第13話 攻略対象の豹変(ルイス君)

私が家に戻り退学をして働きたいので男爵家に話し合いに行くことになったのでヘクター君が酒場のバイトを休んで付き添ってくれた。


今度は乗り合い馬車で向かうことにした。

怪我はギブスを外し包帯が巻かれている。

痩せた私を前のデブと思う人がおらず、中年男性はデレデレして席を譲ってくれた。


「前とは大違いだわ…人ってこんなに変わるのね」


「……きっとあの人達はミキャエラ様のことを覚えてないのでしょうね。見た目が変わると印象が変わるから」

とヘクター君が言う。


「ヘクター君は前の私にも親切にしてくれたね。ありがとう!」


「ふふ、ふくよかなミキャエラ様も可愛らしかったのに」

と言う。

ありがとう!ヘクター君は流石アニタお婆ちゃんの孫だ!!


「そんなに痩せて辛くないですか?」

とも言ってきたので少なくとも見た目では判断してないみたい。ヘクター君は私が痩せても態度はいつもと同じだった。


ようやく乗り合い馬車が目的地の男爵邸へと続く道に差し掛かりそこで降りて歩いて向かう。ヘクター君は


「またおんぶしましょうか?」

と申し出た。


「ありがとう。でも杖もあるし平気よ。体力つけるために頑張るわ!」

と言うとどこか嬉しそうにヘクター君は頭をポンポンとしてくれたのだ。


ようやく男爵邸に辿り着く私達。

使用人さんの一人が驚いて目を見開いた!


「し、少々お待ち下さい!」

とバタバタ駆けていく。


しばらくして中に通された。


応接間にいたのはルイス君だ。あくびをしながらこちらを見て一瞬固まった。


「お、お前…いや君は…誰だ?」

と言う。こいつ…。


「お久しぶりです。お義兄様。私です。ミキャエラですわ」



「は?ミキャエラ?あの愚昧は…もっと太ったブタ…君がそんな…」

しかし腕と足の包帯や銀の髪や瞳の色を見るとルイス君も流石に気付いた。


「な…何のようだ。今…両親は旅行中で俺が今当主の代わりだ」

と言うので、


「それは困りましたわ。出直しましょうか?私…学園を退学して街で働こうかと思いますの。私の学費も毎月少しずつこちらにお返しできるよう頑張ります。どの道私は平民落ちする身ですのでお義父様達にもご都合がよろしいかと思いますの」

と言うとルイス君は


「なんだと!?そんな事を勝手に!!」


「私はこの家に必要ない存在でした。一度も可愛がってもらった記憶はありませんわ」


「ミキャエラ!お前はうちの養女だぞ!?お父様が孤児院から引き取ったお金だって決して安くはないんだ!!」


「…ではそのお金もいずれ将来お返ししますわ」


「お父様がいないうちにそんなことは決められない!」


「あら…先程お義兄様はおっしゃったわ。今は当主の代わりだと!お義兄様が了承してくださればいいだけのこと」

と言うとルイス君は焦りだした。


「…ならば当主の代わりとして許可できないな!お前と平民との婚約も白紙に戻す!」

と言い出したのでヘクター君も驚いた。


「何故ですか?そんな…」


「うるさい平民は口を出すな!!これは命令だ!我が邸から出て行け!おい!!」

と最近雇ったのか傭兵みたいなお兄さんが出てきてヘクター君を捕まえると外に連れ出そうとする!


「ヘクター君!!」


「ミキャエラ様!!」

手を伸ばすがその手が触れる寸前でルイス君が掴み包帯の方を手を取り引きづる。


「いだっっ!!」

何て乱暴なの!!まだ完治してないんだぞ!?

ルイス君は何故か私をあまり使ってない地下室へと連れてきた。


「お、お義兄様!?」

何かゴソゴソしていると思ったら手に鉄の枷を手にしていた!!

ちょ、ちょっと待って!?これってあの乙女ゲームのルイス編バッドエンドの一つの監禁じゃない!!


「な、なんなのです!?それは!!」

私は逃げる体制を取った。


「ははは、まさかお前みたいなデブが痩せてこ、こんなになるなんて思っても見なかったよ!!こんな…こんなお前…他の誰かに見せるわけにも行かないな!……退学届は出してやる。


だがお前はずっとここにいるんだ!!俺の人形として生きてもらう!!」

ととんでもないことを言い出す!

冗談じゃない!ここから逃げないと!

ルイス君がジャラジャラと鎖のついた枷を持ち近づく。私は物陰に隠れて逃げ続ける。しかし行き止まりの壁を見て絶望する。


黒い影が伸びてくる!

嫌だ!こんなとこに一生閉じ込められるなんて!!こんなことなら痩せなきゃ良かった!怖い!いくらイケメンでも犯罪犯そうとする危険思考の奴は例え義兄でも許せん!!私は怪我してない方の拳を握りしめた。


そしてパンチを繰り出そうとしてルイス君に止められる!私の拳を手で包み込み。よく見ると顔を赤らめてはぁはぁしてる!!


「くく!バカめ!体力の戻り切ってないお前に俺をどうにかできるとー……」

そこまででガッと頭を後ろから壺みたいなもので殴られ気絶するルイス君!

後ろには…ばあやさんが立っていた。


「お嬢様!!ご無事ですか!?今のうちに裏口からお逃げ下さい!ヘクター様にもこっそり手紙を渡し裏口で待ってもらっています!!」

初めてばあやさんが声を出した!!


いや、そんな場合ではない!逃げなきゃ!


「ありがとう!ばあやさん!!」

ばあやさんに続き、裏口へと案内される。他の部屋でメイド服に着替えてカツラを付けて変装して使用人達の目を誤魔化して裏口に出ると


「ミキャエラ様?」

と待ってたヘクター君が顔を出した。


「ヘクター君!!」


「ミキャエラ様!!」

ヘクター君が近寄り私を抱きしめた!


「大丈夫ですか?何もされなかった?」


「うん!平気よ!!」

と涙ぐむ。義兄に監禁されそうになったなんてね。

ばあやさんは


「さあ、お早く!お逃げ下さい!!」


「行きましょう!」

ヘクター君と急ぐ。途中からヘクター君がおぶってくれて乗り合い馬車に乗り込んだ。

息を切らしてヘクター君は


「どうしましょう?叔母さんの家ではすぐに見つかって連れ戻されてしまうかも!」


「…そんな!」

逃げても見つかるならまた監禁の恐れがあった。


ヘクター君は考えた。


「男爵家が手出しできないのは高位貴族です!……ダメ元で高位貴族様に匿ってもらうしかありません!」


「でも高位貴族様の知り合いなんて早々見つからないわ…」


「生徒会長さんの侯爵家ではどうでしょうか?ちょうど侯爵家の使用人を二人ほど募集しているのを街で見かけました。事情を話して協力してもらいましょう」

えっ!?生徒会長!?

あの嫌味な潔癖性が私を匿ってくれるわけないわ!!


「無理よ…あの人私の事嫌ってるし」


「ルイス様も生徒会長には頭が上がらないし、会長はきっとミキャエラ様を襲った犯人を知っているのだと思います!」


「ヘクター君…そうだとしても…きっと断られるわ…」


「そうでしょうか?先程のルイス様が豹変した通り痩せた今の可愛くなられたミキャエラ様を放っておくとは思えませんし、逆にこちらが利用してやればいいのです!」


「ええ?大丈夫なのかな??」


「もしダメならまた別の手を考えたっていいんです!」

とヘクター君は言い、私達はとりあえず潔癖性生徒会長ジェイラス・ドウェイン・ゴドウィン・チェスター侯爵令息の邸へと向かった。

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