第5話 生徒会長とデブイン!

入学式の自分のクラスの列にコソコソ最後尾に並んだ。遅れてきた私が頭に包帯やら怪我をしていたから多少は気になる人がちらほら後ろを見て直ぐ前を向く。

デブが怪我をしても大して興味ないのだろう。


校長先生の話が終わると攻略対象の一人、生徒会長の先輩ジェイラス・ドウェイン・ゴドウィン・チェスター侯爵令息が壇上で一礼し挨拶する。


「新入生の皆様。ご入学おめでとうございます。生徒会長のジェイラス・ドウェイン・ゴドウィン・チェスターです。皆様の学園での日々が充実して素晴らしいものになるよう私達生徒会も努力して参りますのでどうぞよろしくお願いします!困ったことがあれば皆さんの助けになることをお忘れなくお願いします」

と丁寧な挨拶に女生徒や男子生徒も拍手が上がる。

流石攻略対象ね。しっかりしているわ。この人なら私をヒロインと認めてくれるかも?

助けが必要な人を助けてくれそうじゃない?


そこで思い出す。


そうだ私この人の手伝いで生徒会の助手になるんだよね。それで親密度が上がるんだ!

栗色の髪でメガネイケメンの生徒会長は女生徒の注目の的でカリスマ性を持っており非常に惹きつけられる。


ヒロインの私も憧れを抱き話しかけるチャンスを窺っていた。


昼休みにヒロインは学園内に侵入した猫を助けて困っていると会長が通りかかり二人は出会うのだ!


これだ!


ともかくきっかけとなる猫ちゃんを探そうと校内を探し回る!すると…茂みがガサガサいってる!猫ちゃんだ!


私はガバッと茂みに手を突っ込み猫らしき奴をとっ捕まえてみると!

なんとそれは大きなドブネズミだった!!


「ひ!ひいいいい!!」

慌てて放り投げたらドブネズミが通りかかった生徒会長の顔にダイレクトアタックした。


会長のメガネが落ちて割れた。

目を細めてドブネズミに気付いた会長は


「うわぁ!!」

と叫び尻餅をついた!

そして割れたメガネに気付き青くなる。


「何なんだ!?誰だ!こんな事をする奴は!」

と言われ私は恐る恐る近づいた。


「あの…大丈夫ですか?」

多分ぼんやり私のフォルムを認識した会長は


「君が私の顔に汚いネズミを投げつけたのか!?一体どう言うつもりだ!?わ、私が潔癖症と知っての嫌がらせと脅しでもする気だったのか!?」

と言われた!!いや…悪い予感はしたけど。


「ち、ちがくて…違うんです!私は迷子の猫を探そうと!」

と言うと


「猫なんかどこにいるんだ!?いるのはドブネズミと君だ!何年生だ!?」


「ひっ!いい一年の…者です!」

咄嗟にルイス君の怒り顔が思い浮かび名前を言わなかった。

これはやばい!逃げなくては!!


「一年か!!今年の新入生の中にはとんでもない事をする令嬢がいるのだな!!とにかくこの私にドブネズミなどを投げつけた事は許せん!…早く顔を洗いに行かないと……!


君には後で生徒会室に来てもらう!!絶対に来るんだぞ!さっさと名前を教えなさい!」

と言われついに名前を言う羽目になった……。

そしてホームルームだけの今日放課後に呼び出された私はすごすごと生徒会室に向かうと扉の前でなんとルイス君が仁王立ちで怖い顔して待っていた!!


げげ!なんでルイス君が!?


「お前…ミキャエラ!!一体何をしやがった!?会長があんなに不機嫌だぞ!?」


「な、なんでお義兄さまがこちらに?」

まさかルイス君も呼ばれた!?


「俺は生徒会の一員だ!!」

と言われ思い出した!そうだ!確かそうだった!


「何をしたんだ!?早く言え!!タウンゼット家に泥を塗るような真似をしでかしたのか!?」

もはや鬼の形相だ。


「ちょっとあの…びっくりして掴んだものがたまたま会長さんの顔にヒットしたと言いましょうか…その…ドブネズミが……」

とモゴモゴ言うとバチンと打たれた!!


「いだっ!!」


「お前このデブ!!会長は潔癖症なんだぞ!?よくもそんなものを投げつけて!ああ!最悪だ!俺は生徒会をクビになるかもしれん!」


「ま、まさか…」


「貴様!!!殺すぞデブ!!」

と怒られて本当に死にたいとすら思えてきたわ。


仕方なくルイス君について入室すると空気がピリピリ張り詰めている。部屋の中は整頓され綺麗だ。流石潔癖症会長。


くいとメガネを上げて睨む。

スペアを持っていたのか。


「会長!!この度は義妹が大変失礼な事を致しました!!俺の監督不行届と言いましょうか!!」

と頭を下げるルイス君。


「ふん。ルイスは悪くない。その場にいなかったのだからな!だが、この一年は許せん。罰として1ヶ月のトイレ掃除を命ずる!!」

と言われた!!

さ、最悪だ。


「会長!なんとお優しい!トイレ掃除だけで良いなんて!もっとこいつに罰を与えてもいいのですよ!?所詮養女と言っても孤児でしたからね!」

とルイス君がバラした。


「どうてもいい。とにかく私の指の方が綺麗になるくらいトイレを磨け!ああ、男子トイレと女子トイレと教員トイレ全館だ!!」

え!?

ぜ、全館って!掃除業者でお金もらうレベル!?

顔にドブネズミ当たっただけで?しかも偶然なのに!?


嘘でしょ!?

信じられない!!


「早速今日からだ!早くしないと暗くなるぞ!」


「俺は先に帰るからな!デブ!お前は今日から乗り合い馬車で途中まで帰りそこからは歩いて帰って来い!大丈夫だ、お前みたいなデブは誰も襲わないからな!!」

とルイス君は無情にも見捨てた。

ついに馬車にも乗らせてもらえなくなった私。


その後クタクタになり全館のトイレを掃除して周りすっかり暗くなり最終の乗り合い馬車に途中まで乗って歩いて帰った。


「ひい、ひい……も、もうちょっとよ!私!頑張れ私!」

自分を必死で励ます。

家の門が閉まっていて何とか使用人さんに開けてもらいやっと帰宅した。


部屋についてみたらテーブルに冷めた食事があった。泣けてきた。


疲れて眠り、しばらくそんな生活が続いて1ヶ月後ようやく罰が終わった時はホッとした。


もちろん私が生徒会に入ることはなかった!!

あんな会長に二度と近寄りたくない!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る