第37話
ノスフェラトゥス侯爵家から見つかったいにしえの淫紋術の書籍発見から四か月後。
淫紋術の真偽とともにかけられる者の安全性を確認させてきたが今日はその結果が出る日である。
「ノスフェラトゥス侯爵家文書の淫紋術による動物実験に成功し、安全性も確認が取れました」
「ついにか!」
アイリスとの結婚一周年を目前に控えたこの時期に何という吉報だろう!
同性で子供を作るための淫紋術は不完全な部分があったらしいが、昨今の魔術発展によりリスクを最大限に減らして安全に子供を妊娠・出産出来ることが確定したのである。
結婚指輪に刻まれた通信魔法を発動させると『ノア、どうしたの?』とアイリスの声がする。
「アイリス、私たちの間に子どもが出来るよ!」
『こども?』
「淫魔族の使う淫紋術の中に同性間の子作りについての淫紋術があることは前に話したよね?」
『ちょっと待って、いま王国内の有力貴族を集めた会議中なの。みんなに聞こえるようにするから』
アイリスは指輪に刻まれた魔法陣を操作すると『続けて』と指示が来る。
ちょっと自分のテンションを魔王状態に切り替えてから続きを口にした。
「あー……淫魔族の使う淫紋術の中に同性での子作りを可能にする淫紋がある、ここ数か月安全性をかくにんしていたが淫紋術が安全かつ実用的であることが証明された」
『つまり私たちの間に実子ができるってこと?』
「そう。むろんこれによってアンヘルをなおざりにするつもりはないが、私とアイリスの子を作ることは悲願だった。だから、」
言葉の続きを口にしようとしたときある疑問が脳裏をよぎった。
この場合私が子供を産んでくれと言うべきなのか?それとも私に子どもを産ませてくれと言うべきなのか?
アイリスと私の子はどちらが生んでもいいはずだが、王位継承問題を考えるとアイリスが産んだ子であれば国民感情に抑えが効く。でも子供を産むというのは命懸けである。それを安易に押し付けていいのか?
魔族の身体は並の人間より頑丈なので私が産んでもいいのだがその場合、魔王としての職務の問題がなー……。
『私もようやくノアの子が産めるのね……!』
通信魔法の向こう側から聞こえたのは半泣きのアイリスの声だった。
「アイリス?」
『わたしね、好きな人の子どもなんて作れないと思ってた。だから、本当に私がノアの子産めるって聞いたら泣けてきちゃって……」
小さく鼻をすすりながらアイリスが答える。
「子供を産むのは大変だと聞く、魔王領一帯でバックアップする。だから、……私の子を産んで欲しい」
『もちろんよ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます