初めての魔法
「へーー。何か寂しい街だな」
俺の言葉にパーンは頷いていた。
「生物以外は、全部白ですからね。だいたい、皆さん。建物にぶつかったり石につまづいたり、時には川に落ちてます」
そう言われて、俺は道を見つめていた。
確かに、質感は違うように感じるけれど……。見た目で、わかる程ではないよな。
「って、掃除の国って言ったよな?」
「はい、言いました」
「えっ、それって。俺、掃除出来るって事だよな?」
「はい?」
パーンは、疑いの眼差しで俺を見つめている。
「ほら、魔法の言葉教えろよ」
「あっ、はい。マトメーです」
「何それ?」
俺の言葉に、パーンは見本を見せてくれる。
目の前に白い葉っぱが沢山落ちている。
パーンが、手を翳(かざ)して「マトメー」と声を掛けると白い葉っぱは木の根本にサァーと集められた。
「凄いなーー」
「これは、纏める魔法です。散らかったものを一ヶ所に纏めてくれます。やってみて下さい」
俺は、そう言われて「マトメー」とでっかい声で叫んだ。
ザザザ…………
バサッッッ………………
「えっ?」
俺とパーンは、真っ白な葉っぱにまみれた。
「何だこれ?」
「木から葉っぱが全部落ちました」
「何で?」
「さあーー」
こうなったのは、初めてなのかパーンは困っている。
「マトメー」
ひとまず、パーンはそう言って葉っぱをどかしてくれる。
「あのさ……。ここって、俗にいう異世界だよな?」
俺の言葉にパーンは、何か調べている。
「あー、あー、そう言うことですね。あなたがいた世界とは違うって事ですね。そうなりますね。異世界ですね」
そう言うとパーンは、俺を見つめる。
「異世界ってのはね。現実世界と違って、何でも出来るわけだよ。だから、最初からスキルもあって。こうやって、パーンと俺は話せてるだろ?何でも出来るわけだよ」
パーンは、その言葉に首を傾げていた。
「何でもですか……。あなたと私が話せるのは、まあ、何となくです。ただ、何でもは出来ないですが……。基本的なお掃除スキルは、皆さん持っていますね」
「だろ?まあ、昔から整理整頓は苦手な方だけどさ……。それなりに、掃除は出来たとは思うんだよ。纏めたり、掃除機かけたり、拭き掃除したりな」
その言葉に、パーンは「掃除機!!!!?」と驚いて口を開けていた。
「いや、驚くとこ、そこじゃないだろ?」
「いやいやいや。掃除機は、この国では8000万キラリですよ」
「何それ?」
「何それって、あなたの国でいうお金の事です」
「8000万キラリって凄いの?」
「あ、あ、当たり前じゃないですか!働いた収入が多い人でも、8万キラリです。掃除機なんか王様しか持ってませんよ」
そう言って、パーンは目をパチクリさせながら俺を見つめている。
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