第15話
翌朝、身体を起こそうとすると全身が疲れと痛みで動かなかった。
全身くまなくつけられたキスマークや噛み跡は昨夜の激しさを物語るが、流石にそれを見られるわけにもいかないので隠すように服を纏う。
アイリスは隣でまだスヤスヤと眠りこけていてとてもかわいい。昨夜はあんな情熱的だったのにな……。
コンコンというノックの後に寝室に2人の人物が現れた。
「おはようございます、昨夜はお楽しみでしたね」
補佐官とアイリス付きの執事さん(トマスという優しげなお爺さんだ)がミルクティーとジャムの乗ったトーストを持ってきてくれたのだ。
「後半は余計だよ。アイリスー、朝だよ」
そう言って軽くゆすってあげると「ん~?」と言いながらのっそりと起きてくれる。
「アイリス殿下、朝食をお持ちしましたぞ」
「ありがとうじいや」
そう言って起き上がるとアイリスはキスマークと噛み跡もそのままの一糸纏わぬ姿であり、私は咄嗟に近くにあったタオルでアイリスの肩周りを覆う。
しかし隠しきれない情熱的な痕跡がまだ残っており、なんとなく居た堪れなくて視線を逸らすと面白そうな顔をした補佐官がいた。お前ほんと酷いな。
アイリス本人は気にすることもなく朝食を手前に置いてもらうと、早速紅茶で喉を潤した。
「ノアは紅茶って好きだったかしら」
「実は飲んだ事ない」
孤児院にいた時は紅茶など飲む機会がなかったし魔王城に来てからはコーヒーばかりで紅茶が出たことがないので、紅茶の味がまったくわからないのだ。
「一口飲んでダメだったら残りは私が飲むから」
差し出されたカップのお茶に口をつけると、優しい香りとほんのりした渋みで目が覚める感じがする。コーヒーほどガッツリ苦くないし、目がシャキッと冴える感じは朝にぴったりだ。
「美味しいね、これ」
「これから毎朝じいやのお茶を飲みましょうね」
「一緒にいれる時はね」
好きな人と美味しいお茶を飲みながらの朝というのも、悪くない。
***
結婚式の後片付けもそこそこに、次は王城での結婚式のためアイリスの部下達を連れて王城に戻らねばならない。
「でもどうやって戻るの?」
「昔作った飛行魔法を付与した船を使おうかと」
これは魔王城に来て程無くしてから付与魔法の練習で作った空飛ぶ船だ。
使われなくなった木造の小型船に飛行魔法を付与したこの船を使えば、人や物を乗せて空を飛べるので移動時間の短縮につなげることができる。
結婚式に使うドレス(魔王城で使った物だ)などを詰め込み、アイリスの従者を乗せると早速船を飛ばして王城を目指した。
後にアイリス付きの執事であるトマスさんは言った、「あまりの速度と高さで死を覚悟した」と。
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