第8話 入学試験1



 大陸一の大きな町、王都。


 石でてきた防壁が円上に囲まれており、北には王城。南には住宅街、西と東には商店と方位によって区別されている。王城は大きいのは勿論だし、住商店街には沢山の人で溢れかえり、声が聞こえない日はないと言われている。商店街には沢山の道具や具材、料理が集まるもんだから、珍しい道具、珍しい料理を探しに沢山の人が集まる………と本に書かれているガイドブックを読みながら、馬車で座っていたアルトはそれを閉じ、外の景色を見る。


 そびえ立つ石の防壁を見ながら、ガイドブックに書いてある通りだな。と思いながら馬車から降り、西の門から入る。


 入る際、透き通った結界をすり抜ける。アルトは初めて見るそれに少し警戒するが特に何も起こらなかった為、そのまま通った。後から聞けば、罪を犯していない者には何も起こらず、犯した者には鎖が巻き付く結界らしい。


「……おおおー、デッケ!」


 馬車に乗せて貰った人に別れをつけ、改めてアルトは見渡し、声を上げた。


 人が通る道の大きさ、1つ1つのお店の大きさ、全てに置いて自分の住んでいた街よりも大きい事に目が離せない。人だってそう。


(あ、あの人獣耳が着いてる!猫耳かな……あっちは犬耳だ!)


 沢山の人の中には猫耳や犬耳が着いてる人もいる。これも自分の街では見ない光景だ。


 本当ならもっと沢山の場所を見て周りたいアルトだったが……自分が此処に来た目的を思い出し、今の時間確認する。幸いと時間はまだ残っているようだ。


「えっと………学園はこの先か、行こう。」


 自分の生命線である銅貨と銀貨、金貨を入れた袋を落とさないようにポケットへしまう。ガイドブックを開き、場所を確認して歩き出すのだった。






 ・・・・・・・・・




 セントリス学園。


 王都の中央にそびえ立つそれは、王城よりも大きさは劣るが、充分な程大きい。学園が中央にあるのは学びの場所なのに不便な所に置いてどうする!と言った園長に王様が中央に作るのを許可したらしい。

 中央に作る以上、沢山の人が通る以上、防犯設備も多く動いている。


 沢山の貴族が入学する中でも平民でも入れる。入れば将来が約束される場所。その為毎年受験生はとても多いらしい。そして沢山の人が脱落する。それ程試験は難しい様。そんな中━━


「…………………よ、よよよよよし!いいい、行くぞ!」


 アルトはめちゃくちゃ緊張してた。周りの人達、受験生が若干引くレベルだったが、周りが見えていないアルトには周りの声は聞こえていない。


(周り、貴族だらけなんだけどー!聞いてないよあのやろう!いや、何も言ってなかったけどさ!なんか面倒くさがってしてくれなかったけど!それでも貴族の人達も居ることぐらいは教えてくれても良かっただろ!クソッタレ!)


 遠目からでも分かる高そうな服。整った髪型。1目見れば貴族だと思われる人が沢山いる。粗相を犯さないかの緊張、試験での不安も相まって思考がおかしくなりながらも試験会場に到着した。


 周りの人達は資料を読み最後の追い込みをしている。すぐに始まると思っていたアルトは始まるまで肩身がせまかった。



「それでは……試験始め!」














 太陽がちょうど1番真上まで登った頃、試験は終了した。





「そこまで!これで試験は終了だ。受験生は支度が済み次第、後ろのドアに入るように。」



 試験員が居なくなると張り詰めていた空気が無くなり、まったりとした空気が流れている。中が良い人達は皆集まり、談笑している。その中で俺は1人項垂れていた。


「………お、終わった……」


 ただでさえお偉い貴族様達が2年かけて覚える内容を4ヶ月で叩き込むのは無理があった。試験が終わる頃には気力を使い果たした。



(ていうか何だよ最後の問題!自分が思う魔法陣を書けって!最早お絵描きだったよ!)


 ここにはいない試験官に心の中で愚痴りながら体を預けていたが、それではここの邪魔になるだけ。そう思ったアルトは荷物を鞄へとしまい、会場から出た。


(王都でしか食べられない者を食べたいよなぁ…)


 王都にはどんな料理があるのかな……と思っていたアルトが出口であろうドアを開ければ当然外……ではなく広い闘技場だった。


「……………は、え?」


(他にも沢山の人がいるし、腰にはいつの間にか木剣が着いているし開けたドアはいつの間にか消えてるし!……今日は厄日なの?俺)


 いきなりの事に呆然としていれば誰かとぶつかってしまい我に返る。


「邪魔だよ、お前。」

「あっはいすいません!すぐどきます!」


 すぐに謝りその体制で道を譲るアルト、完璧な三下ムーブである。





『あーテステス、テステース。マイク確認……ヨシOK!』

「ひゃぁああ!?あ、すいませんすいません!」


 驚き過ぎて声を上げてしまい、周りの視線を集めてしまった。急いで謝り、口を塞ぐ。


『まず受験生の皆さんこんにちは!これから実技試験の方、始めるよー。』

(じ、実技試験!何それ聞いてないんですけど!)


 慌てるアルトだが、説明は続く。


『内容は前年と同じ制限時間つきの乱闘戦。制限時間まで相手を蹴落とす、または生き残ればポイントを多く貰えるよ。逆にやられてしまうと退場。そのまま元の場所に戻すからそのまま帰ってねー。』


(つまり、ここにいる人達全員が敵……って事ぉ?)


『終わった………公女様も居るなんて聞いてないよ……』

『この中に強え奴はいるかな……(・ω・ = ・ω・)』

『……………』


 受験生の中には猫耳の人、長耳の人、赤髪や白髪等の特徴的な人達全員が相手になるらしい………無理じゃね?明らかに強そうだし。そう思っても残酷にも話は進む。


『ま、説明はこれぐらいかな!それじゃあ試験開始ー!頑張ってね。あ、場所は森林ね!』

「え、開始ってうおおおお!?」


 直後、頭上を通る火の玉。少しだけでも軌道がズレてなければ火だるまになっていた事に恐怖する。


 いきなり闘技場が森林に変わった事に驚く暇もなく、アルトはその場から逃げ出した。


(怖い怖い怖い!なんか追われてるし、何かずっと飛んでくるし!誰か助けてー!?)


「逃げるな!卑怯者!」

「平民ごときが、真っ向から戦え!」

「俺のポイントになれ!」


 後ろで誰かが叫んでるが、止まれば死ぬ事ぐらいは分かる為、声とは逆の方向へ逃げ出すのだった。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る