第3話 王子様とデブイン!
馬車が学園に着いた時も周りを気にしてルイス君が先に降りて…私には
「コソコソ隠れながら5分後に降りろよ!お前みたいなのと家族と思われたくない!!」
とか細かい注文された。ひどっ!
仕方なく皆に見られないよう私はコソコソする羽目になったけど、その時周りがザワザワと騒がしくなる。
人だかりの方を見ると…
あっ!あれは王家の家紋の馬車!
ということは…攻略対象の氷の王子様ウォーレン・クライド・マシュー・タルボット様のご到着!?
うわぁ!生で見れるぞ!!やったあ!
と私はグイグイと野次馬達に混じるとモブ達が嫌な顔をして私を避けた!
えっ!?デブだからか!?
なんとなくショックを受ける。
「誰あの子!?汗臭っ!」
「どこの令嬢かしら?」
「近寄らないでいただきたいわ!」
「図々しいデブめ」
と言われ私は呆然とする。
しかし金髪碧眼の超綺麗なイケメン王子様が馬車から降りてそっちに歓声が上がった!!
もはや神々しいくらいに眩しい!!
しかも!!
王子様は一緒に降りてきた婚約者の悪役令嬢の手を取りその手にキスしていた!!
「まぁ…お辞めになって…ウォーレン様…皆見ていますわ!私恥ずかしいですわ!」
と悪役令嬢が恥ずかしがるのを見てその場にいた皆からはため息やら羨ましいやら赤くなる令嬢達がたくさん出た。
「ふふふ、見せつけてやろう。君の婚約者は僕なのだからね!」
と今度は肩を抱き寄せて頰にキスをしている!!
リア充と呼ぶのに相応しく皆の反応も羨ましがる人もいれば悔しがる人も見守る人もいた。
はあ!?
私は悪役令嬢を見て驚く。
悪役令嬢クリスティーン・ジョゼフィン・バックランド公爵令嬢は白金の髪に碧の瞳にまつ毛は長くて唇はプルルンと発色よく、腰はキュッと締まり胸はボインと出て俗に言うナイスバディ美女だった!
ゲームでは高圧的な態度の高慢チキ女だったのに可憐なしおらしい乙女になってる!!
こんなの誰から見てもモテモテに決まっている!!
今の彼女は私とは雲泥の差。
しかしヒロインをいじめる存在な筈だ!
敵なのである!敵ながらまるで女神のような美しさで皆ぼーっとしている。
すると私は誰かに
「邪魔だ!だけデブ!」
と押されて思わず転けた!!
「いだっ!」
と声が出てしまい、膝から血が滲む。やっぱり夢じゃない。怪我をして血も流れて痛みまである現実だ。
皆はそんな私を蔑んだ目で見ながらクスクスと笑い、助けようともしなかった。
思わぬ屈辱に恥ずかしくなる!
すると人混みをかき分けてなんと悪役令嬢クリスティーンがやってきて無様だとせせら笑うのかと思ったら自分の綺麗な刺繍のハンカチを出して
「大丈夫?貴方?大変だわ。応急処置だけどこれで…」
と膝にハンカチを巻いた。そして優しく微笑み
「大丈夫よ。医務室に行きましょう?手を出して?」
と優しく手を差し伸べた。
うっ!なんていい人なの!?本当に悪役令嬢なの?男子じゃなくても惚れそう!
しかしそこへウォーレン王子が立ち塞がる!
きゃあ!イケメン王子様!私を抱き抱えて医務室に!?と前世の王子とのイベントシーンを思い出して淡い妄想が包んだが…
あろうことか王子はパァンと私の手を払い除けグイっと婚約者を自らの胸の中へと収めた。
「汚いっ!クリスティーン…君は何て優しいんだ。こんな汚物にも優しくするなんて!やはり天使か女神に違いないよ!
ああっ!何て素敵なんだ!クリスティーン!愛しているよ!」
は!?何て?おおお汚物!?
わ、私のことじゃあないよね?
否定してくれ!!頼むから!!
王子が信じられないことを言ったので私は見上げると氷みたいな目が
『殺すぞ去れ』
と言わんばばかりに見ている。
ひっ!!
「…ウォーレン様ったらそんなことおっしゃらないで!ごめんなさい!ウォーレン様は少々口が悪いと言うか…」
と申し訳なさそうにする女神。
「君…どうでもいいけど早く僕たちの前から消えてくれないかな?邪魔だよ!僕たちの周りの景色は常に澄んでいなければならないのさ!背景に君がいると変だろう?野次馬なら野次馬らしく見えない一番後ろに頓挫していたまえ!」
ととんでもない事を言い出した!!
あ、あの私一応ヒロインなんですけど!?
しかしお義兄様の態度を見てもこんな感じだったしこの世界の私ってヒロインとしての資格ないんじゃ…。
普通死んだらもっといい事あってもいいのに最悪の第二人生のスタートだわ…。
ついにウォーレン王子は軽く手を叩き警備員を呼びつけ何か指示を出していた。
私をさっさと医務室に連れて行かす。
私は警備員達にも嫌そうな顔をされていた!!
乱雑にズルズルと引きずられて怪我をした足より腕を引っ張られて行く方が痛かった!!
遠くから
「僕が優しくするのは君だけさ…」
と頰にキスする悪役令嬢と王子を見て思い切り私は死んだような目になった。
諦めよう。
あれは無理だ。
あんな超ド級の美人に叶うはずもない!
私は心の中で悔しくて仕方なかったが美人とデブの扱いの格差を思い知り黙ってまるで養豚場に引きずられて行く豚に成り果てた。
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