第7話 モブキャラとデブイン!

茶髪で瞳の色は濃い緑でどこにでもいる普通の顔のモブキャラ男子生徒がいつぞやかの乗り合い馬車で知り合ったお婆さんの孫と言った。


「あ!アニタお婆ちゃんのお孫さんですか!そ、その節はどうも!」

と若干遠ざかる。

何かキョトンとした顔をした。


「?どうして離れるのでしょう?」


「う、あ…その…いえ…不快でしょう?私なんて…」

と下を向く。美形揃いの攻略者に周りの者達のこれまでの反応に嫌と言うほどその身がどんなに人から嫌われているかを知り尽くしている私はヘクター君もきっと嫌だろうなと言う思い込みから遠ざかった。


「?……別に僕は何とも」

と言ったのでああ、別に何とも思われてないただのデブなんだなあ。と思った。


「あの…僕貴方にお話がありまして…。実は以前お祖母ちゃんが貴方に優しくしていただいたと聞きました。


貴族なのに遅くまで乗り合い馬車で一緒になって腰痛の酷いお祖母ちゃんにクッションを当ててくれたり年寄りのお話を親身になり聞いてくれたり…。


お婆ちゃんはあの歳で一生懸命に働いてくれて…一人王都まで出稼ぎに…。帰りに歳の若い子と友達になったと嬉しそうでした。ありがとうございました」

とペコリと頭を下げられた。


「いえいえ…アニタお婆ちゃんは元気ですか?また会えるといいな」

と言うと座り込んでブワリと滝のような涙で泣き始めた!!?


「ど、どうしたの!?」

と言うと


「お、お祖母ちゃんは…せ、先日…持病が悪化して亡くなって…!心臓も悪かったから…ううう!」

と言ったので私は悪い事を言ったと反省した。

でもお婆ちゃんが死んだなんて!

唯一私と楽しく普通に話してくれた人だったのに。


しんみりして


「あの、私お墓に行きますから場所を教えてくれたらいいんだけど…」

と言うとヘクター君が涙を拭いて…


「それはいずれまた。まだお伝えしなければならないのですが…お祖母ちゃんの遺言に貴方の事が書かれていて…その…身分違いかもしれないけど僕と結婚して欲しいって!」

と言ったので驚いた!!

ええええ!?


「お祖母ちゃんの最期の言葉だから僕守りたくて…だから貴方さえ良ければと思いまして…も、もちろん断られてもいいですよ?急な話だし、まだタウンゼット伯爵家にもお話していませんし!」

と言う。

いやいや待って?


「あの、私がどうよりヘクターく…ヘクターさんがお嫌でしょう?こんな嫌われデブ!わ、私は元々孤児でタウンゼット家の養女となっただけです。い、いつ捨てられるか知らないのでタウンゼット家の後ろ盾が欲しいならご期待に添えないかもしれませんわ。


わ、私はその…嫌われておりますから」

と言う。そう、成人したらきっと変な所に嫁入りに行かされるだけかと思う。成金老人とか。


するとヘクター君は


「失礼ながら最近の貴方のことを色々と陰から見てました。真面目に掃除を頑張っている働き者だし誰かに嫌味を言われても気にしないし。悪い人ではないと感じました!流石お祖母ちゃんが認めた人です!」

とヘクター君はにへと笑った。

お婆ちゃん子なのかも。


「僕は別に貴方に不快感は抱きませんよ?むしろ酷い扱いをする人達の方が信じられません」

と言う正論と常識さを持つ普通の人に初めて出会った!!


「でもいくらアニタお婆ちゃんの遺言でも私と一緒にいると貴方が笑われるわよ?」

と言うと


「!ミキャエラ様はお優しいのですね!自分のことより人のことをご心配なさるなど到底できませんよ!」


「そ、そうかなあ?そんな人沢山いるよ…」


「いえ…悲しいかな自分勝手なうちの親よりマシです…。僕はお祖母ちゃんに育てられたようなもので両親とは別居していました。宝石店を手伝いながら細々と暮らしていました。今は借金で店を売って僕が卒業したら店を買い戻し…頑張って支えて行こうって思ってたのに…お祖母ちゃん亡くなってしまって…」

とまたらジワリと涙を溜めた。


「僕はただの平民ですがここの学費もお祖母ちゃんが出してくれて経営学も学んでおります。卒業したら絶対にあの店を買い戻し引き継いでいきたいんです!」


「そんなことできるの??」


「剣術大会で優勝すればたくさん賞金が出ると聞きましたので僕今から頑張ろうと思います!」


「えっ!?今からですかっ!?」


「はい…今までは勉強を頑張ってたけど賞金を貰うために」

いや無謀だよ!そんなヒョロヒョロな身体で何言ってんのこの人!?

この学校に強い人どれだけいると思ってんの?

それこそ攻略対象の奴らの方が君よりは剣の腕とかはいいと思うぞ!?


なんなら私の方が上かもしれない。


「まずは剣の握り方を勉強して…」

とか言い出してる!!

もう一回戦で敗退だよあなた!!


しかし可哀想である。両親がロクデナシで苦労してきたんだろう。店を買い戻し幸せになろうとする努力も惜しまない姿勢に感動した!

婚約話の遺言はともかく普通に手を貸してあげてもいいかもね。

なんか私も体力ついてきてるし剣とか覚えたらいけるんじゃね?

というかあの私を酷い目に合わせてきた攻略対象達に今更ながら沸沸と怒りが湧いてきた。


「ヒロインを蔑ろにした報い!受けさせてやろーじゃないの!!」

私は攻略対象達をぶっ倒すと決めた!!


ヘクター君はキョトンとしていた。


「じゃあ明日図書館へ行って本で剣の指南書を読んでから…」


「それじゃ遅いよ!!?」


「えっ!?で、でも…誰に教わることも出来ないし…」


「うちのお義兄さまの剣術指南の先生が毎週末に来るの!お義兄さまはサボりがちだから先生に頼んでみるわ!…だからヘクター君は心配しなくていいよ!?


大会には私が強くなって出るから!優勝するから!!」

と言うとヘクター君は


「ええーー!?流石に無理ですよお!と、ともかく伯爵家に今度ご挨拶に行きますので!!」

と頭を下げてその日は別れた。


いやいやヘクター君…本当に私と婚約できると思ってる?流石にお父様も家の為に私を成金ジジイに売りつけるでしょ?


と思っていた私は休日にヘクター君が一応正装して菓子折りを持ちきちんとして挨拶に来て父の好きな酒も持ってきたことから何か凄く気に入られ話を聞き、なんと婚約話の件を承諾してしまった!!


「お、お義父さま?あ、あの…?」

と聞くとお義父さまは


「安心しなさい。ミキャエラ。お前なんかを貰ってくれるという心優しい青年じゃないか?お前みたいなデブは嫁の貰い手が一向に来なくてこの家で朽ち果てるのみかと思っていたが良かったじゃないか!貰ってくれる相手が現れて!!


君!娘との婚約を許そう!」


「ありがとうございます!!」

とヘクター君はにっこり笑った。

平民との婚約があっさり何の苦労もなく決まったーーーーー!!!!?


驚いたがヘクター君が帰った後こっそりと私はお義父さまの部屋の前で聞いた。


「くくく、あのミキャエラが出て行ってくれるなら平民の婚約でもなんでもいいわ!」


「まぁ元々孤児だし俺らとは身分違いなんだよ!婚約者見つかるだけまし!」


「出ていかないなら奴隷商に渡してもいいくらいだったがな!」

と笑い合っていた家族達!!


くっそーー!!馬鹿にしやがってーー!!

私はともかくヘクター君には幸せになってもらいたい!


その為には優勝して金を手にして宝石店を買い戻す!!


そしてヘクター君に相応しいお嫁さんを探してあげて私は…旅にでも出るか!


「まぁまずは強くならないとね!デブ舐めんなよ!!」

と気合を入れた。

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