第11話
魔王城に着くまでの一週間、襲撃されては捕まえて送り返し揉め事が起きては仲介に立って解決し……という気の休まらない一週間であった。
幸いであったのはこの一週間で補佐官や騎士団長が慣れてくれた事で些細なことであれば自分でトラブルを解決できるようになってくれた事だろうか。
根本的な思想の違いは埋まらないだろうがどうにかやっていってほしいところである。
無事に到着した時にはもう夜だったので全員休んでもらうことにして、挙式は三日後とした。
「ここがアイリスのために用意した部屋だよ」
魔王の配偶者にふさわしい格調とアイリス好みの柔らかな色合いを組み合わせた大きなベッドルームに「わあ……」と声を上げる。
「相当頑張ってくれたでしょう、これ」
「大工さんには無理をさせたけどね」
二週間かそこらで作り替えてくれた吸血鬼族の大工たちには相場の5倍を出してアイリスの好みに合った部屋に作り替えさせた甲斐があるというものだ。
「このドアから私の部屋に直接行き来できるから」
「馬車の中ではずっと一緒に寝てたし、いつでも一緒に寝られるわね」
そう、移動中私とアイリスはずっと同じベッドで寝ていた。
当初は2人そろって緊張したけど慣れてしまえはこんなに幸せな時間もないと気づき、結局ずっと一緒に寝ていたのだ。
「ノアの部屋も見ていい?」
「良いけどたいした物はないよ」
二つの部屋をつなぐドアを開けると、部屋の様相は一気に変わる。
黒を基調に差し色として赤を入れたゴシックな寝室はいかにも魔族の王らしい趣がある。
「先代の魔王から引き継いだ時のまんまなんだよね」
「別にいいんじゃないかしら、思ってたより悪趣味でもないし」
「私そんな趣味良くないと思われてた?!」
「いや、魔王の部屋っていうともっとギラギラしてるのかと」
アイリスのお眼鏡にかなったようなら良かった、こっちの部屋の改装も超特急で頼むとこだった。
私自身は個室で寝られるなんて贅沢だという孤児院時代の感覚が抜けず、別に雨漏りしてるわけでもないのに部屋を改装するなんて余計な出費のような気がして放置してたのだ。
「じゃあ今日はこっちね」
アイリスがぽふんと私の部屋のベットに横たわる。
隣にもぐりこんだ後結界を張り巡らせて隣に目を向ける。
「式は明日?」
「明日の夕方かな。人間と魔族の神の象徴が同じ空に昇る時間帯でもあるしね」
「楽しみにしてるわ、ノア」
「うん」
「今日はもう寝ましょ、おやすみなさい」
そういって目を閉じたアイリスに「おやすみ」と声をかけると私もそっと目を閉じた。
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