才能ないですね
俺は、動けないまま。
どうなったかもわからないまま。
『あーー。そうですか……。どうしたらいいかな?』
シェッフルの声が響くけれど、何も見たり出来ない。
『あのーー。結論を言いますね』
「何?」
『ピザが爆発しました』
「えっ…………?」
『正確にいうとオーブンが壊れました』
「それじゃあ、ピザは?」
『あーー。それですね。出来ませんね』
泡の中だからだろうか?シェッフルが話す声が、モゴモゴと聞こえる。
「あの、それでこれは?」
『それは、専門外ですね。誰かにやってもらわなきゃいけないですよね。こちらを片付ける能力は、お持ちですか?』
俺は、シェッフルの言葉に黙ってしまった。
『まさか……。持ち合わせていないのですか?』
シェッフルは、大声で叫んだ。
その瞬間(とき)だった。
「ただいまーー」
元気な声が響いたけれど……。
「こ、これ何?何でこうなってるの?どういう事?」
戸惑う声が聞こえる。
そして、何か小さな声で言った瞬間。
目の前の泡が、みるみる消えていった。
「大丈夫?アーキー。泥棒が入ったかと思ったよ」
「いや、泥棒は泡まみれにはしないだろう」
「あーー。洗剤、くしゅくしゅしたんだねーー。ここのは、よく泡立つからね」
「そ、そうらしいね」
「あれ?アーキーもシェッフル出せるんだね!もしかして、晩御飯作ろうとしてくれた?」
ホウが言うと、シェッフルが……。
『そうしたかったのですが……。彼には……』
ヤバい!!!
「あーー。お風呂入ってきたらいいよーー。ほら、ゆっくり浸かっておいで」
「えっ?何、急に?どうしたの?」
「いいから、いいから」
俺は、シェッフルの事を軽く睨み付けながらホウをお風呂場に誘導した。
「おいおい。何で言おうとするんだよ!!」
『それは、本当の事だからですよ。君には、料理の才能がない』
「何だよ。そんな言い方しなくてもいいだろ?」
俺は、オーブンに向かい。
扉を開けた。
……
…………
………………
「本当だ。才能はないね」
真っ黒に焦げたピザを見つめながら、俺はオーブンの扉を閉める。
『料理の才能は、作ろうと思って作れるものじゃありません。君は、幼少期に料理を作らなかったのですか?』
シェッフルは、俺を指差しながら説教をしてきた。
「料理なんてした事がない。両親がなくなってからは宅配だったし……」
『たく、はい?何ですかそれは?』
「何ていうかねーー。バイクとか自転車で食べ物を持ってきてくれるんだよ」
シェッフルは、俺の言葉に『これですか?』とさっきのおもちゃを出してくる。
俺は、苦笑いを浮かべながら頷いた。
「そ、そんな事より晩御飯!作ってくれよ」
俺は、おもちゃをさりげなく取って床に落として話す。
『ご飯は…………ですよ?』
「えっ……?」
『だから、ご飯は…………ですよ』
「えっ、えっーー」
俺は、シェッフルの言葉がうまく入ってこなかった。そして、ようやく理解した今どうすればいいのか戸惑っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます