話さなきゃ……。
「ホウ、あのさ……。話したい事があるんだけど」
「ごめん。これ食べたら行かなきゃいけないんだ。悪いけど、帰って来てからでいいかな?」
「あっ、うん。そうだよな」
俺のスキルの事をきちんと話さなきゃいけないよな。ホウが帰ってきたら、絶対話す。
ホウは、ご飯を急いで食べ終わる。
「お皿は、俺が洗っとくよ」
「じゃあ、お願いするよ」
「ここの掃き掃除と拭き掃除は、終わってるから!あっ、でも、アーキーの部屋だけ、まだなんだけど……」
「大丈夫、自分でやるから」
「掃き掃除と拭き掃除忘れたら駄目だよ!じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
俺は、ホウを見送ってから朝御飯を食べ始める。
言えなかった。
スキルの事を話せなかった。
ピンポーーン
え?誰だ?
俺は、立ち上がって玄関に行く。
「おはようございます」
そこにいたのは、リズリさんだった。
「おはようございます」
「あの、少しだけいいですか?」
「あっ、はい」
「……中に入れてもらっていいですか?」
「あっ、あっ。失礼しました。どうぞ」
リズリさんは、本当に母に似ている。
異世界のアニメを見ていた時は、気持ち悪いと思っていた。
けど、今は違う。
気持ち悪くも怖くもない。
ずっと、この人と話していたいとさえ思うのだ。
目が覚めて、またあの部屋に戻りたくない。
「あのーー、アーキーさん。聞いてますか?」
「えっ?あっ!すみません。何でしょうか?」
「やっぱり、ボッーとされてましたよね」
「す、すみません」
「いえ、いえ。私は、心を読むスキルを閉じていますが、開いている人だと読まれてしまいますよ」
「心を読むのは、閉じれるんですか?」
リズリさんは、ふふふと笑う。
「閉じれるんですよ!だいたい、外にいる方のほとんどがそうしています。だって、毎日相手の心の声を聞いていたらしんどいじゃないですか」
「そ、そうですよね」
話し方も、母にそっくりだ。ほんわかした優しい雰囲気も……。
ふふふと笑いながら顎を触る仕草も……。
(母さんと呼びたいぐらいだな)
「ふふふ。お母さんでも構いませんよ」
「あっ、えっ、そ、その」
「あーー。すみません。今、ちょうど開いてみました」
(今?ちょうど?何てタイミングだよ。消えたい、消えたい。穴に入りたい。汚部屋に帰りたい)
「アーキーさん、そんなに自分を責めなくて大丈夫ですよーー。私、気にしないので」
「い、いや、気にして欲しいです……すみません」
「あっ、すみません。今、閉じますね」
リズリさんは、お辞儀をしてきた。
今ので、閉じたのだろうか?
「これで、大丈夫です」
リズリさんは、ニコニコ笑ってくれる。
俺は、リズリさんの笑顔を見ていると涙が込み上げてきてしまう。
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