第14話 攻略対象の豹変(生徒会長)
豪華な門構えのチェスター侯爵邸の前を訪れた。使用人募集の面接をお願いし、中に通して貰う。邸の中はチリ一つ見当たらないくらいピカピカであった。流石潔癖性屋敷だ。
そういえば…攻略対象のジェイラス・ドウェイン・ゴドウィン・チェスター侯爵令息(生徒会長)は幼い頃野良猫が忍び込んで普通に遊んでいたら急に咳き込みアレルギー症状と戦ったらしく以来動物はおろか毛一つ落としてはならない環境になったとかいう設定があった。
使用人の後をついていると廊下で生徒会長と会った。
生徒会長が静止して私を見て
「うっ!!ま、眩しい!!!き、君は一体!!?」
と言い出した!
お前も私の事わからんのか!!
しかし隣のヘクター君を見て
「貴様…何をしているんだ?」
「お話があって参りました」
とヘクター君は頭を下げた。
使用人を下がらせてとりあえず応接間に通される私達。
ソファーに座ると
「まさかとは思うがその右腕と左足の包帯…。ミキャエラさんかい?」
と確認される。
「はい。そうです。ミキャエラでございます」
「やはりか!何故そんなにも痩せて綺麗…いや!違う…何故ここに?」
とメガネをあげる。
ヘクター君が事情を説明した。
「………なるほど…うちで働かせて更にルイス君から匿うというわけか…可哀想に。ルイス君は普段なら枷など持って監禁しようとは思わないのだろうが……」
ん?
今会長私の事可哀想にとか言った?
私は試しに
「会長…あの…以前の私には会長も辛く当たっていましたよね?」
「ん?何のことだい?私は生徒会長だよ?生徒には平等に…」
「いや!待ってください!私がネズミを投げつけて学園のトイレ掃除1か月させたじゃないですか!!忘れたとは言わせませんよ!?」
と言うと会長は
「う、うむ?、そ、そんなこと…あ、あ……」
ヘクター君もジトリと会長を睨んだ。
「ううむ。確かにあった!済まない!謝罪する!!……しかし…不思議だ」
「何がです?」
「今の君と前の君だよ。何か違和感がある!単に痩せたからと言う話ではない!前の君にはまるで呪いのように見てはいけないもの、関わってはならないもの、汚いとか嫌悪感しかなくて言葉も辛く当たってしまった。
しかし今はそれがない!」
「だから……痩せたからでは?」
「違う!痩せたからとか単純な問題ではないぞ?上手く言えんが…まるで今の君に魅了されるというか…変な気分だ。普通は前の汚らしい君を知っていたらいくら痩せようが私は一線引くと思う。
自分の潔癖性のことは自分で良くわかっている。汚いものが綺麗になったからといって前のイメージが直ぐに忘れられるわけがないんだ!」
「ちょっと…さっきから汚い汚らしいとか失礼ですね!」
こいつ怪我して無かったらぶん殴りたい!
「だからそれは謝るが…今の君にはそういう嫌な感情を抱かない。違和感だ」
と会長は言う。
「ヘクター君はどうなの?」
「えっ?僕ですか?僕は別にミキャエラ様が太っていようがいまいが可愛らしいのは変わらずですよ?気持ちにも別に痩せたからと言って変化も特にないかな?と」
と言う。
「ふーむ。もしかしたらルイス君が変わったのもそこに何かあるのか?」
ええ?まさかゲームの強制力が痩せたから働いてるのかしら!!?今頃になってー?
「ともかく誘拐などとなったらうちとしても問題になるから男爵家に連絡して堂々と君を預かろう。ルイス君には私から話しておこう。君を監禁しようとしたことを公にはしたくないだろう?」
会長、それは脅しですよ。
しかしもし強制力が働いているのなら…間違いなく今の攻略対象達は私に何らかの興味や好意を持っていることになる。
「うーん……これは…学園に行って確かめないとわかりませんね。嫌われ者の私が他の人も会長やお義兄さまのように変わっているのかどうか」
正直攻略対象者の反応がみたいと思っている。
「危険ですよ。ミキャエラ様!また誰かに怪我をさせられたら!」
とヘクター君が前にボコられた事を心配してくれた!
「ありがとうヘクター君…会長…貴方は犯人の目星がついているのではありませんか?」
と言うと会長は焦り出す。
「わ、私の口からは…」
私はうるうるしながら会長を見つめた。手を組みお願いを訴えると会長は何故かドバッと鼻血を出した!!
「「ええええー!!?」」
ヘクター君と私は驚いて叫んだ。布で抑えて会長はあっさりゲロった。
「君を…襲わせるよう命令を出したのは…おそらく…王子の婚約者であるクリスティーン・ジョゼフィン・バックランド公爵令嬢だ」
耳を疑う!
だってあの悪役令嬢らしからぬ可憐なクリスティーンが悪役令嬢をこなしているなんて!!いや、本来ゲームならそうなんだけど!
それに王子とはリア充のはず!な、なんでだ!?
「私には…信じられない事です。バックランド公爵令嬢が…まさかそんな事を…」
と言うと会長はメガネをクイとさせ
「君は知らないだろうが…あの二人は今もしかしたら上手くいっていないのかもしれないな」
「えっ!!?う、嘘でしょ!?あんなに人前でイチャイチャしていたのに!!」
思わず突っ込むと
「それは見せかけかもしれないな…。
君が怪我をする少し前些細なことで言い争っている姿を見た」
「些細なこと?」
とヘクター君が聞くと
「うむ、偶然空き教室の前を通りかかり王子が銀髪の女生徒とイチャイチャしている所を目撃したのだ」
いや、会長。それはもはや覗きですよね。
「王子と銀髪の髪の女生徒がイチャイチャしていた所を婚約者のクリスティーン様が通りかかり文字通り修羅場になっていてね。クリスティーン様は泣き出した。
銀髪の女生徒は退場し、王子は謝罪して機嫌を直してもらおうとクリスティーン様と今度はイチャイチャし出していたからその時は特に気にしなかったんだ」
「ていうかそんな前から…その銀髪の子のイチャイチャの所から見ていたんですね会長…」
と言うと会長は赤くなり
「注意するタイミングを失っていただけだ!」
と誤魔化していた。
「そしてその後二人は教室を後にした。私は注意しようとクリスティーン様の後を追いかけた」
「そこは王子の後じゃないんですかっ!?」
ヘクター君も突っ込んだ。
ていうか会長しっかり見届けんな!!
「いや、流石に王族に注意など恐れ多くてな。婚約者様にやんわりご注意をと思ったていたんだ!そうしたら…数人の男達…彼女の親衛隊がクリスティーン様の周りに現れてプレゼントを渡していた」
会長の話だと…
クリスティーン様は男達の頭や顎を猫のように撫でて言った。
「銀髪の女の子の全てが嫌いなの。お願い…私の目に映らないようにして?全てよ」
「全て?学園中の?」
「ええ、そうよ。全員。気に食わないの。クリスティーンの言うこと…聞いてくれます?」
とうるっとして訴えるとズキューンと心臓を射抜かれたような男達は従って順番にクリスティーン様にひざまづき手にキスをして忠誠したという。
男の一人が
「そう言えば銀髪の女と言えば今度の剣術大会に銀髪の太った男爵令嬢が出場するとか!」
と言ったのだそうだ。
するとクリスティーン様は
「まぁ!女の子が出場するの?なんて野蛮な!それに王子に花を持たせてあげたいわ。その子が出場できないようにしてくれるかしら?」
とクリスティーン様はその男の頰を撫でると男の目がハートになり
「もっ!もちろんでございます!!クリスティーン様の為ならあのデブの腕でも足でも折って出場できなくしてやります!!」
と言い、男達は去っていったのだと言う。
まさか私以外にも銀髪の女生徒の被害は出ていたのか!?クリスティーン様の命令一つで?
将来の王太子妃だから媚を売る男子も多そう。所詮権力と美貌か!
「それで…そんな事を聞いて会長はどうしたのです?もちろん注意したんですよね?」
「いや…流石に…タイミングが悪くてな…。聞かなかったことにしたんだ!」
「なにーーーーー!?」
と叫ぶと生徒会長は土下座した。
「すっ、済まない!公爵令嬢様だし!ど、どう言えばいいのだろうとか頭で考えだすと止まらなくなりその時は注意出来ずにいたんだ!それに話しても私まであの無防備な可愛らしさ爆発攻撃にあったら火傷どころではすまない!もし公爵令嬢様と火遊びしてしまったら私は王子に切られる!ミキャエラさんすまない!」
と私にひたすら謝っている会長の変貌ぶりも確かにおかしかった。強制力恐ろしい。いやあんたがしっかりしてれば火遊びなんて発展しないから!妄想癖すごいな会長。
それに王子と銀髪の女生徒が浮気をしたことももしかしたらヒロインの私の何らかの強制力が働いていたのか?
「…ともかく男爵家に連絡を入れて私を預かることお願いします…。後、私退学辞めてとりあえず怪我を回復させ学校に行って公爵令嬢様とお話ししてみます!」
と言うと会長は心得たとばかりに従った。連絡を入れに部屋を飛び出した。
ヘクター君は
「ミキャエラ様…なんだか心配です。僕もここに使用人としてでいいから働いて少しお側にいてもいいですか?今のミキャエラ様の言うことなら会長何でも聞くじゃないですか」
「うん…気味が悪いほど人格変わってるしね。たぶん私が言えばヘクター君のことも良くしてくれるわ」
「そうですね。ここの方が街でパン屋と酒場で働くより給金はずみそうですし!」
とちょっと喜ぶヘクター君だった。
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