第7話
周りから見れば、二人はデートをしているように見えただろう。
僕は、この桜の木からあまり離れられないので、二人の詳しい様子は分からない。
でも、きっと、楽しんでいただろうと思う。
「で、どこ行きたい?」
「えっと……、遊園地!」
「子どもみたいだな」
「いいじゃないの。全然行ったことないんだから」
「まあ、いいけどさ。でも、今、夏休みだから、混んでるぞ。それでもいいか?」
「いいよ」
「じゃ、決まりだ」
「……暑いねー。夏の日差しがこんなに暑いものだとは、知らなかったなあ」
「気分悪くなったら、いつでも言えよ」
「ううん、大丈夫だよ」
「じゃあ、涼しくなれる所に行くか」
「えっ、どこどこ?」
「お化け屋敷」
「いや~、怖かったな、お化け屋敷」
「え~、そんなに怖くなかったよ。ただの作り物にあんなに怖がるなんて、宙斗も子どもだなあ」
「作り物とか言うな。夢がないだろ」
「お化け屋敷にどんな夢があるの?」
「うっ、それは……。まっ、まあ、とにかく次行こうぜ。……ジェットコースターとか、どうだ?」
「心臓に悪いのは、控えた方がいいと思うんだ。私、一応、病人だし」
「そうか。じゃあ、何したい?」
「プリクラ撮りたい」
「それなら、あっちに遊園地の記念プリクラ撮るとこがあったな。そこで撮るか」
「うん」
「アハハハハ、宙斗、変な顔~」
「お前も変顔しろって言っただろ。俺だけバカみたいじゃないか」
「え~、だって、人生初のプリクラだもん。可愛い顔で撮りたいよ」
「そうかもしれないけどさ~」
「宙斗、次はあれ乗ろ~」
「切り替え早っ。……まあ、いいか」
「あ~、楽しかった。……って、いつの間にかこんなに時間が経ってる」
「千歳がシューティングゲームに夢中になってるからだろ」
「だって、楽しかったんだもん」
「まあ、いいんだけどさ。……あ~、そろそろ帰らなきゃな」
「早いね」
「よしっ、最後に観覧車に乗るぞ!」
「わ~、すご~い。皆、小っちゃく見える~」
「向こう側も見てみ」
「……わあっ、すっごーい! 綺麗!」
「ここは、夕日が綺麗に見えるスポットとして、ちょっと有名なんだぜ」
「……こんな綺麗な景色が見られて、本当に嬉しい。……今日は連れて来てくれて、ありがとね、宙斗」
「……ああ、俺も楽しかったよ。ありがとう」
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