見せてやるよ

「ホウ、いつか俺がこれを見せてやるよ」


「えっ?この国で見れるのですか?」


「ああ!いつか、見れる。約束してやる」


俺は、大嘘をホウについた。


「嬉しいです。この色が見れるなんて」


そう言いながら、ホウは検索機にアルコールをシュシュとしてから拭いて、画面に頬擦りをしている。


出来るか出来ないで言ったら、99%は出来ないとは思ってる。


でも、残り1%でも出来る可能性があるならやるしかない。


ってか、俺しか色を戻せないわけだしな。


「アーキー、お腹すきましたね」


「ああ。そうだな」


「食堂に行きましょうか?」


「うん」


俺は、ホウと部屋を出て歩き出した。


「マジ何だったんだよなーー」


横の部屋の男達が何やら怒っている。


「そうそう!マジ、有り得なかったわ」


めちゃくちゃ気になるから、俺は声をかけていた。


「あのさーー。何かあったの?」


一瞬、俺に何って顔をしたけど、すぐに気にせずに話した。


「いや、さっき部屋に戻ったらさ……。床埋め尽くすぐらいのゴミで溢れてて、マジでビックリしたんだよ」


「へーー。そうなんだーー」


「そっちは、大丈夫だった?」


「ああ、うん。大丈夫だったよ」


「そっかーー。じゃあ、やっぱ下の部屋の奴がスキル失敗したんだなーー」


そう言いながら、彼等はいなくなった。


俺のせいだ。


俺のせいで、何かよくわからないけど隣の部屋まで巻き込まれてるみたいだ。


「どうした?アーキー?顔色悪いよ」


「いや、何でもないよ」


魔法の呪文の声が、大きすぎたのかな?


ホウに聞いてみるか……。


「あのさーー。ホウ」


「何?」


「スキル発動する呪文の大きさって関係ある?」


「あるよ」


あるんかーーい。


俺は、心の中で突っ込んでいた。


「どんな感じ?」


「大きな声で叫んじゃうと広範囲になるから、部屋の掃除ぐらいなら小さな声で言うんだよ。目の前の机ぐらいなら、さらに小さな声で呟くんだ。自分にしか聞こえないぐらいの音量でね」


その言葉に、俺は驚いて目をパチクリさせた。


「そっか、そういうのがあるんだなーー」


もっと早く教えてくれよ!


魔法の言葉教える前に言わなきゃだろ!


フーー、危なかった。


明日は、もっとデカイ声で叫ぼうと思ってたわ……。


聞いててよかったわ。


明日、もしやってたら隣だけじゃなく上下も全部クレームきてたよな。


よかった、よかった。


マジ、危なかったわ。


「今日は、カレーだって」


ホウが、そう言って食堂で止まった。


カレーか……。


うまいだろうなーー。


って、シチューじゃね?


これ……


「シチューだよな?」


「カレーだよ」


そう言いながら、ホウは食堂に入っていく。

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