第26話

新婚旅行6日目、砂浜でごろごろと寝そべっているとアイリスの執事のお爺さんがバタバタと足音を立てて現れた。

「お嬢様、帝国からの招待状が参りました」

「帝国から?」

その招待状を受け取って封を開けると金粉の撒かれた純白の紙に死にかけの蛇みたいな文字がつらつらと並んでいる。

「……ごめん、これなんて書いてあるの?」

「これほんと読みづらいわよね。帝国貴族が使う略式文字で書いてあるけど、再来月に皇太子嫡男の誕生を祝うパーティやるから来いっていうお誘いね」

「嫡男?皇太子にはもう息子いたよね?」

「長男と嫡男って別物なのよ、長男は一番最初に生まれた子どもで嫡男は正妻が最初に産んだ息子。まあ大抵嫡男と長男は同じなんだけど稀にこういうことあるのよね」

「貴族って面倒だな……アイリスが呼ばれたのなら私も伴侶として準備しないと」

「魔王の参加は望まずって書いてあるけど私の伴侶の参加については書いてないから問題ないわね」

「今回は魔王じゃなくて王配としての参加だからね!」

帝国方面からそういうことじゃない!という叫びが聞こえてきそうだが無視することして、揃いのドレスを仕立てるよう指示書を書き送る。

「揃いのドレスは初めてだよね?」

「そうね、この海のような青いドレスがいいんじゃないかしら」

「青いドレスなら紫水晶を合わせたいなぁ、ちょうど未加工の紫水晶が魔王城にあるからアイリスの瞳のようなピアスか指輪を作らせたいんだよね」

「なら私もルビーのピアスをしていきたいわ、昔貰ったお気に入りがあるの」

「じゃあピアスにしよう、それで私のやつもアイリスのお気に入りにデザイン寄せようかな」

指示書をガンガン埋めていくとお互い作りたいドレスのイメージがおおむね固まった。

あとはこれを送って作ってもらうだけだ。

いちからドレスを作るのに多少時間はかかるけど一か月半あればうちの優秀な職人たちは完成させてくれる。

「はー……明日一日ダラダラしたらお互いの城に戻って仕事かあ」

「揃いのドレスとピアスを楽しみに仕事頑張りましょ」

夏の日を浴びたアイリスは美しい。

だけどお揃いの青いドレスを着たアイリスもきっと美しいのだろう。

「そうだね、どうしても会いたくなればひとっ飛びすればいいし」

王という仕事も楽じゃない。でも可愛い妻と私に仕えてくれる人たちのために頑張って、王としてよき統治者であらねばならないのだ。

「明日の夕方まで、いちゃいちゃして過ごしましょ?」

「だね」

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