第4話 運命分岐点
「おー疲れっしたー。」
今は午後の12時。
それまでずっとお屋敷の掃除をしていたアルトは、痛む体を引きずりながら屋敷を出た。空には雲ひとつないいい天気で、星が存在を表すようにキラキラと輝いていた。
「さてと……早めに帰らないとな。」
明日もまたお屋敷で仕事の為、早めに水を浴びて、木の上で就寝しないと……そう思ったアルトは痛む体にムチを打ち、走って魔獣の森に向かった。今のアルトはまだ16歳の為睡眠時間が少ないと身体的にキツイ事をこれまた仕事で知った。クズからの攻撃が倍ぐらいに痛かった事である。以来、アルトは睡眠に人一倍気を遣うようになっている。
前までは睡眠が1、2時間ぐらい減っても辛くなかったのになぁ……と思いながら、川の冷たい水で身体の汚れを洗って、自分の衣類がある木へと行くアルトだが…………ここで運命の分岐点が起きた。
「………………━━……━━……━━」
「うん?………誰かいる?」
体を拭き終わって着替え終わったアルトがいつものように木剣を振り回して木の枝に八つ当たりした後、木の上へとよじ登って寝ようとした時にそれは起きた。何時もは誰もいなくて静かな魔物の森に誰かの声が聞こえるのだ。
とは言っても、別にアルトが気にすることでは無い。
この魔獣の森は確かに危ない場所だが、この世界での活動家━━冒険者にとっては宝の森。奥に行けば行くほど、誰も見た事が無いものがあるかもしれない、その初めての発見者を求めてくる人もいる。今回もその人達だろうとそのまま寝てしまえば良かったのだが……
「冒険者……じゃないよな?今さっきの声、女の人の声……だったよな?」
生まれながらにして耳が良いアルトには聞こえてしまった。━━今の声は女性の声だった。そこまで考えて、アルトは再び地面に降りた。
「流石になあ……このまま寝て明日誰かが死んだとかなっちゃうと心が痛くなるし……」
そんな事を口に出しながら木剣を持ち、森の奥に行くアルトだったが、心の声は楽しそうだった。
(今の俺、めっちゃ冒険者っぽい!)
アルトは自由に冒険ができる冒険者に少し憧れを持っていた。そして、深夜に近いせいでまともな判断ができず危ない事を考えることもせずに夜の街へと繰り出した。アルトの気分は絶好調である。
━・━・━・━・━
その頃、アルトとは別の場所では王国の騎士達が深夜にもかからわず慌ただしく動いていた。皆の表情は暗く、落ち着きが無い。それ程の事件が起きていた。そこに1人の男が現れた。
衛兵が来ている鎧等は一切着ておらず軽装。しかし背中には不格好なぐらい大きな大剣が収められていて、左手の人差し指には黄色のリングに着いている。何よりも、その男から滲み出るオーラはその場にいるだけで息が詰まるよう。
「俺が出る。………行けるか、オーディン。」
『アア』
アルトが森の奥に行くと同時に、王国騎士団長が魔獣の森へと、1人進軍を開始した。
━・━・━・━
「……こんな所に小屋?自殺願望者もいい所だな……」
ただの好奇心で森の奥深くまで来ている事に大きなブーメランが深々と刺さっている事にきずいていないアルトは、危険が無いか回りを確認しながら進んでいたが、いきなり開けた場所に出たと思えば目の前には人が住んでそうな程の小屋があった。
一応周りに人や魔獣が居ないか確認した後、静かにドアまでたどり着いたアルトはかぎが掛かってない事を確認し、ゆっくりとドアを開けた。
小屋の中は暗く、机や椅子、火がついてないランプ等の生活品しか無かった。……正確には1つだけ異質なのもあった。
「……すぅ……すぅ……」
本来居るはずの無い麻の袋から寝ている声とかずかながらの声と同じだという事は森の声はこの人からなのだろう。とんでもない声の持ち主である。その事に恐れながらも袋の紐を解いて中を見たアルトは驚いた。中には世界でも少ししかいないであろう美少女が寝ていたからである。
「……………ハッ!いかんいかん。だ、大丈夫ですかー?」
「すぅ…………うん?」
彼女の姿に見惚れていたアルトだが、意識を切り替えて優しく肩をゆすると彼女が起きてくれた事に安心しつつ、何時もよりも喋りかたを丁寧しながらに彼女声を掛けた。
「おはようございます。いきなりでスイマセンが、貴方はいつも麻の袋で寝る人。何でしょうか?」
「……う?…そ、そんな訳ないじゃないですか!ただ私は2人組に攫われて…」
「そうでしたか。それじゃあそのままじっとしておいて下さい。手足を縛っている縄を解きますので。」
彼女にじっとしてもらい手の縄を解く。そのまま足に着いている縄を解きながら彼女と話す。
「助かりました。私の名前は━━「どうでも良いです。」━━え?」
「名前はどうでもいいです。それよりも今のうちに決めないと行けない大事な事がありますので。」
さっきの彼女が話していた内容が本当なのなら自己紹介している時間は無いのだ。若干(´・ω・`)している自分よりも彼女に伝える。
「時間がないので質問にだけ答えてください。時間がないので分かりましたか?」
2度も同じ言葉を言ったせいか、真剣に頷く彼女に質問していく。
「貴方が来た場所は?」
「お、王都です。その場所でも━」
「次です。貴方を助けに来ている人はいますか?」
「…………話を聞いてくれても「質問に答えて下さい。」……た、多分来ていると思います。」
「どちらから来るかは?」
「え、ええと…少し時間をくれるなら……」
「そうですか。なら直ぐに出発しましょう。」
「え?」
アルトは家のドアを椅子で塞ぎ、窓を開け、彼女を「え、ちょっと?」窓から投げた。直ぐに悲鳴が聞きながら自分も窓から飛び出した。
「鈍臭いお嬢様ですね。普段運動しているのですか?」
「なっ!……普通窓から女の子を投げる人が何処にいるのですか!」
「いいですから早く行きますよ!」
「ですから、ってえ!?」
飛び出した窓を閉めたアルトは未だに後ろで説教じみた事してる呑気的な彼女の手をとり、また夜の森へと走っていった。
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