第23話

王家所有の離島・ヌーディス島は歩きでも1時間もあれば島を一周できる小さな離島だ。

一年を通じて暖かいこの島は美しい海と森に囲まれ、北西部には古くからこの島に住む一族の集落がありここが島唯一の港だという。

船の出迎えの人々はみな私に似た褐色肌をしており、草や花を振って歓迎してくれていた。全員が全裸で。

「ほんとに全裸だ……」

ここまでの裸体を見ることがないので茫然とする私とニーソスに対して、開き直って面白がっている補佐官やもう慣れているのか腰を布で隠す騎士団長や執事のおじいさんで反応が違いすぎている。

「ちなみにこの島では体に布を巻くことも靴を履くことも認められてないから気を付けてね」

「何そのルール、靴がダメって何履けばいいの?」

「この島で履けるのはサンダルだけよ、股間や胸を布で隠すのはセーフだからどうしても恥ずかしい場合はそうして」

着替えの洋服も縫い目やボタンがはじけ飛んでいて着ることができなくなっており、この島の呪いの強さに戦慄する。

とりあえず最低限を布で隠して船を降り、最南端にあるという王家の離宮まで散歩がてら歩くことにした。

「にしてもよくこんなところを夏の離宮にしようと思ったよね」

「あの集落で流行り病があって一族の最後のひとりが死にしかけていたところを初代王妃殿下とその妹君が治癒魔法で救ったことがきっかけだそうよ、そして妹君が一族に嫁いだのを機に島は王家所有になって離宮が建てられたの」

「思ったよりも重い歴史が」

だとしてもこの呪いを考え付いて島に刻み込んだ奴はいったい何を考えてこんな強力な呪いを刻んだのだろう。

意外にちゃんとした理由があるのかもなあとぼんやり考える。

「ちなみにこの島に呪いをかけることで未来永劫安心して子孫が作れるようにしたのは初代国王殿下よ」

「ばっかじゃねーの」

思わずマジのコメントが出てしまった。

王族ってそんなに下半身に一族の未来が直結してるんですか?

「あ、そろそろよ」

森の小道を抜けるとそこは白い砂浜に美しい青の海、そして真っ白な宮殿。

それは初めて見た美しい青と白の世界で、この海を私たちだけで独り占め出来るのはいいかもしれない。

「きれいだね」

横を振り向けばアイリスの白いうなじに汗がつたい、鎖骨から、胸へとつたうさまが目にまぶしい。

(……そういや私ら今全裸だったわ)

要らんこと思い出してしまった。

「じいや、私はノアと泳いでるから」

「補佐官とニーソスも執事に従うように」

そうしてアイリスに手を引かれるまま冷たい海へと飛び込んだ。

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