リズリ……

どこまでいっても、白が続いている。

俺が住んでた街は、もっと色とりどりだったな……。


「つきました」


真っ白なアパートの前でチージーのバスが停まる。


色は違うけれど、俺が住んでいたアパートに似てる。


「ありがとう」


俺は、走っておりる。もしかして、あの部屋……。


俺は、急いでアパートに近づく。


「アーキー、そんなに急いでどうしたんだよ」


振り返るとホウが後ろから追いかけてきていた。


俺は、部屋の前で止まると扉を開けようとドアノブに手をかける。


「あーー。お早いお着きでしたね」


後ろから、声がして俺は振り返った。


………………。


「母さん……」


俺は、小さな声で呟くと……。


「母さん?なの?アーキーの?」


隣にやってきたホウに聞こえていたようだ。


「母さん?いえいえ。私は、隣に住んでいるリズリと言います」


母さんにそっくりな彼女は、俺とホウに挨拶をしてくる。


「あっ、すみません。初めまして、アーキーです」


「初めまして、ホウです」


「初めまして」


それから、リズリさんは色々話してくれたけれど……。俺には、何も届かなかった。


俺は、いつも見ていた異世界のアニメを思い出していた。


ホラーだと思っていた。


だけど、実際に会うとホラー要素はない。


ただ、ただ、嬉しい。


母さんが生きている事が嬉しい。


「ねーー。聞いてる?アーキー」


「えっ、あっ、ごめん」


「別に言いんだけど……」


ホウは、鍵を開けていてリズリさんはいつの間にかいなくなっていた。


「さっきの人は?」


「息子さんを迎えに行くらしいよ」


ホウの言葉に胸がチクリと痛む。


「そっか……」


気にしないようにしながら、部屋に入る。


「リズリさんが話してくれたんだけど……。僕がいない時間は、リズリさんがアーキーを見てくれるから……」


「どういう意味?」


「実は、さっきリズリさんに働き先の勤務形態を見せてもらったんだけど……。どうやら、不規則なんだよ。寮の時と違うから仕方ないんだけど。ここでは、アオーの掃除を自分でしなくちゃいけないから。スキルがないアーキーにとっては大変だろ?」


「そうだな」


「その為に、リズリさんがいてくれるみたいだよ!よかったね」


「うん」


「あのさ、さっきから聞いてる?」


「えっ、あっ、うん」


俺は、母に似てるリズリさんの事を考えてしまっていた。


「どうやら、僕は夜勤の仕事もあるみたいなんだよ」


「そうなの!?」


「うん。ちゃんと働かなきゃね」


ホウは、小さく溜め息をついて部屋に行く。


2DKのアパートだ。


多分、キレート校長が部屋が2つある場所にしてくれたんだろう……。


真っ白な部屋。


真っ白な空間。


俺が住んでいたアパートと同じなのに……。


違う。


ゴミがないからとかじゃなくて……。


色がないせいだ。


アパートに来て感じる。


色がない事の不気味さ……

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