新しい生活

「終わったーー。晩御飯は、僕が作るよ」


ホウが、ようやく部屋から出てきたのは4時間後だった。


「作れるのか?」


「作れるというか……。これだよ」


ホウがキッチンに立つ。


「アーキーも、きっとこれなら覚えられるんじゃないかな?みんな母親から教えられるんだよ!」


ホウは、キッチンに手をかざして……。


「シェッフル」と叫んだ。


すると……。


(かしこまりました。本日は、どんなメニューにいたしましょう?)


小さな人が、現れる。


「な、何だこれ!?」


「これはね、料理の魔法だよ!シェッフルが作ってくれるんだよ!アーキー、何が食べたい?」


「カレー」


「わかった!」


ホウは、小さな人に話しかける。


「シェッフル、カレーが食べたい。二人分」


(かーしこまりましーた)


シェッフルと呼ばれた小さな人は、ホウに深々とお辞儀をすると蛇口のてっぺんに立つ。


パンパンと手を叩き、(カレーです)と言うと……。


ふわふわとフライパンがやってくる。


(今日のメニューは、カレーです。じゃがいもをごろりとにんじんは甘く甘く♪)何故か歌い出す。


すると、どこからかじゃがいもがやってきて皮が剥かれ始める。


(玉ねぎもいれましょう。お肉は、チキン?ポーク?いえいえ、ビーフにいたしましょう♪)


野菜達は、綺麗に洗浄され切られて鍋に入っていく。


「シェッフルはね。母親から、教えてもらうんだよ!」


「これは、スキルなのか?」


「これは、別のものだから!アーキーもきっと覚えられるよ!」


「まるで、魔法みたいだな」


「魔法に近いかもしれないね。10歳になったら、教えてもらうんだよ!だいたい、3日もあれば習得できるよ」


「そんなに早く?」


「だって、僕達。毎日ご飯食べるだろ?」


ホウは、僕に笑いかけてくれる。


(それでは、最後の仕上げと参りましょう)


これなら、疲れたホウにご飯を作ってあげられる。俺は、シェッフルを見ながら、思っていた。


(出来ました!ビーフカレー二人前です)


「ありがとう。後は、僕がやるよ」


(かしこまりました)


シェッフルは、一瞬で消える。


ホウは、白い皿にご飯をよそってカレーをかけている。


「彩りが使えたら、手作業じゃなくなるらしいんだよ」


「そうなのか?」


「そうなんだ!シェッフルに彩りって言えばいいみたいでね」


ホウは、お皿を白いダイニングテーブルに置く。


「彩りって、色々必要なんだな」


「どうやら、そうらしね。僕も最近知ったんだよ。彩りが出来なかったら、致命的なんだよね。さぁ、食べよう。アーキー」


ホウは、悲しそうにしながらダイニングに座る。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る