第13話
婚姻契約書がオレンジの花をひとしきり降らせると、ノスフェラトゥス侯爵は「次は人間式の婚姻と行きましょうか」と口を開いた。
「成約の印である指輪の交換です」
「指輪なんてあるの?」
「もちろん」
隠し持っていた指輪のケースを取り出す。
「どういうのがいいとかわからなかったからシンプルなもので申し訳ないけど、私のほうで用意したんだ」
箱に入れたのはプラチナとダイヤモンドで構成された飾りっ気のないシンプルな指輪だ。
華やかさには欠けるが一から自分で準備し、裏面には互いの名前や護身魔法も刻んである。
「ありがとう、指輪は私につけさせてくれる?」
「うん」
アイリスが私の手を取ると左手の薬指に指輪をするっとはめ込む。
浅黒い肌にシルバーリングはちょっと目立つが悪い気分じゃない。
「じゃあ、次は私が」
そういって指輪を手に取ってアイリスの手にはめ……あれ、入らない?
おかしいな昨日の夜はちゃんと大丈夫だったぞ?一晩で指のサイズが変わるなんてありえないし、あれ、指先にすら入らない?待って待って待って!!!!!!!もしあるとしたらあれか?昨日の夜に追加した魔法のせいか?
「ごめんちょっと待って今修正するから」
指輪に刻んだ魔方陣を展開して魔方陣のミスを確認する。
この結婚指輪に刻んだ魔法は敵意感知・自動結界・攻撃反射・呪術無効化・毒物無効化・状態異常無効化・緊急時全回復・本人強化・所有者契約・お互いの位置特定・飛行魔法・通信魔法の12、たぶんこのうちのどれかが影響してると思うんだよな……あ、所有者契約魔法でアイリスがが所有者になってないから自動結界が発動してはめられることを拒んでるんだこれ。
「ごめん、この指輪アイリスの所有になってないから拒んでるみたい。いま所有者書き換え……」
アイリスや参列者がぽかんとした顔をしているのを見て首をかしげるとアイリスが私の肩をつかんで問う。
「結婚指輪に12も魔法を刻んだの?」
「あ、いや、最初は8つだったけど12のほうが縁起もいいし色々追加したほうがいいかなあって思ったんだけど、ダメだった?それとも重い?」
アイリスは空を仰ぎ、ノスフェラトゥス侯爵やニーソスは感激したように私を見つめ、アイリスに仕えていた人たちは驚愕のまなざしで私を見つめていた。
「あのねノア、あなたは魔法の正規教育受けてないからわからないでしょうけど王国の宮廷魔術師でも指輪に刻める魔法はせいぜい3つよ」
「そうなんですか?」
思わず近くにいた王国の騎士団長に聞けば「そう聞いております」と返事がくる。
「まさかノアが魔王だっただけじゃなくて魔法の大天才だったなんて……」
その一言で急にいろんなことが不安になって「私と一緒にいるの嫌?」と聞いてしまう。
「嫌じゃないに決まってるでしょ!!!!!!!!!」
アイリスが力強く否定しながら私の目をのぞき込む。
「ふたりで王国と魔族領を盛り立てましょう!」
「うん」
その勢いのままに私たちは口づけを交わしたのだった。
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