食堂

食堂に入ると案内に従ってトレーを取った。一列に並んで歩く。


「はい、どうぞ」


トレーも、白。


ご飯も、白。


サラダも、白。


水も、白。(もはや、牛乳じゃん)


カレーも、白。


全部、白。


皿も、白。


スプーンも、白。


生物以外は、皆、真っ白だ。


俺とホウは、席に着いた。


『いただきます』


同時に言ってから、食べ始める。


「アーキーの所のカレーって何色?」


「茶色かな?」


「へーー。人参は?」


「オレンジ?」


「野菜も色があるんだねーー」


ホウは、そう言いながらキラキラした目で俺を見つめている。


「本当に白しかないんだな」


「まあ、そうだね。でも、服とか肌とか、生き物は色んな色をしてるでしょ?わかりやすいじゃん。カラーだから、生き物だって」


「そうだな。確かにな……。海も白いのかな?」


俺は、頷きながらシチューいや、シチューの色をしたカレーを食べた。


「海も白いよ!アーキーの世界は違うって言ったよね!写真も見た。だけど……。ここは、全部白しかないよね」


ホウもシチューの色をしたカレーを食べてる。


「色が戻ったら、ホウの世界も変わるのか?」


俺は、ホウに尋ねた。


「どうかな?ハッキリとは言えないけど……。変わる気がするんだよ!だって、今まで白だっただろ?」


ホウは、食べ終わって立ち上がった。

俺も食べ終わって立ち上がる。


ホウと俺は、食堂を出て歩き出す。


「さっきは、言えなかったけど……」


「うん」


「色がついてるものって、生き物以外では細菌だから……。ここでは」


「うん」


「だから、もし色が戻ったら……。」


「ホウの世界は、変わる?」


「そうだね」


ホウは、ニコニコ笑っている。


「あのさーー」


「何ですか?」


「敬語だったり、敬語じゃなかったり。お互いにやめないかな?」


ホウは、俺の言葉に目を丸くした。


「そうですね」


「それ」


「アハハ、そうだね」


「うん」


ホウは、立ち止まって俺に右手を差しのべてくる。


「この世界では、僕とアーキーは友達だね」


「そうだな」


「よろしくね!アーキー」


「よろしく、ホウ」


俺とホウは、握手を交わした。


ホウは、手を離した瞬間。


アルコールスプレーを、シュッシュッと手に吹きかけている。


雑菌なのは、すぐには変わらないよな。


「あっ、ごめん。癖で、つい……」


「別にいいよ!怒ってないし」


「そっか」


ホウと俺は、また歩き出した。


「アーキーは、スキルを習得しないといけないんだよね?何も、もってないから……」


「あ!うん。そうなんだよ……。だから、大変なんだよ。さっきみたいなのに……」


俺は、ホウに申し訳ない気持ちで話していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る