第3話 ヒノモトステーション
ヒノモトステーション。
首星から遠く離れた辺境宙域に浮かぶこの宙域一帯の中心に位置しており、各宙域と繋ぐ四つのエーテルゲートを持つ。
当初、この辺境宙域を監視し防衛する為に当初は作られたが、周囲の惑星や資源衛星の発見によりその集積地として発展している。
居住可能惑星は無い為、今もなお辺境宙域となっていた。
ステーションを俯瞰すると直径は10キロメートルになり、中央にある球体の部分はセントラルターミナルと呼ばれ、軍の直轄する基地となっており外縁部には様々な施設や住居が存在しているようだ。
自分のいる場所は、外縁部のエリアと呼ばれるところらしい。
天井を見上げると、外の景色を映し出しているらしくエーテルゲートと呼ばれる巨大な装置が見えた。
エーテルゲートは、遠く離れた宙域や惑星間を結びつけている亜空間を移動する為の装置であり輪っかの様な形をしている。
固定してしまうと、その相互間でしか移動出来なくなってしまうがエーテルジャンプする装置を持たない船舶や大量の物資を運ぶ時には非常に優れており事故も滅多な事では起きる事は無い。
一旦、情報欄を閉じた。
服は医者から貰う事が出来た。
ただ、この一着しかないからあまり猶予は無い。
着替えが無いのだ。 だいぶ、詰んでいると思う。
たまたま見つかった医療ポッドがあってそこから救出されているというのは、今考えれば運が良いのか悪いのか。
そこで救助されなければ、今記憶が無い状態でこんなところにいる事もなかったのだ。
そもそも、医療ポッドって何の事だろう。
医療なのだから、病気や怪我で入っていたのだろうが。
うーむ、わからない。
そして、チラッと後ろを見る。 今まさに気になっているのは、斜め後ろを歩いている彼女だ。
今の所、何も話しかけてはこない。 ナース服(こう言ったことはなぜか覚えている)を着ているのだから、医療関係者だと言うことは間違い無いだろう。
色白で、最初は白髪なのかと思っていたがどうも輝いて見えて銀髪と言うやつなのかもしれない。
瞳も少し、銀色の様なちょっと人とは違う様にも感じたが目が大きく、垂れ目だからか怖いとは思わなかった。
背は自分よりは低く、パッと見て小動物の様な印象を受ける。
あと、大きい。 うん、何がとは言わないが大きい。 そんなの二つも下げて大変では無かろうか。
視線に気付いたのか、スッと両手でその部分を隠すのだが全く隠れてません。
医療費を払う為に、踏み逃げしない様に自分が傭兵へと登録するのを見張っている、という事が考えられるのだが。
咳払いをして誤魔化す。彼女と目が合うと視線に気付くとニッコリと笑ってくれるのだが、ちょっと不気味だ。
話しかけようと思ったのだが、なぜか彼女は何も言わずにシーッと言うかのように人差し指を口の前に持ってきて遮るのだ。
早速、
あの医者から転送されてきたサイトにいくと、ヒノモトステーション内部には傭兵斡旋所があるらしい。
1番近いところへと向かえばいいと言われたのだが。
マップでの案内までしてもらえるなんて、
「ここかな?」
思ったよりは小さい。 傭兵斡旋所という看板も見える。
中に入ると、カウンターが一つとテーブルや椅子がいくつかあった。
カウンターにしか人が今はいない様である。
「若いの、どうした? こんなところに何か用か?」
「すみません、ここで傭兵登録が出来ると聞いてきたのですが」
「登録か? 年齢制限を超えていりゃ、
カウンターにある端末を指差してくる。
左手をかざすと、接続するか確認する旨が出てきた。
承諾すると今の自分の名前である【イナト】と年齢【18歳】、現在のランクが【二等宙士】と表示されいた。
所持船舶や機動兵器の有無も出ているが、ここは空欄となっていて登録はヒノモトステーションとなっている。
所属するチームという項目もあるが、ここも空欄だった。
「これで登録は完了だ。
仕事をして、評価をもらう。
評価をされた事で個人のランクも上がる。
ランクが上がればより良い条件の仕事も回す事が出来るという。
信頼されれば、その分紹介依頼や指名依頼といった事も増えるという。
運が良ければ、トライデントと言う企業にスカウトされて専属の実働部隊で活躍する事も出来る可能性もあるらしい。
なんだ、トライデントって。三又の槍の事だったか。また調べないといけない言葉が出てきた。
でも、こう言う知らない事を調べるって少しワクワクする。
「仕事はどうやって受ければいいんですか?」
「なんだ、そんなことも知らんのか? うちよりも田舎から来たのか」
基本的には、此処に直接来る必要は無いらしい。
登録した
仕事を受注してもらえれば
もちろん、依頼主がいて直接会って依頼を話す事もあるがなと教えてくれた。
言われた通り、
【PMCs】 と書かれたアプリがダウンロードされていた。
【Private Military and Security Companies】
【ようこそ、傭兵登録が確認されました】
【あなたは、自分でこの道を選びました】
【この道しか選べなかったかもしれません】
【しかし、あなたは選びました】
【あなたの進む道は困難が待ち構えているかもしれません】
【
そこを開くと現在、最低ランクになる二等宙士が携われる仕事が出てきた。
パッと見ただけでも、自分が直ぐに出来る様な仕事じゃ無いのでなかろうか。
船を自分で持っている、輸送船団を護衛をする、宙域の哨戒任務などもあるのか。
身体一つの仕事と言えばと探すと、輸送船に荷物の警護だったり船内の警備にヒノモトステーション内部での警邏というのもあった。
記憶の無い自分には、やはりどれも難しそうである。
受付を見るが、登録が終わったからかいつの間にか居なくなっていた。
良い仕事の選び方がないかと考えたのだが、そうは行かない。何を聞けば良いのか。手っ取り早く、稼げる仕事? そんなものあれば苦労しないだろう。
【PMCs】のアプリも使いこなせる様にならないといけない。
これは、キャッシュ? なるほど、自分の口座みたいなものがあるのか。 報酬を受け取る時に此処で受け取る事が出来るのか。
斡旋所に人が入ってくる気配に気付かなかった。
「お前さん、もしかしてこないだの」
椅子に座っていると、後ろから声を掛けられた。
自分の事を知っている人なんて、いるわけないはず。
もし知っていると言うなら、自分の事を救出したという傭兵だろうか。
「あ、えっと」
「なんだ、覚えてないか。そりゃそうだわな」
お前、寝てたもんなぁなんて言ってニカっと笑う男がそこには立っていた。
年齢は、二十代くらいだろうか。 無精髭を生やし引き締まった身体と作業服の様な服を着ている。
「あ、ちょっと待ってろ。おやっさん!!こないだの査定どうなった??」
「なんだ!メール送っただろうが!見てないのか??」
「どうせ寄るつもりだったんだ。ついでだよ、ついで」
声を掛けたのは彼だったが、自分の事を置いてカウンターの方へと行ってしまった。
助けてもらったのだし、会ったらせめてお礼を言いいたいなと考えていたところだった。
そのタイミングが今来たのはラッキーだったかもしれない。
もうしばらくは、仕事を探しながら此処で待っていてみよう。
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