第25話

新婚旅行三日目にもなると全員が全裸という状況に少し慣れてきた。

裸にエプロン一丁の補佐官がうろうろしてるのも、ケモ耳ケモ尻尾の青年と騎士団長が全裸で海遊びしてるのも、一番堂々と全裸を満喫してる執事のおじいさんも、もう突っ込まないぞ……突っ込まないったら突っ込まないぞ……。

「ノア、よそばっかり見てないでよ」

「ごめん。適応力のすごさに茫然としてた」

でもまだ慣れないものもある。

例えば可愛い妻・アイリスが毎朝私の横で見せてくれる肌の白く滑らかな美しさとか。アイリスの胸の丸く美しい姿とか、体の曲線のしなやかさとか。

もうこの辺は一生慣れる気がしません。

「さすがにもう慣れたでしょ?」

「この状況に離れたけど、アイリスの身体の美しさには一生慣れる気がしない」

「おばあちゃんになっても私の身体に不慣れているつもり?」

アイリスがおばあちゃんになる頃と言うと50年後ぐらいだろうか?

魔族の寿命が300年~1000年と言われてる(幅があるのは魔族の中にも種族差があるからだ)の考えたらあっという間だなあ、とか考えてしまってふと気づく。

「人間って思ったよりすぐ死ぬな……」

「何の話?」

「いや、魔族の寿命考えると50年って割とあっという間だなって」

「ノアは何年生きる予定なの?」

「私はそもそも魔族の中でもどの種族なのかがよく分かってないから寿命も不明瞭でね、人間から生まれた魔族っていう希少種だからってのもあるけど」

私の親が人間であることは小さい頃、シスターアマリリスが繰り返し言っていたので間違いない。

シスター・アマリリス自身が取り上げてくれたそうだから少なくとも母親は人間だろう、まあその母親も生んで程なくしていなくなったらしいが。

「悪魔族が一番近いんじゃないか、とは言われてるけどもし悪魔族だとすると1000年は生きるからどっちにせよ一瞬なんだよね」

「じゃあその一瞬を濃厚にしなくちゃ」

「濃厚な一瞬って?」


「100年後も1000年後も思い出しただけで幸福になれるような、そんな思い出を積み重ねるの」


アイリスの目は本気だ。そして本気だからこそ美しい。

「輝かしい一瞬にはダラダラ生きる100年以上の意味と輝きがあるもの」

「……アイリスってホント天才だね」

暗さを吹き飛ばすような清廉で強烈な美しい人と過ごす50年があれば、1000年生き延びていけるだろう。

彼女のいない暗い日々を灯すただ一つの明かりのような思い出をもっと積み重ねたほうがよさそうだ。

「とりあえず、キスしていい?」

「もちろん」

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