第10話 試験終了!お疲れ様でした!
どれだけ時間がたったのだろうか?戦い初めてどれだけ時間が過ぎたのかさえ分からなく成程の攻撃を避けて受けてたまには反撃してを繰り返した。こちらは息が絶え絶えになっているのに白髪の少女は息ひとつ切れていない。
とはいえ、少女の攻撃を一応だがいなすことが出来ている。このまま時間まで逃げ切れれば……と思っていた希望は少女の一言によって砕かれる。
「……本気…出してもいいかも?」
「いや何言ってんの?」
とんでもないパワーワードによりアルトの顔がつい真顔になるが、こちらをまるで見てない少女は右手に魔法陣をつけたまま、言う。
「本気…出すね。」
「いやいや無理だよ何言って!?」
先程とは比較にならないスピードで迫る少女に反射で受け止めるがそのまま振り切られ、闘技場の壁に打ち付けられた。直後後ろの壁からいくつもの氷の棘が出てきては突き刺さんと迫ってくる。そのままアルトは横に走り正面から来る沢山の氷の石を避ける。
「ちょいちょいちょいちょい!無理無理無理!」
「ねえ?、もっと行ける?」
氷の石が止まったかと思えば地面に巨大な魔法陣が浮かびあがる。それに今期最大の恐怖による全力退避で離れると同時に起動。その場には結界を貫かんとするほどの巨大な氷が地面から突き出てきた。その氷により木剣を飛ばされ、体制を崩したアルトに少女の木剣が迫る。
「やばっ!?」
「ここ!」
身を守る木剣も無ければ空中にいる為、避ける構えも出来ない。
少女の木剣が首に迫り━━その木剣が触れる事は無かった。
『はい終〜了〜生き残ったのは……あら、3分の1しか減ってない。最近の受験生は優秀だね〜。それじゃあ元の場所に戻しとくから、じゃねー』
「え、ちょ」
言われた直後、視界が白くなっていき遂には眩しくなり目を瞑るアルト。次に目を開けば、アルトが知っている学園の入口だった。そのまま来た道を歩き、宿にたどり着いたアルトはそのままベッドに倒れ込んだ。
「……………………はぁぁぁぁ」
今になって来た『試験が終わった実感』がアルトを襲う。田舎者のアルトにはセントリス学園の入学試験はとても辛かった。体をベッドの上でゴロゴロする。
一応やりきった……とは思う。時間もないいきなりの事だったが、自分がもつ全力を出し切った。その後の知らなかった実技(?)も冷静に対処でしたはずだ。
きっと合格出来ているはず……心の中で何度も言い聞かせるようにしながら眠るのだった。
次の日の朝。窓に止まっている1羽のフクロウに着いていた巻物に書かれている合格証を見て、跳ね喜ぶのだった。
その後ドタドタうるさいと宿主に怒られた。
試験が終わった日に戻る・・・・・・
試験が終わり少女が飛ばされた場所は彼女の家、子爵家だった。
「……………ふぅ」
「お疲れ様でした。お嬢様」
あらかじめスタンバイしていたメイド━━メアリーから濡れたタオルを受け取り、火照った顔を冷ます。
「ありがとうメアリー…いつもありがとう」
「貴方のメイドですから……お嬢様、楽しそうですね。」
「……そう見える?」
「何時もよりも顔が明るいので。今の方が何時もよりも可愛いと思いますよ?見ます?」
ニヤニヤしているメアリーを無視しながら『あの〜お嬢様〜?』ソファに座り、渡された手鏡で自分を見るそこには何時もよりも少しだけ口元が笑っている……気がする。
「無視は酷いと思いますが……楽しかったことがありましたか?」
「……」
少し考えればあの時を思い出す。
権力に物を言う存在しかいないその中でも周りにいなかった存在。自分が本気を出しても良いと思えた存在。自分が興味を持った存在だった。
「……少し、学園が楽しみになった。」
「……それは良かったです、お嬢様。」
1人の少女が、1人の少年に興味が向いた瞬間だった。
・・・・・・・
・・・・
・・
『ふーにゅふにゅ……』
アルトが止まっている宿の向かいの屋根にそいつはたっていた。
宿のベッドで寝ているアルトは一見なんにも変わりは無さそうだが、男の目には見えていた。絶大な魂結を。
『……ふにゅふにゅ』
謎の声を発しながら男は口元に弧を描き、その場から姿を消すのだった。
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