第14話
結婚式が終わるとふわふわした気分のまま新しいドレスに着替えることになった。
彼女は魔王妃らしいシックなモノトーンのワンピースドレス、私はシルバーグレーのドレスだ。
魔王城の一帯は夜のとばりに包まれて魔法で作られた色とりどりの火が私たちを祝うように瞬いている、その中を馬車で魔王城の城下町を練りまわって結婚を民に知らしめるパレードを行うのだ。
幸か不幸か私は弱くて非好戦的な魔族からは人気があり、この一帯は比較的そういう非好戦的な魔族も多く暮らしている。
王国と魔横領の平和的な併合は彼らにとって歓迎できるものであることをこの二週間PRしまくったおかげで、庶民からのウケはまあまあ良かった。
まだふわふわした気持ちのまま手を振っていると「本当に私たち結婚したのねえ」とアイリスが言う。
本当なら結ばれることなどありえなかった私たちが色んな偶然と無茶によってここまでたどり着いてしまったのだ。
「うん」
彼女が私の妻になるなんて、夢ならこのまま覚めないでほしい。
何ならこの幸せな気持ちのまま死にたい。
……なんて夢うつつの気分で過ごしていたらパレードも終わり、もうすぐ寝る時間に差し掛かろうとした時であった。
「魔王殿下、」
「補佐官。なにかあった?」
「こちらをどうぞ」
そういって差し出してきたのはピンクと黒の箱で、そこには淫魔族の長(非好戦的で私に好意的な魔族でもある)の紋章が刻まれている。
「……これは?」
「初夜に最適な催淫剤と女同士のまぐわいに使える道具類だそうです」
表情を微塵も変えることなくそう言い切った。羞恥心とかないのか?
「そうだと思った!そうだよな新婚初夜だもんな!」
「結婚祝いだそうですよ」
「うん、まあ受け取っておく……。あとひとつ」
「なんでしょうか?」
「淫魔の氏族には性にまつわる特殊なものが多いと聞いたから、同性間で子供を作れるような魔法がないか探すように言っておいてくれ」
「魔王ノアの思し召しのままに」
****
自室のベッドで淫魔族から渡された結婚祝いの箱を開く。
このピンク液体は催淫剤で、性交時の痛みなども和らげる効果があるらしい。ほかにもピンク色の棒だとか震えるおもちゃだとかつけると気持ちよくなるいぼ付き手袋だとか同性とのまぐわいかたの教科書などが封入されていた。
(……するの?あのアイリスと?)
私とて新婚夫婦が最初の夜にすることぐらいは知ってる。過去の魔王の資料あさってたらそういう記録を残してる好色家の変態がいたので道具の使い方は見なくても大体わかるし、同性でもまぐわえるのも知っている。
でも相手はあのアイリスである。たぶんアイリスはこういう道具など知らないだろうし、同性でのまぐわいなど想定してない気がする。
「ノア、「びゅあがらごふ!!!!!!」
とっあに荷物を片付けようとしてまぐわい方の教科書がアイリスの足元に飛んでいく。
「あら、これは?」
「アイリスそれは、その、あんまり見ない方が……」
「結婚相手に隠し事なんてよくないわ」
そう言って教科書を開くとアイリスの目がカッと開いた。
ぱらぱらとページをめくるその手が興奮と驚きで震えているのが分かる。
「……ノア、私たちもまぐわえるのね」
「あ、うん、」
「それってとても素晴らしいことだと思うの」
アイリスは催淫剤を飲んでもいないのにピンク色の興奮がにじんでいた。
「わたし、あなたともっと触れ合いたい……!」
その夜は大変な盛り上がりで、初めての夜は気が狂うほどに大変な目に遭った。
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