第38話
その日の夕方、アイリスは飛行魔法で数人の王国官僚を引き連れて魔王城へ現れた。
理由は単純で子作りの魔法について詳しく話を聞くためである。
「魔王ノアにお仕えする淫魔族の魔術師・リリスと申します」
リリスは大きな胸と尻を余すことなく男たちに見せつけながら会釈をすると、王国官僚たちの鼻の下が伸びるのが見えた。
パン!と大きく手を叩くと官僚たちが正気に戻る。淫魔族に慣れてないとこうなるのは分かるが仕事してくれ。
「リリスは淫紋術の専門家で同性間での子作りのための淫紋術の研究を任せている。まずは淫紋術についての説明からした方が良いだろうな」
「かしこまりました。
そもそも、淫紋術は主に淫魔族が使う魔術の一種で、淫紋と呼ばれる図案化された魔法陣を魔石入り塗料を使って体に描くか刻み込むことで発動する魔術です。主な用途としては性欲増進や遠隔で性的興奮を呼び起こすといったものが主流ですが、今回のような子作りにまつわる淫紋も多数ございます」
人間にとって淫魔族と言うと色欲のイメージが付きまとうが、魔族にとって淫魔族は子孫繁栄のプロフェッショナルという意識が強い。
なので今回の研究も淫魔族に任せたと言う訳である。
「今回使用する予定の淫紋は刻まれた人の身体で精液を生産し相手に吸収してもらうことで妊娠させるものになります、身体に描きこまれた人が孕ませる側・描きこんでない人が孕む側になります。
この淫紋は体に刻み込むタイプのモノではなく書き込むタイプですので描きこんでから定着まで3日、効果は20日ほど続きます。妊娠しやすい時期に合わせて淫紋を描きこみ、その間しっかり子作りに励んでいただければ妊娠は確実かと」
真剣に聞いていたアイリスが突然リリスに声をかける。
「妊娠しやすい時期と言うのはどうしたらわかるのかしら?」
「人間の女体の場合ですと月のものが終わってからの10日間が最も妊娠しやすくなります、ですので月のものの始まりと日数をご報告いただければそのタイミングに合わせて妊娠率を上げる淫紋やお薬を準備いたします」
「月のものが終わった直後が良い、と言うのは初耳ね」
「元人間であるデュラハン族で確認が取れていますので間違いないかと」
デュラハン族について補佐官が王国官僚たちに軽く補足すると、驚きつつもその信ぴょう性の高さに唸る。
その後もいくつかの質問をしては紙に書き付けてくる。
「魔王妃殿下の妊娠成立後は一般の人間の妊娠出産と変わりありませんが、必要とあれば我々淫魔族が全力で支援致しますので」
「ありがとう。となると妊娠するまでは魔王城、妊娠成立後から出産までは王城にいたほうがいいかしらね」
「どうして?」
「王位継承権は原則王国内で生まれた王家の子供にしか与えられないのよ、例外はあるけどせっかくなら私の子であることを全世界に認めてもらえるように万全を尽くしたいの」
王国官僚や魔王城の関係者のほうを見る。
アイリスの決断に王国官僚も、魔王城関係者も従う意思はあるらしい。
「分かった。出産は王城で行えるように手配しとく」
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