事ができるこの煙は、どんな怪異なのだろうか?

 気の壁の空いた穴を気で埋めること十数分。やっとこさ気の壁を修復し終わった頃、涼海さんも光の結界の補強を完了していた。

「どう?ヒメウツギ」

 ヒメウツギは、修復したばかりの気の壁の周りをゆっくりと回りながら観察し、その完成度を確認すると、静かに頷いた。

「雄二さま。この頑丈さであれば問題ありません。光の柱も十二分に機能しております」

「よかった」

 僕ももう一度この気の壁を見る。壁に穴は見られないし、黒い煙にも動きはない。

 ただ、この結界を部屋のど真ん中に作ってしまった事だけは、いただけなかったと思う。こんな物が部屋の中央にあれば、生活上不便極まりないのは明白だ。リリィの魂を固定した時の五芒星もそうだったが、何故かこの部屋の中央は術式の展開場になってしまう。

 なんとかならないかと思い、「涼海さん、この結界は動かせるの?」と涼海さんに聞いてみた。

 涼海さんは、ドヤ顔を崩さずに「凪って呼んで」と、わざとらしく髪をかき上げた。ここは要望に応えた方がいいだろう。

「えーと…凪さん。この結界は動かせますか?」


 口をタコのようにしてジトっとした目で僕を見た涼海さんだが、とりあえず『凪さん』で手を打ってくれたようだ。


「仏式の護摩の正式な儀式で魔を調伏すれば動かせるよ。陰陽術でも選ぶ真言によってはいけるかな。うーん。でも、こいつ何だかヤバそうな感じがするのよねえ」

「ここから動かしたらまずいの?」

「ううん。動かす以前の問題ね。ねえ、ヒメちゃん。こいつ怪異じゃなくて呪いか怨霊っぽくない?」

「だから、ヒメちゃんはやめろと何度言わせる」と言ってヒメウツギは涼海さんを一睨みしたが、すぐに「確かにそんな感じはする。そうなると…まずはリリィ殿を安全なところに移さなければ」と続けた。


 ヒメちゃん呼びを否定されたのに、涼海さんの顔は全く意に介していないようだ。今後もめげずにヒメちゃんと呼ぶに違いない。


「そうだよね。やっぱり移した方がいいかあ。でも、リリィを私たちから遠ざけるのは却って危険じゃない?」

 涼海さんは、胸ポケットの中のリリィを心配そうに見た。その顔が本当に心配そうだったので、僕は「え?何かまずいことあるの?」と二人に聞いた。

 すると、ヒメウツギがその理由を教えてくれた。

「雄二さま。此奴は恐らくは呪いです。この呪いは雄二さまのスマホを通じて送られてきました。しかも送り主は『犬』。『犬』はリリィ殿の魂の一部がここにいることをどうやってか突き止めたのです。この呪いを消滅させない限り、呪いはリリィ殿を滅するまで付き纏います。しかも、この手の呪いは禁呪に近しいもので、それを『犬』が作り上げたとあらば、その強力さは言うまでもありません。しかもです、遠く離れた地にいるリリィ殿の魂の欠片に、IPを通じて呪いを送ってくるなど、最早『犬』の戦略に古来からの常識は通じませぬ」


 ため息まじりに語ったヒメウツギの話しが本当だとすると、この『犬』は呪いを、IPを通じて悪意のホーミングミサイルのように扱えるということだ。『犬』は、新時代の怪異と言えばしっくりくる怪異なのかもしれない。


「ふー。呪いの危険性はなんとなく分かったよ。それにしても、どうしてリリィがここにいるのががバレたんだろ?」

 僕の当然の疑問に、ヒメウツギは流石の回答をした。

「恐らく『犬』は魂の総量が足りないことに気づいたのです。リリィ殿の魂は、敵の手元に大部分があり、私たちの元には少量しかない状態です。中学校で使われたリリィ殿の魂は、我々に敗れた時はこの呪いを送り込んだものと同じルートで『犬』の元へと戻るはずだったのでしょう。しかし、いつまで経っても魂は戻ってこない。そこで、『犬』も、こちらにまだ魂がいると気づいたのです。雄二さまの攻撃で消え去っている可能性もありますが、リリィ殿の情報は私達にとっては有益。その情報を渡さないためにこの呪いを送りこみ、もし健在ならリリィ殿を呪いで取り込んで消し去ろうと考えたのでしょう」


 ポケットの中のリリィが震えたように感じる。


 『犬』にこんな形で呪いを送られれば怖いのは当たり前だ。自分の魂も肉体もどうなるか分からない。身体と魂を敵に取られているリリィのことを思うと心苦しくなる。

「ここまでできる『犬』って科学者か何かなの?」と僕は誰にともなく聞いてみる。

「まあ、その素地はあると思います。先ほど『犬』は人間と同じ術式を使うと申しました。当時の陰陽寮は、歴や時の管理、卜占が主だった仕事でしたが、今で言う科学者のような立場でもありました。最先端の考えを操っていた部署と考えて貰えばいいと思います。そのような人間が使う術式を使うとなれば、怪異とて自ずと人間の作った物に興味を持ち、それを使うことを思いつくかもしれません」

「なるほど…」


 現代のテクノロジーまで使って古来からの術式を使ってくる敵か…本当にこんな敵の裏をかいて攻めに転じられるのだろうか?


「よーく分かった」

 突然、リリィが皆に聞こえるように言った。皆の目線がリリィへと注がれる。


 胸ポケットに入っていたリリィが、ここから出してと言うので、僕は両手で包んで机の上に乗せた。リリィはようやく広い場所に立てたとばかりに大きく伸びて背骨を何度か鳴らした。胸を突き出してピンと背筋を伸ばすと、大きく息を吸いながらリリィはゆっくりと僕らをじっと見た。

 そして、ゆっくりと丁寧に話し始める。

「私はね、自分が拘束された時、最悪もうどうなってもいいと思っていた。でも、ここにいて少し考えが変わった。普段は友達もいないし、誰にも優しくしてもらえない生活だったけど、それもここで変わった。みんなと話して会話が楽しいと思えるようになった。だから、みんなを巻き込みたくない一心で何も話さずにいた。本当は戦略上私の状況を知りたかったと思う。でも、みんなはそれに文句も言わなかった。そして、こうしてまた助けてくれた。私はそれに応えたい」

 リリィの声には、強い意志が感じられた。

「でも、また悪さしそうなこいつをどうにかする方が先」

 リリィは僕の後ろを指差した。

 そこにはあの呪いがいる。素早く後ろを見ると、おとなしくなったと思った呪いが再び形態を変えようと蠢いていた。強化された結界の中で動くなど、とんでもない呪いだ。

「涼海さん。これ、どうすればいいの?」

「凪って呼んで」

「凪さん、どうすればいいの?」

「………」


 涼海さんは顔を明後日の方に向け、口を尖らせた。


 しょうがないなあ…

「凪、どうすればいい?」

 すると、涼海さんは自分を手で抱き締めながら「ああ、名前呼ばれるの最高。高まるぅ」などと言って自分を抱きしめながら一回転すると、僕を見つめた。

「あの、どうすれば…」

 体を震わせながらニコッと笑った涼海さんは、若干興奮しながら「————ええとねえ、もう最大限の力でドカーンとやっちゃえばいいよ!!」と言い放った。

 それはいいが、本当に呪いはドカーンとやって消えるものなのだろうか?

 僕の懸念を素早く察したヒメウツギが「まずは、弱らせ、その後に然るべき処置をするのです」と言ってくれた。

「なるほど。ようし!!みんなんでこいつを弱らせよう!!」

「うふふ。任せて」

 涼海さんは右腕をグルグル回しながらお札を取り出した。霊の持つお札が、実際に存在するものなのか気になるが、想具の一種であれば存在すると言えるのかもしれない。

 僕も尻尾に力を入れて気を溜める。今こそ源相さんに習った術式の出番だ。これが今後の戦いの試金石になるかもしれない。


 呪いの動きが更に活発になってきた。


 活きの良い呪いだと思う。すると、ヒメウツギが最後のアドバイスをくれた。

「雄二さま。呪いは基本的にその呪いをかけた本人を断たなければ消えないと言われています。『犬』がここにいない以上。この呪いを完全に消すのは難しいかと思いますので、ある程度弱らせて封印するのが最良だと言えます」

「ヒメウツギありがとう。だから弱らせるんだね。凪、そうするにいはどうしたらいいの?」

「うん。まずはありったけの術を浴びせて呪いを弱らせる。そしたら、最後に雄二くんが創った想具の箱に呪いを入れて、私のお札で封印する。これが一番手っ取り早いよ」

「分かった」

 僕には凪と呼ばせるのに、自分は雄二くんと言う。そこは今度突っ込むとして、想具の箱か…なるほど、それなら強度も申し分ないだろうし、僕の好きなように創れる。自分の中でその発想が生まれなかったことに腹がたつ。もっと自分の能力やみんなの力を活かせる戦略を思いつけるようにしなくてはならない。

「じゃあ、凪、始めよう!!」

「うん!!一緒に行くよ!!」

 涼海さんは気合の入った顔つきで、手持ちのお札を呪いに向けて睨んだ。闘志剥き出しで、漲る覇気が涼海さんの全身を包んでいる。


「何よ、二人で勝手に盛り上がっちゃって…」

 ちょっと怒った感じのリリィも、手印を作った。神道式の術式がリリィの周りに展開される。ヒメウツギも素早く僕の肩に駆け上がり、全員が定位置についた。


 さあ、全員で呪い退治だ。


 蠢く呪いは気の箱の中でその姿を変えていく。蛇のような形態から今度は四つ足の何かへと変化する。


 何が来ても、絶対に勝つ。僕は心の中でそう呟いた。

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